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【社説】

台湾総統選 真の民意を尊重したい

 来年一月の台湾総統選は事実上、与野党候補一騎打ちの構図が固まった。米国と中国は台湾海峡の覇権をめぐり干渉を強めているが、台湾の人たちの真の民意が尊重される選挙にしてほしい。

 総統選には与党民進党の蔡英文総統と、野党国民党の韓国瑜高雄市長が出馬を表明した。国民党予備選で敗れ、独自に出馬を模索した鴻海精密工業の郭台銘前会長は出馬を断念した。無所属候補に出馬の動きもあるが、再選を狙う蔡氏と政権奪還を狙う韓氏の一騎打ちの選挙戦となりそうだ。

 独立志向の民進党は昨年十一月の統一地方選で大敗し、蔡総統の支持率は低迷していた。だが、「逃亡犯条例」をめぐる六月以降の香港の混乱が、蔡氏への強い追い風になってきた。

 中国が、将来の台湾統一を念頭に国際公約した「一国二制度」を香港で踏みにじっていることが、台湾人の反中感情を高めたことは疑いない。蔡氏は辛亥革命を記念する十日の「双十節」で「一国二制度の拒否は二千三百万人の台湾人の共通認識だ」と強調した。

 昨年の高雄市長選で、庶民派を売り物に当選した韓氏は当初、経済大国中国との蜜月ぶりをアピールしていた。最近はネット等で広まる「国民党が政権復帰すれば中国にのみ込まれる」との「亡国論」打ち消しに躍起だ。

 台湾総統選では、歴史的に中台関係が大きな争点になってきたことは否定できない。

 だが、台湾に親中派政権を復活させようともくろむ中国の干渉は目に余る。経済援助を切り札に九月、南太平洋のソロモン諸島、キリバスと相次いで国交樹立し、台湾との断交に追い込んだ。

 米国は蔡政権に対し、新型のF16戦闘機を含む近年最大規模の武器売却を決めた。米中の覇権争いは東アジアの安定を損なう危険もある。

 台湾紙・蘋果日報は「台湾は米中の覇権争いの犠牲者である」とする社説を掲げた。米中の干渉により、台湾人の真の民意が選挙結果に反映されない危険性を訴えたものと理解できる。

 民主化された台湾で教育を受けた若い世代の多くは「自分は中国人でなく台湾人」と考えているが独立志向ではない。近年の世論調査では、八割近くが中台の「現状維持」を支持している。

 総統選は、民意が台湾の将来を決める大切な機会である。米中の力比べが過度に影響するのは健全ではない。

 

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