仮面ライダー図鑑
『仮面ライダーエグゼイド』オープン記念
武藤将吾×高橋悠也 対談
2019.07.11
あらゆるデータを閲覧できる「仮面ライダー図鑑」に、『仮面ライダービルド』に続き『仮面ライダーエグゼイド』のコンテンツも追加! 今回は両作品の脚本を一手に引き受けた武藤将吾さんと高橋悠也さんに、図鑑の感想や脚本制作の思い出などを語ってもらいました。
- 武藤将吾
- 2005年にテレビドラマ『電車男』で脚本家デビュー。その後はテレビドラマを中心に活動しつつ、『クローズZERO』『テルマエ・ロマエ』といった劇場用作品にも参加。『仮面ライダービルド』で特撮作品に初めて参加し、高橋悠也と同様にテレビシリーズ全49話、劇場版、Vシネマ2作品、ファイナルステージの脚本をひとりで手がけている。
- 高橋悠也
- 1978年2月1日生まれ。東京都出身。自身が主宰する劇団UNIBIRDの舞台作品の脚本や演出を手がける一方で、テレビドラマやテレビアニメの脚本を中心に活動。特撮作品初参加となった『仮面ライダーエグゼイド』では、テレビシリーズ全45話から劇場版、Vシネマ3部作までの全脚本をひとりで担当した。
「仮面ライダー」の全脚本をひとりで書き上げることの苦労とこだわり
———「仮面ライダー図鑑」をご覧になっての感想をお願いします。
武藤各項目に関して、すごく細かく説明が書いてあることに驚かされました。自分自身も忘れかけていることまで書いてあり、ああ、そうだったなぁ……と、脚本を書いていた当時のことを思い出します。
高橋デザインもすごくおしゃれだし、見やすいですよね。冬映画とか周年記念作品になると、過去のライダーも登場することが多いですし、こういった設定をまとめたものがあると、作家としては頼りになります。
武藤今後はこれを参考にすれば良いんだと思うと、助かりますよね。
高橋本編を見ればわかることもあるんですけど、このアイテムがどういった経緯で登場したのかみたいな情報を頭に入れてから脚本に落とし込むと、説得力に大きな違いが出ますから。あとは、やはり公式ならではということで、解説に加えて写真も見られるというのは大きなポイントですね。これが無料で閲覧可能というのは驚きです。
武藤本編と一緒に改めて楽しめるといいますか、世界観の広がりが楽しめることにも感動しました。図鑑制作スタッフの方々の仮面ライダー愛をすごく感じますよね。
高橋1話限りの登場人物にまで切り込んでいく感じとか、今までにないサイトですよね。『ビルド』の用語集にある〝アジの開き〟とか〝一斗缶〟とか、こんなのがあったんだみたいなのもいっぱいありますし。
武藤我々脚本家にとってバイブルになりそうですよこれは。数多くの打ち合わせの集合体というか、自分たちの血と汗と涙の結晶が入っている感覚があります。本編自体の思い出だけでなく、このエピソードではあんな苦労をしたな……、みたいなことも思い出せるので、僕ら制作側にとっても使い勝手の良さだけではない、非常に嬉しいサービスだと思います。
———脚本の打ち合わせというのは、どれくらいの人数で行われるものなのでしょうか。
武藤制作が始まった当初は、設定を決めるための打ち合わせになるので、各エピソードの監督さんたちも含め、10人くらいの大所帯で行います。ただ回が進んで設定が固まっていくと、ひとり減り、2人減りと……。
高橋最終的には4人くらいになりますよね(笑)。
———テレビシリーズ、劇場版、Vシネマと、お2人は作品に関わるすべての脚本を担当した者同士ですが、それは最初から、「お願いします」という形でのオファーだったのでしょうか。
高橋結果的に最後までできたというだけで、最初からすべての脚本を担当するという話ではなかったですね。ただ、『エグゼイド』の仕事が決まったときに六本木でプロデューサー陣とご飯を食べ、その席で「できることなら全部書きたいです」とは言いました。大森さん(プロデューサーの大森敬仁)には「そんなことできるんですか?」って鼻で笑われましたけど(笑)。口で言うのは簡単だけど確かにそうだな……と思いましたが、とりあえず1クール目くらいはキャラクターを固める意味でも全部やりましょうということになったんです。それで頑張って1クール踏破したあとに、じゃぁ次のクールも……と、その頃にはだんだんペースがつかめてきて2クール目もひとりで書いたんです。ただ、ここまでやってしまうと、もはや他の脚本家さんじゃ書けないんじゃないかというくらい各キャラクターのキャラクター性が固まってしまい、もうあとは走り切るのみ! ですね。
武藤僕もひとりでやる前提ではなく、序盤の方で何度か大森さんから、「サブの脚本家さんを入れますか?」という話はありました。ただ、もともと連続ドラマの脚本とかも僕はひとりで書くことが多かったんです。あいだに他の方が入ると、説明とか補足とかで余計に時間が掛かっちゃうんですよ。ただ今、思うとですが、まず仮面ライダーの脚本をひとりの脚本家が書くということが、すごく珍しいことなんだという感覚すらありませんでした。NHKさんの「大河ドラマ」とか「朝ドラ」はひとりなので、当たり前なんだろうな……と。でも、実際に担当すると恐ろしい現実が待っていたというとアレなんですが、映画とかVシネマ、連動するWeb媒体のスピンオフ作品が、テレビシリーズと同時に入って来るんですよ。これは仮面ライダーならではというか、「ひとりで全部でやるってのは至難の業だな」と思いながらやっていましたね。でも、ひとりだからこそ物語をブレずに描けたので、最後は、「ここまでやったんだから」という、自分にしかわからない何かに押されてやりきりました。
高橋確かに。終盤になるともう渡したくないという思いが強かったですね。