
「童貞と関わるとロクなことがない」。
それが今回の作品(第1部「俺は、君のためにこそ死ににいく)を作って得た教訓。
真性童貞の加賀と一か月付き合ったが、彼は言われた通りのカットを撮って来ないし、時間は守らない。
約束の時間に連絡しても「まだ西荻(加賀の自宅)です」だと。もう「家族に何かあったの?」と聞くのも疲れた。
で、何かを要求すれば「あーだ、こーだ」と(経験もしてないくせに)文句を垂れる。チャレンジ精神が皆無なのね、童貞って。しかも語尾に「すいません」と付けるのも腹立たしい。
「いいかげんにその性格、直せ」と童貞を捨てる為に風俗を勧めるも、「風俗嬢は汚いから嫌だ。職業差別と受け取って貰って結構」なんてのたまう。そんな言葉を聞く度に頬をひっぱたいてやったが、叩き過ぎて手が痛い。
やはり23年間もこの日本に生きてて、未だ「童貞」ってのは異常だ。
これだけ巷にエロが溢れてると、嫌でも己の性と向き合わざるを得ないはずだ。なのにそれを避け、逃げ、オナニーで済ます。
この短絡的な行為が、時間を守らない、約束を破る、仕事が続かないということに繋がっているのだろう。
僕がこういう風に加賀を貶めるようなことを書いても、きっとあなたは「そんなこと言っちゃって、松江さんたら、本当は優しいのに」と思うだろう。
違う、違う、何も分かっちゃいない。
あなたは2時間も「クリスマス、クリスマス…うぐぐ」と呟く映像を、「しゃべり場」を見ながらオナニーする映像(さすがにこれはカットした)を、ゴミ溜の中でギターを何度も失敗し、その度に「テープ無駄にしちゃった」とコメントする映像を見させられることが、どれだけ腹立たしいことか分かるだろうか?
僕はそんなものが15本も手渡された時(しかもラベルには「FUCK!」とか「家家家家家」と加賀でさえ判別不能なことしか書いてない)、いいかげんにキレた。
それからだ、僕が加賀に対し、距離を置くようになったのは。
すると彼が何か失敗をしても「あ、しょうがないか童貞だから」と思えるようになった。
加賀にアドバイスし、一緒に考え、何か面白い素材を期待するような制作の仕方をしていたら、とてもじゃないが僕の方が保たなかった。
付き合ってられるか。深夜に突然かかる「まさみさん(仮名)が、まさみさんが…ぐごぉ」って、電話だけでもうんざりなのに。
それでも僕が計18時間分の素材を全て見、編集し、まとめられたのは彼の周囲に集まる人間が素敵だったからだ。
同居人の(加賀曰く)イケメンの大西くん、クリスマスイブにもバッティングセンターに付き合い、「明石家サンタ」でイブを過ごした友人や、「加賀君は素敵」と、「本気で?」としか思えないコメントを言った女友達に、マドンナまさみ(仮名)さん。
皆さんはいい人です、ホントに。
加賀は「友達には感謝してる」なんて言ってるが、そのありがたさに気付くのは彼が童貞を捨て、彼女とイブにケーキでも突っ突きながら「あれ、意外とつまんない」と我に返った時だろう。
あとはやっぱりカンパニー松尾監督と、浜田社長と、女優Rちゃんには感謝。
加賀は最後までRちゃんの名前を知らなかったけど、例のプレイと帰り際の松尾さんの言葉は忘れない…はず。
あなたがこの作品見て、何かのきっかけで加賀と話をして、もし彼がそのことを忘れてたらひっぱたいていいので。
僕が許可します。
ちなみに加賀の一連の行動を見て、切実な共感を覚えた男性がいたとしても、僕は二度とプロデュースをしないのであしからず(女性の場合は応相談)。
だって「童貞と関わるとロクなことがない」から。
文・「童貞。をプロデュース」構成:編集、松江哲明(06年1月)
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