※幡野広志さんへ相談を募集しています。専用フォーム(匿名可)からご応募ください。
※相談文は原文のまま掲載しています。
息子が不登校になっています。と言うか、なりかけています。
私の息子は今中1ですが、最近体調不良だ、という大義で、朝はトイレに立てこもり、行けそうもない、と言い、また眠り始め昼前に起き、お昼を食べたら学校に行く、といって具合悪いと言って休みます。
上に一人姉がいて、高校2年生ですが、高1の夏休みからやはり学校に行きたくない、と言い出し励まし、勇気づけたりして学校に送り出していたのですが体調不良で、もう学校最寄りの駅で吐く、等を繰り返し行けなくなってしまい、あんなに頑張って入った高校を「2度と行きたくない。」とやめてしまいました。
親の都合で、小学生の時に子供達に転校させて、その転校先でイジメにあい、それでも社会の理不尽さを学校で学んで乗り越えて欲しい、などと大きくなったらきっと分かってくれるはず、とおもって励まし続けてきたことが、その娘の元高校のスクールカウンセラーさんに「まるで拷問を与え続けていた感じですよね。」と言われ、間違った育て方をしてしまっていたのか、と夜も眠れなくなり、何もかも悲観的になり、息子とは対話を増やさねば、とアレコレ私なりの工夫をしてきたのですが、彼の思春期、反抗期と相成ってまるでからぶり、挙げ句の果てにウザがられ、何を言っても暖簾に腕押し状態で、学校に相談しても、少し様子を見ましょう。となんかよくきく耳障りのいいような悪いような返答をされ途方に暮れ始めています。
私の育て方が悪かったのだろう。何がいけなかったのだろう。と堂々巡りをしています。 去年から、私自身もメンタルクリニックに通院しています。
なにかしら、答えを見つけ出したくて、幡野さんの本2冊も読み褒めなかったことが、ダメだったのか!ともうなんかこれから、何をしたら良いのか、わからず毎日をやり過ごしています。
いっそ、自分の病気を理由に逃げてしまいたい衝動に駆られますが出来ないでいます。
なんか、ただ、これからもこうやってやり過ごして生きていくのだろうとおもうのですが、幡野さんなら、どう感じるか、を、尋ねてみたくなりました。なんか、申し訳ないです。幡野さんの病状が少しでも改善していくことを心からお祈り申しあげます。
(悩める大人。 50歳 女)
娘さんの通っていた学校のカウンセラーさん、けっこうキツいことをいいましたね。スクールカウンセラーさんの仕事をぼくはあまり把握できていないのですが、「拷問を与え続けていた」って一般的にはいわないんじゃないですかね。
でもきっと、ここまでいわないと理解できないとおもったのでしょう。
スクールカウンセラーさんは子どもを助けたかったんでしょう、きっとたくさんの経験値からすぐに原因を見抜いているんですよ。でも、スクールカウンセラーさんがここまでいっても、あなたは理解できていないんですよ。だからぼくはこれからスクールカウンセラーさん以上にキツいことをいいます。
あなたはあなたで苦しんでいるのでしょうが、ぼくがあなたの背中を押してしまえば、あなたは自信を持ってしまいます。そうすればお子さんはより苦しむ結果になるでしょう。でもあなたの心をポキっと折ってしまえば、あなたがいま以上に苦しむわけです。
どちらに転んでもどちらかが苦しむなら、ぼくは子どもを救いたいです、あなたよりも弱い立場にありながら、あなたより将来の可能性が圧倒的に高いし、人生も長いからです。
お子さんが将来誰かの命を救うかもしれないし、献血をしてくれて、ぼくみたいな病人を救ってくれるかもしれないし、自分の経験をもとに人を助ける存在になるかもしれないし。
あなたはメンタルクリニックに通院しているそうですが、ご自身の体調を考えてここから先を読まないことも一つの手段です。そしてここから先をあなたが読んでも、あなたはやっぱり理解できないとおもうんです。落ち込むか憤慨するかのどちらかです。精神状態は悪化するとおもいます。
じゃあなんで書くかというと、あなたのふたりのお子さんが何かのきっかけで読んでくれないかとおもっているからです。あなたから相談がきたので、あなたに返事を書きますが、あなたのために書くのではなく、あなたのお子さんたちのために書きます。
まず、息子さんのことをあなたは全く信じていませんよね。お腹が痛くて朝トイレから出られないことも、お昼に体調が悪くなることもウソだとおもってるでしょ。なんですか「大義」って、なんですか「立てこもる」って。この言葉になんの疑問も感じずぼくに書いてよこすということは、息子さんには10倍増しでいってるでしょ。
トイレから出られないのは、息子さんのSOSのサインですよ。
同じような経験をしている人はたくさんいるとおもいます、SOSのサインを見逃すどころか、本来自分を守ってくれるべき存在からウソや詐病とおもわれれば、かなりのショックでしょう。あなたもメンタルクリニックに通院していて、自分の体調不良を信じてもらえなかったらどう思いますか?
明らかに学校で嫌なおもいをしています。イジメられている可能性もあるし、勉強についていけなくてバカにされていたり、どちらにせよたぶん人間関係で嫌なおもいをしていて、息子さんは学校に居場所がありません。
でもね、あなたには絶対に相談をしません。バレないように必死で隠しています。なぜなら息子さんはあなたが自分を信じてくれないと思っているからです。簡単にいうと、あなたに絶望しているからです。
そのうえ、いままで褒めてもいなかったわけですよね、自己肯定感はズタボロでしょう。息子はわたしを信じてくれる。とおもっているならウルトラ勘違いです。あなたが息子さんを信じていないのだから、息子さんもあなたを信じません。
学校に居場所がなくて、家庭にも居場所がなくなったら子どもがどうなるかわかりますか? 自己肯定感が低く、将来に対する希望すら見いだせなければ、自殺をするか、ただひたらすら自我を殺して生きるか、すべてを閉ざして引きこもりになるか、自分を理解して肯定してくれる不良グループに入るか、家出をして悪い大人につかまってしまうか。
どれも好ましいとはいえないですよね、だから毎年8月31日になると「逃げてもいいんだよ」ってみんな呼びかけているんです。でもあなたは逃げることを許さないでしょ。どう考えても子どもを追い込んでますよね。スクールカウンセラーさんが「拷問を与え続けていた」と評価したことがぼくにはよくわかります。
娘さんも学校の最寄駅で吐くほど精神状態になり「あんなに頑張って入った高校」を辞めてしまったわけですよね。はたして娘さんが自主的にがんばっていたのかぼくには疑問です、あなたが過剰にがんばらせていたんじゃないですか。娘さんのやめた学校、本当に娘さんが選んだ学校ですか? あなたが選んだんじゃない?
だいたい、あなたの相談にはお子さんの体調を心配する言葉が一つもないじゃないですか、自分の心配ばかり。あなたはね、自分のことしか見てないのよ。自分がスクールカウンセラーさんに否定されたことがショックで、自分の不安を解消させるために、自分を肯定するために、娘さんのリベンジをすることで、今度は息子さんを追い込んでるんですよ。
社会の理不尽を乗りこえてほしいそうですけど、それはただの願望であって教育ではありません。教育というのは方法を教えることです。これは学校の先生が教えることではないんですよ、学校の先生に期待するのが間違ってる。
理不尽を乗り越える具体的な方法を教えずに、逃げるな立ち向かえ乗り越えろ、というのはただの根性論ですよ。あなたのメンタルだって根性論じゃ治せないでしょ。自分ができないことをお子さんに求めるのは理不尽ですって、理不尽を追加でトッピングしてどうするの。
もしも、もしもぼくがあなたの旦那さんだったら、まずは息子さんの話を聞きます、そして身体的、精神的に必要な医療とつなげます。そして診察室には息子さんだけをいかせます。あなたもぼくも診察室には入りません、外で待ってます。親の目を気にして息子さんが医療者に本音がいえなくなるからです。
そして学校に行きたくないのであれば、学校にはいかなくていいと伝えます。学校のかわりにやりたいことを自由にやらせます。釣りでも、ゲームでも、漫画でも、スポーツでも自転車の旅でもなんでもいいです。
そして家庭と学校以外のコミュニティにつなげる努力をします、なんでもいいです。場合によっては不良グループでもいいです。孤独と孤立を避けるためです。勉強は本人が勉強したい、興味のあることだけを勉強させます。
これを実現するために、いくらのお金と時間を費やせるかを計算します。学校の卒業と同じようにリミットを設けて、息子さんと向き合います。なにか教えられることがあれば教えるし、ぼくもわからないことだったら一緒に考えます。
そしてリミットがきたら親と卒業させます、見捨てるということではなく、学校を卒業したあとに先生が干渉してこないように、ぼくも干渉をしませんし、あなたにもさせません。
引きこもりになってしまった以上、子どもの自立をまずは目指します。もちろんこれは理想論かもしれません、そんなことできないよ、といってくる人は周囲にたくさん出てくるでしょうが、ぼくの経験上それはできなかった人の言葉です。耳をかす必要はないし、まずは理想とするゴールを設定しないと駒をすすめられません。もちろん娘さんにも同じことをします。
でもたぶん、あなたの旦那さんはやらないでしょう。あなたから旦那さんの話が一切ないのは、旦那さんが子育てに協力的ではなくて、あなたに任せっきりだからでしょ。もしくはすでに離婚か死別をされているか。でも、もしも離婚や死別だったらきっとあなたはそれを書いてますよね。
そもそも旦那さんが育児に協力的なら「私の育て方が悪かったのだろう」なんて考えにはなりません。なるとすれば「私たち」です。旦那さんにも問題がおおいにあるんだけど、結果として子育てに無関心な父親、子育てに過干渉な母親という、子どもにとってつらい状況になってます。
あなたはお子さんと距離をとった方がいいですよ、あなたの人生を輝かせるために子どもがいるのではなくて、子どもには子どもの人生があるんですよ。お子さんに学校と家庭以外のコミュニティが必要なように、あなたにも家庭以外のコミュニティが必要です。
もう追い詰めるのはやめましょう、そりゃ追い詰めてるつもりはないのだろうけど、追い詰めるって具体的に何かっていうと、子どもの価値観を否定をして、親の価値観を押し付けることです。価値観を肯定して背中を押す方がいいでしょう。あなたの話を子どもに聞かせるのではなくて、子どもの話をあなたが聞くんですよ。
そして、まずあなたの体調を整えましょう。ぼくの病状の改善を心から願ってる場合じゃないのよ。そんなこと1ミクロンも気にしなくていいから、自分の体調を改善して、親子関係を改善しましょう。改善はあなたから改善するのよ。
間違いに気づいて、間違いを理解して、それを繰り返さなきゃいいんですよ、誰だって間違うんだから。で、やっぱり最後まで読んじゃったよね。
今週の幡野さん
プロレスラーの覆面ショップに行きました、めっちゃたのしい。
知らないことを知るってたのしいし、知らない世界ってたくさんあるんですよね。
見えている世界で絶望する必要はないんです。