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(喜美子)ここで女中やらせてもらいます。川原喜美子と申します。
荒木荘の住人たちは くせ者ぞろい。
(圭介)可愛らしいなあ。
うわ~…。(ふすまにぶつかる音)
(大久保)あんたには無理や。 信楽帰り。
喜美子が大阪で働き始めて1か月。
楽しみにしていた初めてのお給料は僅かしかもらえませんでした。
まだ見習いの立場だからです。
すみません!
回想 (大久保)破れたとこ直し。裁縫できへんの?できます。
痛っ! もう~!
つい 大久保さんに あたりたくなる夜も増えます。
そんな喜美子に思わぬ話が舞い込みました。
(平田)あの子 うちで雇おう!
雄太郎さん!?(ちや子)大変や! 引き抜きや!
引き抜き? あ… えっ!? 引き抜き…。
お給料 今の5倍は出す言うてたで。
うちが!? お給金5倍? ええ…!
♪~(雄太郎の歌声)雄太郎さん!
雄太郎さん!
(雄太郎)あっ。(ちや子)「あっ」やないわ!
(雄太郎)おったん?(ちや子)おったわ! 今頃 気ぃ付いたん?
何 歌てんのん?(マスター)歌える喫茶やもんなあ。
そら そやけど… びっくりした~。
そっちこそ 何?下着ショーの帰りや。
ほんで この子は今日 休みや。ほう。
決めました。 引き抜かれてもええです!
うち ちや子さんとこの新聞社で働かせてもらいます!
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も 涙に負けるもんか」
♪~
♪「やさしい風に吹かれて」
♪「炎は再び舞い上がる」
落ち着いて。 いっぺん座ろか? なっ?
こういうことは よう考えて決めんと。考えました 今。
今 ここで結論出すことちゃうで焦ったらあかん。
どないしたん?ああ うちの社 人が辞めたんや。
おう 聞いた。先輩記者が引き抜かれてほしたら 雑用やってた女の子も 後追うてこないだ辞めてもうてん。
うわっ その先輩と その女の子あれやな?せや!
けど その話は今…。どうでもええ。 うん 置いとく。
(ちや子)代わりの子 探さんならん言うてたやさきにたまたま喜美ちゃんや。 うっとこ来て…汚れた湯飲みに気ぃ付いて。 ほかにもいろいろ ささ~っと ちゃちゃ~っと。
すいません 失礼します。
(ちや子)それ見て 雇おか言いだしてん。
ええ!あんなんで…?
喜美ちゃんからしたらいつもやってるようなことやもんな。
ほんなこと あんねんな。まあ 腕が買われたっちゅうやつや!
腕が!? 買われた!?おうおう ちゃうちゃう…。
あんたが ふだん一生懸命やってたことが認められたいうことや。
えっ そんなに? そんなにうれしい?
フフッ そうか 荒木荘に来て ひとつき?ようやってたもんな。
ヘッヘッヘッヘッ。 何か ええ話?
ええ話や。 なあ?
歌たってもええで?歌わんでええ。
(笑い声)
ほな ごゆっくり。
まあ いうても ゆっくりしてられへんねん行かなあかん。
また名画座?雄太郎さんこそ 仕事どないしてんの?
僕のことは聞かんといて。 ほな マスターコーヒー代 ここ置いとくよ。
(マスター)はい ありがとう。はい。
無料券…ちょっと ぎょうさん持ってるで。
よしよし…。えらいぎょうさん… 見て!
よし ほな 喜美ちゃん マスター また。ハハッ ありがとうございました。
何や あれ…。めいがざって 何ですか?
映画館。 雄太郎さん 映画好っきゃから映画ばっかり。
映画 見たことある?
喫茶店… こういうとこ来たんも初めて?はい。
映画見たり 喫茶店行ったりもっと生活楽しめたらええなあ。
ほな うちも これから社に戻らなあかん。
喜美ちゃんには その気があるいうことで条件提示してくるで。
はい。住むとこは どうする?
住むとこ?荒木荘辞めたら 荒木荘には住まれへん。
ほら そういうこと一つ一つ考えていかんと。
お父ちゃん! 信楽の父に聞いてみな!
それはええねん。まずは喜美ちゃんが どうしたいかや。
ええんですかね?自分の人生やで? 自分で考え。
お父ちゃんには自分の考え決めてからで ええんちゃう?
親元離れて 1人でやっていくってそういうことやで。
はい。ほな 住むとこは?
う~ん… 用意してもらえたら。
それか お家賃負担してもらおう。そんなんできます?
向こうから言うてきた話や 強気でいこ。はい!
給料は?い… い… 今… 今… い…。
おうおう 落ち着いて。今の5倍!
最低でも 5,000円な。はい!
休みは 毎週日曜?毎週!?
朝は 9時から?4時やのうてええのん!?
え~!
(鼻歌)
お帰り。ただいま戻りました。
下着ショー どうやった?
回想 (さだ)ブラジャーを身につけることで洋服を着た時に 美しくバストラインを出すことができるんです。
そりゃあもう すばらしい下着の数々…ほんで… その~ はい 楽しかったです。
ふ~ん そうか。
ストッキングなちょっと縫い目の粗いのよけて あんたの部屋置いといた。
やり直しや。やり直し…。
急いでな。
はい! 分かりました!大久保さん ご苦労さまでございますぅ。
さようなら~。何や 気色の悪いなあ。
さ~よ~う~な~ら!
ほんまや… 確かに粗かったな…。
(ノック)はい。
喜美ちゃん? ちょっとええかな?
はい。
これ 喜美ちゃんのやから。圭介さんが?
僕には無理や。 大久保さんや。
大久保さんが喜美ちゃんに作っていきはった。
おなかすいたら食べとき言うといてくれ頼まれてん。 もろとき。
♪~
うん?
ハハッ。
呼ばれ。
荒木荘を辞めようかと考えていることを圭介さんにも打ち明けました。
♪~
僕は 反対や。何で?
新聞社いうたら抜きつ抜かれつの しれつな世界やろ?
新聞記者なるんちゃうで?そやけど ちや子さん見てたら思うで?
年頃やのに 化粧もようせんと朝昼晩て 髪振り乱して。
ハハハハッ うちは好きでやってんの。
ちや子さんは ほな それでええけど喜美ちゃんは いきなり そんな男も女も関係ないような職場てどうなん?
条件ええもんな?こっちの条件おおかた のんでくれたで。
ほんまですか?住むとこは追って相談やけどな。
お給金は?それは確実。
はあ…。(圭介)お金かあ…。
結局んとこ それか…。
あんなぁ 圭ちゃんみたいに苦労したことない人には分からへんやろけど喜美ちゃん 仕送りせなあかんねんで?
大事です。お金は… うち 大事やし 欲しいし…。
うん。大好きです。
そっかあ…。
(雄太郎)せやけど…。あっ それ 喜美ちゃんのやで?
大久保さんが喜美ちゃんのために…。ええです ええです。 どうぞ。
アッハッ。何?うん?
「うん?」やない 今 何か言いかけたやろ?
ああ そう そう そう。 う~ん まあまあ条件ええにこしたことはないんやで?
僕かて 条件ええ言われて市役所入って働いとったんやけど…。
まあ 僕のことは置いとこ。置いとくんかい!
まあ どんなに ええ条件言われてもやな職場に合う合わんちゅうのがあんねんなうん。 慎重に考えて ここはひとつ…。
ああ… お天気もちそうやな?そうですね。
(雄太郎)痛い 痛い 痛い 痛い 痛い…。えっ?痛い 痛い 痛い 痛い 痛い…。
どないしたん?おなかが痛いねん…。
お医者はん呼ぼうか?あかん… 病院や これ。
病院…。病院 半日かかるで?
病院や!あちゃちゃちゃちゃ…。あ~ 痛い~!
うちが行きます! うちが付き添います。
難儀やな 大丈夫か あんた。行きましょ…。 大丈夫ですか?
ええかいな…?ほな 行ってきます!
しっかりして下さい。痛い!
歩けますか?痛いわ!
ゆっくり… しっかりして下さい!雄太郎さん しっかりして下さ~い!
ほな 3時ごろに この辺りで待ってるわ。はい ありがとうございます。
雄太郎さんの発案で 喜美子は数時間ほど試しに働かせてもらうことになりました。
すみません 遅うなって…。ええよ ええよ。
こないだ日曜やったけど今日は人が多いからな。
はい!
すいません今日一日よろしくお願いします。
(平田)しゃあないやろ新聞は台所で売れっちゅうてる時代や。
よろしくお願いします。よろしく。
ほな 適当に片して。はい。
(石ノ原)帝銀事件いうのはな…。(タク坊)あの ちや子さん これ婦人欄で取り上げてもらえませんか?
何で婦人面で新劇女優の離婚 取り上げなあかんのん。
聞けや おい。 帝銀事件いうのは…。あっ ちや子さん! ちや子さん…見出し確認お願いします。は~い。
町ネタ2本かあ…。
ちや子さんはいろいろな分野の取材をします。
小さな新聞社なのでできることは何でもやるのです。
(中野)新産業新聞 きたでえ!抜かれたでえ!
また抜かれおって!
「与党議員3名辞職 収賄の疑い」!?どういうこっちゃ!
(石ノ原)これ 一旦 消えた話やで!?消えてないやん! 裏 取ってきます!
(石ノ原)待てや おら!どこで 誰にあたるつもりや!
そんなもん手当たり次第じゃ~!どけや おら~!
待て言うてんねん!どつくぞ~! あ~!
待てや おら~!
ちや子さんの働きぶりにただただ驚くばかりの喜美子です。