馬鹿模型番長である。地雷図書室はですます調でお届けする。
今回は変り種ライトノベルを簡単に紹介します。面白いとか面白くないを通り越して物凄いモノを読んだなあという感想しか残らなかった、唯一無二の個性が鈍く輝く作品群です。
長い事探し回って隣町のブックオフの100円棚で発見しました。短編集なのですが、女子高が舞台の話は先生の講義だけで終わってしまったり、最後のページが『悪の江ノ島大決戦』流用だったり、そもそも東京忍者が登場しなかったりと、煙に巻かれっぱなしの一冊です。
貴重な作者インタビュー。拙記事より興味深いです。
表紙だけではギャグ作品とは思えません。ひたすらカンフーファイターや敵の人造人間バギー達が好き放題に暴れているだけの暑苦しい作品なので、今日的尺度では話の脈絡が無いと断ぜられそうな作品ですが、不条理ギャグを力技でラノベに持ち込んだ作品でもあります。
話が前後しますが、不条理モノは作者のセンスと手綱捌き如何で『伝染るんです。』(88~94年、吉田戦車)のようにヒットもすれば、『のこぎりヘアー』(95年頃、作者名失念)のようにあまり支持も得られず記憶の彼方に埋没したりもします。
後者は不条理というより、ただ単に主人公のキャラクター設計が破綻していて他者と会話が成立していないだけだったような記憶があるのですが、そんなヒロインがラノベにもいました。『ななかさんは現実』 鮫島くらげ、小学館ガガガ文庫2010年発行。
第4回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞受賞作でもあります。金銀銅で言えば銀賞に相当します。
この作品はオタクネタの絨毯爆撃的大量投入と、ヒロインななか嬢の性格が少々ズレているを通り越して斜め上に突き抜けているのが特徴で、どちらかといえば暑苦しいというより鬱陶しい作風です。そのため刊行当時はなぜこれを受賞させたと怒りが出版社に向ってしまった書評ブログが幾つもあったものです。
追記。『東京忍者』で名前の出て来た『悪の江ノ島大決戦』 (とまとあき、塚本裕美子 富士見書房90年発行)も探してみました。江ノ島に秘密基地を構える悪い博士と鎌倉の大仏(PCエンジン制御)に乗った主人公が闘う、個人的に痺れる作品です。
イラストが80年代そのままの絵柄で懐かしいです。巻末謝辞に拠れば鎌倉市観光協会や藤沢市役所などの取材協力を受けているそうで、公認とまではいかないものの『群馬県から来た少女』に先駆ける形でローカル小説があったのだと今改めて気が付きました。
今日のようにアニメなどの舞台の町が聖地巡礼の対象になるなんて夢にも思わなかった時代のご当地小説なのですが、発売当時の折込出版広告でどのようなPRがされていたのか知りたいところです。
今回紹介した5冊は、入手困難な本もありますが、読めば何らかの衝撃を受ける事だけは請け合いです。心と財布に余裕があれば試してみるのも一興でしょう。
それではごきげんよう。