福永は早速、それをスポーツ紙と週刊紙に持ち込んだ。22歳の色香漂う写真は評判を呼び、他のマスコミからの問い合わせが殺到した。ところが、あまりの反響にマネジャーから以後の掲載を禁止され、写真も回収されてしまった。
万事休すと思いきや、健さん同様に次の手は主題歌。福永が藤に歌わせることを提案すると、俊藤プロデューサーもすでに構想を練っていた。
娘盛りを渡世にかけて…。作曲は音楽監督の渡辺岳夫。藤は撮影中の京都から東京・赤坂にある渡辺の事務所に3度、レッスンに通った。
「みずみずしい彼女の歌声を聞いた時、とてもシンプルで誰にでも歌えると思った」
福永はテスト盤のソノシートを、レコード会社やラジオ各局のディレクターらに配布。
「映画もレコードもヒット。映画はシリーズ8作が製作された。だけど、右肩全部の緋牡丹の入れ墨を露出したのは第1弾のみ。なのに、ファンは全シリーズで純子が見せたと思っている。よほど脳裏に焼き付いたのだろう」
72年、藤は歌舞伎役者の尾上菊之助(現・菊五郎)と結婚。同年に引退記念映画「関東緋桜一家」で約10年(出演作90本)にわたる女優生活から別れを告げた。 (敬称略)
■福永邦昭(ふくなが・くにあき) 1940年3月17日、東京都生まれ、76歳。63(昭和38)年、東映に入社。洋画宣伝室や宣伝プロデューサー、宣伝部長、東映ビデオ取締役を経て、2002年で定年退職。一昨年、「日本元気シニア総研」に参加し、研究委員、シニアビジネスアドバイザーの資格を取得。