後編も書く予定
ここは学園ナザリック。地方にある中高大の一貫校である。
部活動が盛んで一部は全国区であることから、そこそこの知名度がある地方によくある学校の一つ。しかし学力面では地元に密着ということで上から下まで様々であるため、良くも悪くも地域に根差したエンジョイ系の学校と認識されている。
そんな学園の大学部。とあるゼミに割り当てられた部屋の一角、山のように積まれた資料部屋で二人の若い男女が向き合っていた。
逢瀬を重ねるというには語弊のある雰囲気。女性はうなだれながら、スカートの裾を両手で強く握りこんでいる。その顔にはうっすらとクマがあり、悩みでろくに眠れていないことが読み取れる。
対する男性は、リクルートスーツではあるがネクタイを取ったラフな姿をしていた。しかし普段のムードメーカーたらしめる柔和な笑みはなく、ひどく困ったような表情を浮かべている。なにより、この男性ことペロロンチーノは、後輩にあたる女性、シャルティアに呼び出されてから、かれこれ20分ほど放置されている状態なのだ。
悩みの相談と話題に当たりを付けている。
ペロロンチーノの親友であるモモンガほどではないが、彼も面倒見の良い男である。仲間内の悩み相談に首を突っ込んだことは何度もあった。ただ、ゼミの後輩の女性からの相談というのは初めてであり、普段とうってかわって、まずは相手が話してくれることを待つことにした。
そんなペロロンチーノの考えが伝わったのか、シャルティアはその重い口をようやく開くのだった。
「ペロロンチーノ先輩。わっちが大学を卒業したら養っておくんな……し? その……ちゃ、ちゃんとした対価は、か……体で……ありんすから」
「あの~シャルティア。いったいなにを言っちゃってるの?!」
シャルティアの口にしたことは、ペロロンチーノの予想を遥か斜め上をいくものであった。そのため、まじめに対応するつもりであったのに、ついつい、いつもの感覚でツッコミをいれてしまった。しかし、シャルティアをツッコミにもめげず、説明? を続ける。
「そのままの意味でありんす。わっちの大学生活も終わりが見えてたでありんしょ? その後、その……ぺロロンチーノ先輩に養っておくんなまし? その……、対価を支払いんす」
「うん。ごめん。やっぱり意味がわからないよ。ほんとどうしてそうなったの? 死体趣味拗らせてホラーゲーやりすぎて頭バグった?」
「別にバグってはありんせん! 大真面目に考えに考えた結果、こういう結論になったでありんす」
「なお悪いわ!」
ペロロンチーノは気を取り直し、いわゆる気の迷いでは? と質問するが、シャルティアは若干声は荒げているが深刻な表情で、真面目に考えた結果の提案だというのだ。
しかし要約……どころか、直球で体を対価に養ってくれという内容だ。
たしかにペロロンチーノの目から見ても、シャルティアはどこか俗世離れしているところがあり、悪く言えば抜けていると考えていた。そのくせ人の悪意というものを知らないわけではないあたり、天然なのだろうとも。そのせいで、変な勘違いを誘発し騒動になったこともあったが、今回は直球だったのでペロロンチーノも狼狽えていた。
「どこをどうやったらそんな結論になったんだい? 一応シャルティアも全国でそこそこ有名な大学の学生ってのになるんだけど、卒業後投げ捨てるような話をしなくてもいいんじゃないか」
学園ナザリック 大学部。一応全国でも一定の知名度はある。学力で有名ではないが、そのへんの名も知られぬ地方大学よりかは就職も楽だろう。なにより、今は求人数もそれなりにあり、えり好みをしなければ食に困らない職にはありつけるのだ。
「その……すごくはずかしいことでありんす。で、できたら好かねえことをあまり話したくありんせん」
「たぶんだけど、さっきの対価云々のほうがよっぽど恥ずかしいこと言ってるからね。世間的に。とにかく話をきかせてほしいな」
ペロロンチーノは恥ずかしがるシャルティアをなだめ、なんとか理由を聞き出そうとする。
「むぅ。野暮なこといいなんすな……。でも、主さんの言葉で言う全国でもそれなりに名の知れた大学の学生、浪人も留年もしてないので経歴、そして体きれいなままでござりんすが、それでもお先は真っ暗というのはほんざんす」
「そうか? どう考えてもそれ相応に明るい未来が待ってるようだけど?」
ペロロンチーノは現在四年生。卒業に必要な単位はすでに取得済。今は内定した商社でインターンをしつつ、ゼミに定期的に顔を出すという要領の良い男である。自分の経験や先輩や同期の状況を考えれば、シャルティアのいう条件というのは、消して悪いものとは思えなかった。
「あまい。あまいでありんす。塩次郎のように甘いでありんす」
対するシャルティアは、現在三年生。学力にムラがあり要領も良くないため、数単位は四年までかかりそうだ。そんなシャルティアなりに自分を評価すると、あまり良い状況ではないと考えたのだ。
「わっちが……まともに就活できると考えないでおくんなんし。友達なんてアルベドとアウラぐらいしかいないコミュ障。変な方言残っているでありんす。趣味は死体愛好も相まってホラー好きなわりに、映画館みたいな人が多いところは嫌いで、学校と家の往復だけ」
あ、間違ったくるわ言葉のこと気にしてたのかと地味に驚いたペロロンチーノだが、気を取り直して思いついたことを質問してみる。
「いっしょに映画館とかいったとき、特に嫌がってなかったとおもったけど、気を使わせた?」
「いえ……一人でホラーを映画館でみていると、自然と笑みが浮かんでしまい、周りに引かれて……」
それは引かれるわ~。と思うが、あえてツッコミを入れない優しさを発揮したぺロロンチーノである。
「まあ、就職はできなくはないんじゃないかなかな? 大学ごとに就活でも待遇違うっていうし。うちなら地元企業への優遇とか推薦がなかったっけ?」
ペロロンチーノは地元企業の推薦や優遇があったことを、去年の記憶を掘り起こして思い出した。
「普通ならそうだったでありんす。先輩と違って私は文学部……それなんのやくにたつの?って圧迫面接されること請け合いの学部でありんす」
――これで私がアルベドみたいなら……話は別だったんでありんすが
アルベド 学園ナザリック 大学部 三年
ペロロンチーノやシャルティアと同じサークルに所属する才女。外見、学力、体力、礼儀作法、加えて外から見える性格に非の打ちどころはない完璧超人。加えるなら資格多数保持。唯一の欠点はストーカー紛いの思考で絶賛特定男性に執着中。
「アルベドは……うん、比較しちゃいけないね。さすがにシャルティアにああなれっていうのはその、なんだお? 素人にオリンピックで金メダル取れっ言うようなもんだよ」
アルベドの色気は天性のものだ。スタイルが良いとか顔立ちが良い。ある人物がかかわらなければ頭も良く、器量も良い。……とか、そんな生易しい評価を超越している才女とペロロンチーノは考えたが、それについては言及しなかった。それに外見という点においてベクトルこそ違うが、ペロロンチーノの視点からすれば、シャルティアも十二分に可愛いのだ。よってわざわざ口にすることは無かった。
「さすがにわっちも、就活前なのに一流企業から内定や推薦が複数きて教授の頭を抱えさせる人が例外なのはわかっているでありんす」
そう。アルベドはすでに内定や推薦が複数でているのだ。こんなこと普通はあり得ない。せいぜい学生がバイトをしている職場からオファーがくることは毎年ある話だ。逆に就活が難航したとき、教授が口利きすることもある。しかしすべてがはじまる前に、頼んでもいないのに推薦や内定がくるのは、本当にあり得ないことなのだ。
「でも、客観的にわっちを評価すると、どう考えても就職活動で生き残る人物ではありんせん。企業が欲しがる人材とは思えないのもまたゆるぎようのない事実でありんす。そもそも、いったいわっちを採用してどんな仕事をさせるんでござりんしょ? 営業? こんな方言のきついわっちに? 事務仕事? 今の時代、もっと優秀でそれこそ資格持ってる人に、AIなどがサポートしてくれる各種システムを使えばより効率的でありんす。そもそも開発? 寝耳にバグを仕込む自信があります」
シャルティアは毒を吐き出すほどに、表情はどんどん暗くなっていきます。ペロロンチーノも違うと安易に否定するのは簡単だが、それではそもそもここまで思いつめた原因がわからないと思い、会えて耳を傾けるのだった。
「わっちがもっているものなんて、それこそこの体くらいのもの……ほんとうに、現在社会の中では些細なものでしかありませんから」
「え、えっと……たしか、シャルティアの家は教会だったんじゃ……」
「わっちの家はプロテスタントですが、女でも問題ではござりんせん。でも、この性格ですから……」
まあ、シャルティアは死体愛好家にして流血愛好家、アレな属性てんこ盛りのため、教会でシスターやってる方が違和感がすごいことになってしまう。なにより、若かりし頃(中二病絶賛時)に黒ミサをかまし、死体愛好家などの趣味も相まって親から信仰に疑問符を持たれている時点でお察しである。
「普通に考えて、私が就職しようと がんばったとしてもまっているのは……」
どこかの企業の面接室。
面接官「大学名以外ゴミみたいな経歴だな。だが悪くない顔してんじゃねぇか。特別にいい点つけてやってもいいが……ちょっとそこに使われてない防音設備がある部屋が……」
「とまぁこういう未来がまってるとしか……|
「アウトォォォォォ!! 薄い本読みすぎ! またはエロゲやり過ぎ!」
シャルティアのあんまりな妄想に、ペロロンチーノが全力のツッコミをしてしまう。
「だ、だって!!わっちの就活なんて、こういう話か失敗しすぎて心へし折れるかのどっちかでありんしょ!」
言い過ぎだが、まあ地方でもセクハラとか気に召せずこんな風に言ってくるところもあるだろうが、本気の要求なんてことは無いはずとペロロンチーノは考える。
「じゃあ、倍率高いけど地方公務員とかどうだ?」
「わっちが公僕をまともにやれるはずがないじゃないですか! 百歩譲ってできたとしても公務員は競争が高いでありんすし、地方となると閥がいろいろ……」
「まあ、地元ならギリで可能かもってことだね」
「あくまでギリでありんす」
シャルティアのいうこともただしい。コミュ障といっているが、謎のくるわ言葉は慣れない人間は聞いてて疲れるし、真面目なところで真面目に会話するようなTPOをわきまえられるような存在でもない。無理に装えば、どこかで天然のドジを踏むのだ。
「逆に一般じゃない公務員はもっと論外でありんす。消防官? むしろ私の趣向では火をつけるほうなんですが? 警察官? 私の趣味嗜好がすでに犯罪者寄りでありんす」
「あ、そこ自覚あったのね」
ついぽろっとペロロンチーノが漏らした感想に、シャルティアはさらに暗い顔をする。
「まぁ納得していただけたところで どうか、養っていたしんしょう? ちゃんと対価は差し出すでありんす」
「一周まわって、そこに戻るのね」
シャルティアは暗い雰囲気を無理やり飛ばそうと、ポンと手をたたき、最初の言葉に戻すのだった。
「戻ったと言うか最初からその話しかしてないでありんす。その、まぁそういうわけで考えなんし?」
「考えてくださいっていわれても困るというかなんというか……」
「その、わっちが言うも野暮でありんすが、就活という視点で考えれば正直最底辺ありんす。でもそれなりに悪くない物件ではござりんせん?」
「ほんとそこ自分でいうか? というか、どこをどうかんがえたらそういう評価に?」
シャルティアのコメントに、ペロロンチーノは若干呆れながらも答える。
「まず、相応の大学に入れてますから子どもの教育などについてもある程度以上の対応はできるでありんす」
たしかに学力は消して高くないとはいえ、同じ大学に入れているのだ。同じ価値観で子供の教育はできるだろうとペロロンチーノは考えた。
「それから家事全般ですが……一応一人暮らしでありんす。掃除や洗濯は困らない程度にはできますし料理も……味音痴でないのはご存知でござんしょ? 内定を頂いたら全力で料理教室でペロロンチーノ先輩にあわせた方向性で習得する予定でありんす」
「コミュ障だけど料理教室には通えるんだ」
「さすがにそれくらいの努力は問題ありんせん。その……こちらも人生がかかってありんす。食事は生活の根幹にかかわることであればこそ独学でというのは、さすがに……食べ物の恨みはなんとやら、というでありんす」
たしかにメシマズの話は結構聞く。例えばペロロンチーノ達の先輩にあたる たっちみーだが、嫁さんが相当のメシマズらしい。学生時代からバカップルで、結婚してからも愛妻家で有名なのだが、愛妻弁当だけは断固拒否し、一日一食の職場での食事が生命線……と、先日飲み会に現れた時にこぼしていた。そういえばその場にシャルティアもいたのだから、この方向性の覚悟はなんとなく理解できた。
「一番のポイントでありんすが……この体はまだ未使用新品でありんす。病気もなにもないですし、お望みとあればいかようにでも言っておくんなんし」
「そんなこといって恥ずかしくないのか?」
さすがに、いい歳の男女でこの手の話題を全くしないわけでも、知識がないわけでもない。ただ羞恥心という点でどうかとついツッコミをペロロンチーノはいれてしまった。
「人並みに羞恥心はありんす。恥ずかしくないかいいなんすな。それでも、現時点で一番差し出せる価値有るものがこれなのは事実でありんす」
「いやあの、それってさっきの妄想で出てきたクズ面接官と一緒じゃん」
まあ、顔や体しか見ていないという点でついつい切り替えしてしまったペロロンチーノである。しかしシャルティアは大きく顔を横に振って否定する。
「何言ってるんですか! 一緒のはずないじゃないですか!」
「でもね」
「でも、じゃありんせん。クズ面接官は自分の立場を利用した卑劣な行為。わっちが提案しているのはそういうのじゃないでありんす!」
なぜか面接官はクズであることが断定されてしまっているが、とりあえずシャルティアは拳を握りきっぱりと否定する。
「わ、わっちはこのままだと、ろくでもないことになりんせん。その前に一番価値有るものを差し出しておきたいというか、その……どうせ就活で死ぬなら第一希望に全力を出しなんす」
「え、えっと……シャルティア?」
「そういうわけなんで どうでしょうか?」
ペロロンチーノも野暮ではない。すくなくとも親友のモモンガよりも、女性の機微には疎くない。過去のやりこんだギャルゲーとエロゲーの経験値が違うのだ。
そんなわけで、この話の流れというか設定に乗ることにした。
「本社以外に どこか受験の予定は?」
「ありんせん。わっち……そんなはしたない女でも。多情な女でもないでありんす……誓って専願でありんす」
そこは疑っていなかったペロロンチーノであった。なぜなら、シャルティアはまったくというほど男っ気がないのだ。むしろ女性に常に囲まれていた。本人としては友人は二人といっていたが、かなりの数の女生徒……しかも年下にばかり囲まれていたのだ。
「ごめん。むしろ女子間での経験がありそうだって疑ってた」
「あ、そっちはありんすよ?」
「え? ま……まあ、気にしないでいくことにしよう」
まさかの告白に一瞬たじろいたペロロンチーノだが、気を取り直すことに成功する。
「……よかった。その……ひ、必要とあらば、か、仮採用でもわっちは……」
「その仮採用したらお断りとか絶対できない気がするんだが?」
「だだだ、大丈夫でありんす! 本採用の強要とかしませんから」
シャルティアは否定するが、ペロロンチーノとしてはさすがにそれは無いと考えていた。この流れで仮なんて中途半端なこととをするのは、一番よくない。少なくともナイスボートルート一直線に思えたからだ。
「それにわっちはヤンデレじゃありません。好かねえことがあったからって傷つけたりしんせん。ほんざんす。ちょっといろいろと重たいでありんすが」
「いや、ちょっとじゃないおちょっと思うけどね。というか、うん。もっと他にいいようがあるような気がするよ。もうちょっとロマンチックにとか、オブラートに包んでとか」
男が言うのもあれだがと考えながらペロロンチーノは言葉にしてしまう。実際、どうも内容の根底はわかるのだが、一週回っておかしな言い回しになったままなのだ。
「あっちにはいいなんすな。ハードルが高すぎでありんす。それに人生最大の選択肢の一つを隠してそういうこと言うのは不誠実でありんす」
「え? 最初の取引要求って誠実さを重視した結果なのか」
「……」
シャルティアは横を向き目がどこかに泳いでいる。やっと自分が相当おかしいことを言っていたと自覚ができたのかもしれない。
「結婚とは原始的な契約でありんす。きっちりとこちらの事情をお話して置かないといけないかと」
「微妙に間違っているような、正しいような。しかしな~」
ペロロンチーノも答えがわかったのだが、さすがに急に決断をもとめらえては迷ってしまう。こんなとき自分の姉であるぶくぶく茶釜なら、スパッと男らしく決断するのだろう。一応性別上女性だが。
「ダメでありんすか?」
「一つだけ、テストさせてもらおうか」
「テスト?」
「うん。テスト。といっても難しいモノじゃないし、すぐ終わるものだ」
ペロロンチーノは腹をくくることにした。
「シャルティアの正直な気持ちを聞かせてほしいな。「してほしいこと」を「建前や理屈」を抜きにして言ってください」
「うっ……」
ペロロンチーノの言葉に、シャルティアは顔を真っ赤にしてたじろぐ。
「難しく考えないでいいよ」
「意趣返し……でありんすか? いじわる……」
「ま、これくらいはね。はいどうぞ」
パチンと指を鳴らし、雰囲気を切り替えるように手をシャルティアに向ける。
シャルティアは顔を下に向け、まるで蚊の鳴くようなか細い声で答える。
「……さい」
「うん。聞こえないよ」
シャルティアのそんな姿に、ペロロンチーノは笑みをうかべそうになるのを抑え、もう一度要求する。
「ペロロンチーノさんのことがす、好きです! だ、ダメな女ですけど、結婚を前提にお付き合いしてください」
そのセリフを言いきるとシャルティアは顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。
「すいません、こっち見なんし。おねがいしなんす。今は見なんし。わっちが何を言っているのかわからないというか、何かがあふれてきて漏れ出てるというか。そっとしてくんなし」
せきを切ったように言葉を紡ぐシャルティアを、ペロロンチーノは正面から優しく抱きしめる。
「大丈夫」
「だいじょうばないでありんす。ほんざんす。というか限界でありんす。いっぱいいっぱい考えてみんしたが、無理でありんす。かんにんしてつかあさい。恥ずかしくて死んでしまいんす」
ついに泣き出したシャルティアは、ペロロンチーノの腕から逃れようとする。しかしペロロンチーノはそれでも手を放さず優しく耳元でささやく。
「返事する前に死なれるとこまるな」
「ペロロンチーノさんなら、わっちなんかよりいいひとがいくらでもできるでありんす。優しいことをおっせえすな。もうようざんす」
ペロロンチーノは両手を優しくとシャルティアの両ほほに沿え、視線を合わせる。その距離は10cmもない。
「それじゃシャルティア、試験の結果だ」
「はい。ひとおもいにらくに……」
「シャルティアの気持ちは素直に嬉しいよ。だからその、俺でよければ喜んで」
……
「……シャルティア?」
……
「ちょおっとぉぉぉ、シャルティア!!」
「あ、ペロロンチーノさん。そのもう少し寝かせておくんなんし。いますごく都合の良い夢を見ていたでありんす。できればそのまま永久に見て……」
「ゆ、夢じゃないですから!」
目を閉じて意識を飛ばそうとするシャルティアを、ペロロンチーノは軽く揺さぶるように起こす。最後まで締まらない二人である。
「これは死んだでありんす。わっちは死んだでありんす。恥ずかしすぎて、もうだめでありんす」
「現実逃避してないで戻ってこようね」
結局、大騒ぎの二人の声は隣のゼミ室どころか廊下にまで響きわたっており、告白の結果は瞬く間に広がったのであった。
******
「ってことが会ったんだ」
「まあ、そっちもそうなるのは時間の問題とおもってましたけどね」
「そっちも?」
「実は……」