2016年3月30日(水)
“角川ゲームミステリー”シリーズの第1弾作品として2016年6月16日に発売が予定されているPS4/PS Vita用ミステリーアドベンチャーゲーム『√Letter ルートレター』。3月31日発売の電撃PlayStation Vol.611には、本作の最新情報が6ページにわたって掲載されている。
ここでは、昨年11月の初報公開時に本作のプロデューサーを務める安田善巳氏に行ったインタビューの全文を公開しよう。
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| ▲角川ゲームス代表取締役社長・安田善巳氏。 |
――まずは本作の開発の経緯からお聞かせください。
そもそもの始まりは、人の“縁”です。それもいくつかありまして、まず1つ目は数年前、島根県に勤めている私の高校時代の同級生と会ったんです。そこで「島根県の魅力を広く、海外も含めて伝えていこうというプロジェクトで、ゲームを利用して何かできないか?」と相談されたことですね。
当時は、気持ちはありがたいし、やりがいのあるテーマだとは思ったのですが、ほかの案件などの関係で具体的に何かを制作することはできませんでした。ただ、そのプロジェクトのことはずっと意識し続けていました。
そんななか、2つ目の“縁”で箕星さんと出会ったんです。もともとは『GOD WARS ~時をこえて~』でキャラクターデザインを担当していただいたのですが、その作業が軌道に乗ったときに「地方を舞台にした高校生をヒロインとするミステリーアドベンチャーゲームを作りたい」という企画の提案を受けたのです。
――箕星さんの企画から制作をスタートしたわけですね。
正確には、まず箕星さんが長谷川(ディレクターの長谷川仁氏)と「こういう作品を作りたいね」と企画を練っていて、その提案を受けて、私も加わってミーティングを行うようになったという感じですね。
そして、この2人のプロジェクトを成功させるにはどうすればいいのかと考えた際、箕星さんが描かれる魅力的なキャラクターに加え、我々が地方の人々の暮らしを忠実に再現した舞台を作り、そこでリアルな人間ドラマを繰り広げているようなアドベンチャーゲームであれば、制作する価値があると考えました。
普通のアドベンチャーゲームでは、箕星さんがこれまでかかわられてきた作品とあまり変わりません。箕星さんが描くキャラクターの魅力をより高めるには、リアルな舞台や人間模様といった、これまでにない要素が必要なのではないかと。
――それで、安田さんの出身県であり同級生の方々とのつながりもある、島根県を舞台にされたわけですね。
はい。企画の時点では舞台は地方というだけでしたし、もちろん先ほどのプロジェクトのための作品でもありませんでしたが、協力を得やすい……地の利を生かすという感じですね。おかげさまで地元の方々の暮らしをとことん取材することができました。
本作の設定は、取材前にある程度は構築していたのですが、実際に取材してみるとじつは違うということも多かったですね。例えば、あるお店の画像が、お店そのものは実物どおりでも、その周辺は違っていたりするわけです。
今回は、何度も取材を行って、風景はもちろん人々の行動……どのお店をよく利用するかといったところまで、設定と違う部分はすべて実際のものを基準にするようにしています。そのため、リアルな人間模様、人間の持つ空気感のようなものが伝わってくる作品になったと思っています。
――ちなみに本作は“角川ゲームミステリー”シリーズの第1弾ということですが、第2弾以降の制作も予定しているのでしょうか?
現時点では、2作目については未定です。ミステリーは伝統あるジャンルで、我々としても定期的に作品を作っていきたいとは思いますが、作品を制作するなら何か新しい要素を付加させるということが角川ゲームスの理念です。今回、それが地方の人々の暮らしを再現するという部分で、地元の方々の深い協力を得られる島根県を舞台としたため実現できました。
第2弾以降を制作することになった場合でも、どこかの地方を舞台にすると思いますが、その際には本作を遊んでいただきながら「こういうゲームを作りたいのです」とお願いできます。その意味でも、本作の舞台を島根にしたのは自然な流れでしたね。
――第2弾以降も、どこか密着して取材できるところがあれば制作したいということでしょうか?
ぜひ、やりたいですね。
――ゲームについてお聞きしたいのですが、まずタイトルの“√”には、何か特別な意味があるのでしょうか? 平方根の根号の“√”は“root”で、ゲームのシナリオでいう“ルート”は“route”になりますが。
今回は、シリーズのコンセプトを“不完全なもの”として設定しています。“角川ミステリーゲーム”ではなく、少し変な“角川ゲームミステリー”という言葉になっているのも、“ルート”の字が違うのもそのためです。
これは“不完全なものが人間であって、それゆえにいろんな問題が起きるけども、人間にはいいところもたくさんある”、そんな人間ドラマを描いていこうという、我々の心構えのようなものです。
“√”の部分については、これは基本的に分解するもので、今回は手紙を分解するということですね。詳しくは言えませんが、ゲーム中で手紙を分解して組み直すことでエンディングが変化する、ちょっとした仕掛けを入れています。その意味も込めて“√”となっています。
――本作は、手紙がかなり重要な要素になりそうですが、これは企画段階からそうだったのでしょうか?
そうです。手紙を使いたいというのは、箕星さんと長谷川のアイデアですね。文通で高校時代の青春を描くというのは、彼らのこだわりです。私としては、逆に新鮮でいいんじゃないかと思いましたね。
――今はメールやLINEなどがコミュニケーションのツールで、手紙というのはひと昔前の雰囲気が感じられます。
ターゲットにしているユーザーを意識して作った……というと語弊があるのですが、やはり手紙による文通というのは、作り手の世代的に「高校時代をやり直せるならやり直したい」という男の夢、気持ちをかなえる際のアイテムということですかね。
――想定しているユーザー層はどのあたりなのでしょう?
主人公(33歳)に近い年代ですね。本作の物語でいうと、15年前の1999年(※インタビュー時は2015年)に高校生だった世代。このあたりから上の世代の方たちは、さまざまな名作を遊ばれた経験があり、アドベンチャーゲームに思い入れがある方も多いと思います。なので、そのような30代から40代の方たちに、ぜひ遊んでいただきたいですね。
――そのような方たちは、文字どおり主人公を自分の分身としてプレイできそうですね。
まさにそうですね。
――表紙イラストやキービジュアルからすると、亜弥を含む3人がメインヒロインになるのでしょうか?
ネタバレになるので詳しくは言えませんが、物語のカギを握る人物たちではありますね。
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| ▲本インタビューが掲載された電撃PlayStation Vol.602の表紙。 |
――この3人の女の子と、シルエットで描かれている6人が主な登場人物なのでしょうか?
アドベンチャーゲームはちょっとしたことがネタバレにつながるので、あまり多くは言えないのですが、彼らの家族や街の人たちなど、ほかにも多数の人物が登場します。
そして、1つだけ言えるのは、亜弥たちの姿は15年前に主人公が文通をしていたときのものなんですね。それも、文通ということからわかるとおり、同じ学校に通っていたというわけではなく、あくまで主人公が手紙から想像した姿。
そのため、これもあくまで例で実際どうなのかは言えませんが、キービジュアルの右端の少し太めの少年が、今はスリムなイケメンになっている可能性があります。また、亜弥と青色の髪の女の子は仲がよさそうですが、高校卒業後に大ゲンカして交流が途絶えている可能性もあるわけです。
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| ▲本作のキービジュアル。 |
――主人公とほかの登場人物たちに一切面識がないというのは、かなり斬新ですね。いわゆる推理モノの作品で容疑者などと面識がないのは当然ですが、それでも主人公の相棒的な知り合いが1人は登場します。
そうですね。そのおかげというわけではないですが、実際にプレイされたときは、いろいろな事実がわかるたびに驚きがあって、かなり楽しんでいただけると思います。
――ちなみに、亜弥はかなり清楚な印象のキャラですが、箕星さんに「清楚なイメージで」という感じでデザインを依頼されたのでしょうか?
いえ、基本的に箕星さんがイメージするヒロインを描いていただきました。私も監修はしていますが、変更点はほとんどなく、箕星さんと我々のイメージがほぼ一致していた感じですね。
今回、箕星さんはこれまでとはやや異なるデザインに挑戦したいというお気持ちがありました。その点でも考えが共通していてうれしかったです。ユーザーのみなさんも、箕星さんが描かれるキャラクターの新たな魅力を感じてもらえるとうれしいですね。
――ゲームシステムについてもお聞きしたいのですが、アドベンチャーパートだけでなくシミュレーションパートも用意されているのはなぜでしょうか?
ミステリーアドベンチャーは、さまざまな結末があってもメインとなるエンディングはどうしても1つになりがちです。でも、アドベンチャーゲームをプレイするならすべての結末を見たいですし、それぞれの結末ごとに感動や満足感、達成感を味わいたい。まあ、これは私にコアゲーマー的なところがあるせいかもしれませんが(笑)。
なので、シミュレーションパートで手紙に返信することにより物語がさまざまに分岐する、2周、3周とプレイしても十分に満足できるようなマルチエンディング形式にしました。ゲーム中、実際に文通していたのは15年前の過去のことなので、返信で現在が変わる=過去を変えて人生をやり直すという形で、先ほども言いましたが“男の夢”を実現しています。
――返信は選択肢を選ぶ形式のようですが、結末の分岐にほかの要素が関係していたりしますか?
シンプルに選択肢だけですね。ただ、返信しだいでヒロインの主人公に対する反応は大きく変わりますし、物語の展開もガラリと変わります。作品によっては、ゲーム序盤に主人公が殺されて終了するような結末もありますが、本作は各エンディングにしっかりとした物語が用意されているので、ぜひプレイして変化を楽しんでいただきたいですね。
――アドベンチャーパートは画面写真から推測すると、“移動”“聞く”などコマンドを選んで進めるのでしょうか?
基本的にはそうですね。ただ、街には住人たちのたまり場のような施設があって、そこで必ず誰かと会えるようになっています。なので、例えばそこでメガネくんがAにいるという話を聞いたあとにAに行く。そこで自分がメガネくんだと認めなくても、再度たまり場に戻ってAでBをしているという話を聞く。それを繰り返し、最終的に彼に自分がメガネくんだと認めさせるような流れでストーリーが進んでいきます。
――“移動”はマップから移動先を選ぶ形式でしょうか?
そうですね。かなりオーソドックスなシステムになっています。ただ、重要な証言・証拠を得るためには現実さながらの地道な情報収集が必要になりますね。
――ちなみに、シナリオに藤ダリオ氏を起用した理由は?
本格的なミステリーゲームを作るということで、そのシナリオをお願いできる方を探していたときに、たまたまお会いする機会があったんですね。そこで意気投合しまして、思い切ってお願いしてみたところ、ありがたいことに引き受けていただけました。いわば3つ目の“縁”になりますね。
――シナリオはすべて藤ダリオ氏が書かれているのですか?
おおもとのプロットは箕星さんとともに、我々で用意しました。それに取材で得た情報をプラスしてお渡しして、あとは「自由自在に作ってください」という感じですね。
――角川ホラー文庫の『貞子3D』などでおなじみの方ですが、ホラーテイストが強めだったりしますか?
本作はミステリー作品でホラー作品ではありません。ただ、物語の展開は本当にさまざまです。詳細はプレイしてみてのお楽しみですが、藤さんのファンも満足される展開がある……かもしれませんね。
――亜弥役の声優に日高のり子さんを起用して『ミステリー女優』を立ち上げるそうですが、これはどういったものなのでしょう?
本作は1999年に高校生だった方たちに、再び青春を味わっていただくのがテーマの1つです。そのため、90年代にスーパーアイドル的な声優として大活躍されていた日高さんにお願いしました。当時、彼らが見ていたアニメ作品のいずれかに必ず出演されていたと思うので、日高さんの声を聞くことでも青春時代を思い出していただけるのではないかと。
――そうなると、残る2人のヒロインの声を担当するのも、当時活躍されていた方になりますね。
はい。今回はまだお伝えできませんが、きっとユーザーさんに喜んでいただける方だと思います。
――ミステリー女優の詳細はどのようなものなのでしょうか?
『ルートレター』を島根県を舞台にした1つの演劇と考え、ほかの作品……まだ具体的には何も進行していないので申し訳ないのですが、第2弾以降の作品にもなんらかの形でかかわっていただこう、というものです。なので、まだ現時点でお話しできることはないのですね。今後にこうご期待、という感じです。
――テーマ曲に竹内まりやさんの『純愛ラプソディ』、そしてカバーに歌い手のろんさんを選ばれた理由は?
私と同じく島根県出身で、さらに1990年代にいくつもの大ヒット曲をリリースされている、というのが大きな理由ですね。弊社のスタッフに大ファンがいて、激しいプッシュを受けたというのもありますが(笑)。
なお、角川ゲームスとしては、発売する作品は海外も含めてなるべく多くの方に遊んでいただきたいと思っています。PS4とPS Vitaのマルチプラットフォームなのもそれが理由です。ただ、本作は物語などをやや年齢が高めの方を基準に設定しています。
そのため、テーマ曲は『純愛ラプソディ』にするとしても、歌い手の方は比較的若いユーザーさん、例えば現在の高校生たちに人気の方にする必要があるだろう、と。そこで、人気があるのはもちろん、竹内さんが認める歌唱力もお持ちという、ろんさんにお願いすることにしました。
――最後に読者にメッセージをお願いします。
我々なりに遊んでいただいた際に、驚いたり、おもしろかった、と思ってもらえるような仕掛けをいくつか仕込んでいるゲームです。こういうジャンルの特性上、事前にお伝えできない部分もたくさんあるのですが、そういうところも含めて、ご期待いただきたいと思います。
今週木曜日発売の電撃PS Vol.611では、『ルートレター』の第2報を公開。インタビュー中で言及されている“シルエットの登場人物”に関する続報や、アドベンチャーパートのゲームシステムの詳細を紹介している。
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さらに、“ミステリー女優”と“島根”をフィーチャーした特別企画もスタート。詳細はぜひ誌面を確認してほしい。
(C)2016 KADOKAWA GAMES
データ
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