ユニー・ファミマHD相談役、上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、上司の指示で不正に手を染めてしまった32歳の男性から。このままこの会社に居続けるべきか、悩んでいます。上田さんは「会社を辞めろ。ただし……」とアドバイス。この男性が辞める前にすべき行動とは。
悩み: 上司からデータ改ざんを指示され、不正に手を染めてしまいました。良心の呵責(かしゃく)を感じており、このまま会社に勤め続けるべきか悩んでいます。
大手メーカーの子会社で製造工程の条件を設定する工程管理の業務に従事しています。他の関連子会社にも展開するような製造条件の大きな変更のため、慎重派の意見もあり、使用している薬品の濃度などの物性の測定が確認項目として追加されました。
測定結果は今回の変更には不利な内容だったのですが、上司とさらに上の上司からデータ改ざんを指示されました。
「どんなことをしてでも変更を成し遂げた者が評価される」「細かいことにこだわって仕事が進まないようでは会社として立ち行かなくなる」「問題となるレベルの内容じゃない」などのせりふで押し切られる形で、私もデータ改ざんに手を染めてしまい、あっさりと変更申請の書類は承認されてしまいました。
昨今どの業界でも話題となっているデータ改ざんを自分もしてしまい、良心の呵責を感じると同時に、今後もこれが続くのかと思うと、やるせない気持ちです。同じ課の他のグループでも改ざんは行われており、不正は常態化しています。これからも、今の会社に勤め続けるべきでしょうか?
(32歳 男性 会社員)
大竹剛(日経ビジネス):今回は、企業の不正に関わってしまい良心の呵責にさいなまれている男性からです。内部告発に近い、とても深刻な悩みです。このまま、この会社に居続けてよいのでしょうかと、苦しんでいます。
上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役):残念ながら、答えは決まっていますよね。あなたは、この会社を辞めるべきです。
良心の呵責を感じているということですが、このままこの会社に居続けたら、もっと苦しくなりますよ。このように組織ぐるみで不正を隠蔽するような体質の会社は、これからもまた不正をしますよ。
大竹:必ず不正を繰り返す。
上田:そうです。それなのに良心の呵責に悩まされながらこの会社に居続けることは、あなたには無理です。この会社を辞めたほうがいい。
ただし、辞めるだけじゃ逃げることになりますよね、自分自身が。
大竹:そうですね。
上田:これは、やはり正さなきゃいけないですよ。内部告発の窓口となる部署に、データのコピーか何かを持って行ったほうがいい。自分が関与しているのだから、そういった不正を証明する資料があるはずです。書類から何から、全部隠匿されてしまうということがあり得るから、あなたは証拠を取っておくことが大切です。
もしも、そのような窓口部署がないのなら、マスコミか、もしくは取引先に「当社製品のデータは改ざんされています」と伝えるくらいのことをやるべきです。
当然ですが、そのデータを基に会社を脅したり恐喝したりしては絶対にいけませんよ。
コメント13件
フライヤ
企業の不正(改ざんだけではないだろうが)は全くないというのは
ないと思うが、意図的に重要な箇所を改ざんするなど悪質なものは
販売する製品やサービスで必ず影響が出るものではないですか?
それが原因で悲しい事象が発生してしまったら相談者は今以上
に...続きを読む心が苦しくなるでしょう。
社内の浄化作用は期待できなことには賛同します。
改ざんの方法、結果、指示の内容(証拠)これがないと
内部告発しても勝手にやったといい尻尾きりされるのでは?
準備して反撃しましょう!
一市民
自分なりの一線を持ち続けることが大事だと思います。悪事がばれた時、自分に悪意があったかどうかは問題になりません。上司も会社も守ってくれません。割の悪いことに、あなた自身に前科がつき、すべてを失う可能性があるのです。私の業界でも二重派遣が暗黙
の了解で行われていますので(それこそ超大手企業も行っています)、社長からそのようなことをやるように言われることがあります。「この形は絶対ダメです」とはっきりと言います。それで理解してくれない社長なら、自分が会社を去るしかないという覚悟です。誰も守ってくれません。自分は自分で守りましょう。...続きを読むig
>組織の中で、「もうこんなことはやめましょう」とか「是正しましょう」なんて言ったって、なかなかうまくいかないものです。だいたい、組織ぐるみでやっているから。
大竹:今回のケースは、明らかに組織ぐるみですね。このままこの会社に居続けても、精
神を壊してしまいそうですね。
...続きを読む■壊さないで皆さん、頑張っていますよ、要は気持ちの持ちようです。
上田:そう。ここでずっと我慢して、辛抱して仕事を続けるなんてあり得ない。あなたには、もっと前向きに頑張ってほしいですよ、本当に。
■皆さん、我慢して辛抱している。給料を繰れないわけじゃないなら留まって力を付けて欲しい。
☆私は大手トップ企業開発部にいました、リコール案件も裏実情を把握しています。内部告発制度を利用したが定年前5年間は全く仕事が与えられなかった。それでも再雇用合わせて10年間辛抱しました。
かうべる
内部通報制度があるのであれば、通報して様子を見てみるのも手かもしれません。自浄は極めて難しいですが、腐敗が現場レベルであれば内部通報を受けてトップレベルからの是正という可能性はまだ期待できます。逆に内部通報制度がまともに機能しないようであれ
ば、腐敗は骨の髄まで達して改善の見込みがないと言うことでしょうからアドバイスの通り転職を積極検討すべき状況であると思います。...続きを読む良心の呵責に悩まされながら会社に残るのは辛いですが、もっと酷いのはそのストレスから逃れるために言い訳を作り出して不正を正当化し、次第に不正を不正と感じなくなってしまうことです。これは防衛本能で働く脳の機能ですが、こうなると所謂”魂が汚染された”状態となってしまいもはや戻ることは難しくなってしまいます。
BANDIT
そもそも企業の不正がなぜいけないのか?
企業の不正が最終的に顧客・消費者に悪影響(事故、品質異常、etc)を及ぼす可能性があるからですよね。そのような企業の中にいて不正に関与しているのなら、まずしなければならないのは、覚悟を決めることです。
不正を隠して居続けるか、不正を公表して転職するか。
...続きを読む相談者が良心の呵責云々と悩んでいる間にも、不正対象の製品が世の中に出て行っているのですから、法に抵触している、もしくは社会的影響が大きくなる可能性が有るのなら、悠長な相談をしている暇などありません。
そして、不正データ情報の確保と、確信的に信頼できる関係者、いなければ弁護士など必ず連帯して行動してくれる人物の確保。
法に抵触していない、もしくは社会的影響が小さい場合は、大いに良心の呵責に苛まれてください。自分が不正に手を染めてしまった後悔と、今後の自分の企業人としての人生をどのように生きていくか?今後も企業で生きていく中で、不正・不適合・不具合などのハードルはいくつも出てきます。
自分を見つめ直すいい機会です。
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