菅義偉官房長官は21日の記者会見で、日本人男性が9月に中国当局に拘束されたと認めた。反スパイ法などに問われている可能性がある。中国は2015年以降、スパイ活動に関与したなどの理由で相次ぎ邦人を拘束している。日中関係の改善が進む一方で、中国が摘発を緩める気配はない。
菅氏は「事柄の性質上、詳細は控える」と述べた。そのうえで「邦人保護の観点から領事面会や家族との連絡などできる限りの支援をしている」と語った。外務省領事局の担当者は「中国側には様々なレベルで前向きな対応を求めている」と語る。
男性は北海道大の教授で、過去に外務省や防衛省防衛研究所に勤務歴がある。準公務員である国立大の教員が拘束されたのは初めてとみられる。中国近現代史などを専門にしており、9月に訪問した際に中国当局に拘束されたもようだ。
中国当局は中国国内での外国人の情報収集への取り締まりを強化している。14年に反スパイ法を定め、15年から国家安全法を施行した。15年以降、少なくとも13人の日本人が拘束されているとみられ、そのうち9人が起訴されている。
今年5月にも日中友好団体の役員の男性に対し、スパイ活動を理由に懲役6年の実刑判決を言い渡した。昨年2月に拘束された大手商社、伊藤忠商事の男性社員は公判中だ。
日中間では要人の往来が相次ぎ、安倍晋三首相は「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」と強調する。22日の「即位礼正殿の儀」に王岐山(ワン・チーシャン)国家副主席が参列するのに合わせ、首相は王氏と会談する。来春には習近平(シー・ジンピン)国家主席が国賓として来日する。
首相は6月に大阪で習氏と会談した際、拘束された日本人の早期帰国を要請した。日本人拘束を巡る問題は改善が続く中での日中関係の懸案の一つだ。