竹田陽一が語る、 「ランチェスター・サクセスプログラム」制作について 1. 独立後すぐ10社の顧問契約ができる 私は1983年6月に、16年間勤めていた企業調査会社を辞めて、ランチェスター経営を創業しました。会社を辞める迄に1000回を上回る講演をしていたことと、会社内の売上高で1位になっていたこともあり、多くのお客を持っていました。そのおかげで1カ月もしないうちに10社の顧問契約ができました。 ところが顧問契約をした会社の訪問を2回、3回と重ね、「戦略分野」の点検段階になったところで、顧問先の社長の考え方との間にズレが生じ始め、話しがうまくかみ合わなくなりました。 つまり「戦略分野」の話ができなくなったわけです。こうなると顧問先の社長はたいがい「長期計画で営業マンの教育をしてくれ」とか、「課長などリーダークラスの教育をしてくれ」と、従業員教育の話になってしまいます。 従業員教育も必要ですが、「戦術は戦略に従う」という原則があるように、戦略の点検や改善が先で、戦術上の改善や従業員教育はそのあとにするのが原則になります。 そこで「なぜこうなるのだろうか」と、時間をかけて考えているうちに、その原因がだいたい解かってきました。 1つ目は顧問契約をした会社の社長が、経営規模の大中小で変わる社長の役目を正しく理解しておらず、社長が責任を持って担当すべき役目があいまいになっていたためでした。 2つ目は戦略と戦術の区別がつかず、業績のほとんどが繰り返し作業で仕事の内容が見える、戦術で決まると思っていることでした。 3つ目は、強者の戦略と弱者の戦略の区別がはっきりつかず、この2つがあいまいになっていることにありました。 私はランチェスター法則をベースにして、戦略分野のコンサルタントになることを目ざしていたのですが、これでは私の役目が果たせません。 しかし顧問先の社長は、私より「10歳~15歳年上」であったので、「社長はこれらの研究をきちんとして実力を高めないと、根本的に業績を良くすることはできませんよ」と、強くは言えなかったのです。 2. 戦略教材の開発を決める 私は経営戦略の大事なところについて顧問先の社長にひととおりマスターしてもらうために、経営戦略のフルライン教材を作ることを思いつきました。教材で学んでもらえば、経営規模の大中小で変わる社長の役目がはっきり解かります。次は戦略と戦術の区別もきちんとつくようになり、さらに強者の戦略と弱者の戦略の区別もきちんとつくようになります。 こうなると顧問契約先の社長と経営改善について話し合いをするとき、経営戦略など大事なところに話が集中できるようになるので、経営コンサルタント本来の役目が果たせるようになると考えたのです。 この件があって以来、顧問先との契約は全部断りました。そしてフルラインの戦略教材を開発するのに必要な資金を作るため、講演に力を入れて取り組むことにしたのです。こうして独立から6年が経過したとき、サラリーマン時代から持っていた貯金と、独立したあとに作った利益の2つの合計が目標額の8,000万円になったので、休業して原稿書きに取り組むことにしました。 フルラインの原稿を書くのはとても大変でひどく苦労しましたが、4年半後の1993年の10月末に、録音教材が完成しました。バブル経済がはじけた2年後のことです。 当時の教材はカセットテープで、テープの巻数は全部で67巻になりました。録音教材が完成したときは4年半に及ぶ原稿書きの疲れと、「録音教材を作っても本当に売れるのだろうか」という心配のため、体重は52.5kg迄やせてしまいました。道を歩いていると貧血のために頭がボーとなり、目の前に星が出てきたことは何度もありました。 しかも4年半休業して収入が激減したのと録音作業を始めると、ナレーターに支払う経費と録音スタジオに支払う経費が次々と出ていきます。さらにテキストの印刷費が3,500万円になったことで、テープが完成したときには貯金が底をついていました。 そのために完成した録音教材は、すぐ売らなければなりません。ところがこのとき、とても不思議なことが起きたのです。前々から親しくしていた社長が2人、面会の予約なしに私の事務所に訪ねてきました。そして「戦略教材が完成する頃だろう」と言ったあと、2人ともフルセットを買ってくれたのです。これで急に元気が出ました。 録音教材を販売するには、まず見込客が必要になります。これはサラリーマン時代から親しくしていた社長を初めとして、講演で全国を回ったときに知りあった、4,000人が対象です。この4,000人の社長に対しては順番に、「ランチェスター法則を応用した、中小企業の経営戦略テープが完成しました」という挨拶文と、カタログを入れて郵便で送りました。 そして何日かあとに電話で販売をしたところ、11月と12月の2カ月で3,000万円が売れたのです。次の年の1月も1,000万円以上が売れたので、これで一息つきました。 ビデオの撮影はライトが強く当たるのと、この作業は初めてで慣れてなかったことから20回失敗し、700万円近い損をしました。それでもあきらめずに工夫をしながら撮影を続け、4年後にはようやく映像教材のフルラインも完成しました。これによって録音教材と映像教材を併せた、本当の意味でのフルラインが完成したのです。これらにかけた年月はおよそ15年、開発費の合計は1億5,000万円を超えています。 このあと代理店が何社かできたので売上が上がりました。 3. 3年をかけて「改訂版」に取り組む これでひと安心ということですが、そう思いどおりにはなりませんでした。 録音教材は1つのテーマで6巻~7巻構成にしていたのですが、若い社長から、「これは長過ぎる。もう少し短くなりませんか」という要望が何件もあったからです。それに事例として入れていた上場企業の中には、合併などで会社名がなくなるところも出てきました。これはとても都合が悪くなります。 そこで再び「改訂版」を作るためにイチから原稿書きに取り組み、およそ3年をかけ、2013年の3月にようやく録音教材の改訂版が完成したのです。 以上がランチェスター・サクセスプログラム、中小企業の経営戦略を制作したあらましになります。 ランチェスター経営(株) 竹田陽一 |