あのトヨタが自動運転で頼った「黒子の正体」

ベンチャーの技術が東京オリパラ車両に採用

東京2020オリンピック・パラリンピックで使用されるトヨタの自動運転バスの「e-Palette(イーパレット)」(記者撮影)

その自動運転バスは車椅子の利用者が待っているバス停に静かにぴたりと横付けして停止した。驚くべきことに車体とバス停の距離はわずか10cmほど。観音開きのドアが開くと、自動でスロープが出てきて、車椅子の利用者が乗り込んだ。

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開発したのは2020年の東京オリンピック・パラリンピックのスポンサーであるトヨタ自動車。この車両は東京オリパラの選手村で選手や大会関係者の送迎用に使われる。トヨタは大会で電気自動車(EV)を中心に約3700台の車両を提供する。その中でも注目を集めることになるのが、この自動運転バスの「e-Palette(イーパレット)」だ。

車体のサイズは全長5255mm、全幅2065mm、全高2760mmで、最大20名が乗車でき、車いすの場合は4台に加え、立ち乗りで7人が乗ることができる。満充電時の航続距離は150km、最高速度は時速19kmだ。大会では10数台が使われる。開発責任者を務めるトヨタの牟田隆宏主査は「選手や大会関係者に新たなモビリティ社会の一端を体験してもらいたい」と話す。この車両は10月24日に開幕する東京モーターショーでも公開される。

心臓部はトヨタの内製ではない

イーパレットは2018年1月のアメリカ・ラスベガスのCES(家電見本市)でコンセプトカーが発表された。トヨタの豊田章男社長が宣言した「自動車会社からモビリティカンパニーへの変革」をリードする重要な車両だ。

ネット通販と連携した自動配送や移動店舗、オンデマンドバスや移動オフィスとしての利用を想定し、2023年の市場投入を目指す。人を乗せる実用化車両としては、東京オリパラ向けの車両が初めてになる。そんなイーパレットだが、実はその心臓部である自動運転システムはトヨタ内製ではなく、ベンチャー企業が担ったというから驚きだ。

その企業の名前はティアフォー。一般的にはあまり知られていない企業だが、業界では一目置かれた存在だ。名古屋大学発の自動運転技術を開発するベンチャーとして2015年12月に設立。同社の自動運転用オペレーティングシステム(OS)「オートウェア」は国内外で200社以上が使用し、自動運転用OSの使用社数では世界一を誇る。他社のOSとは異なり、オープンソースで無償公開しているのが大きな特徴だ。

ティアフォーの現在の収入源は自動運転開発のノウハウを持たない企業へのコンサルティングだが、今回、トヨタの東京オリパラ向け車両にティアフォー製OSが採用されたことで、同社への注目度が一気に高まりそうだ。ティアフォーの加藤真平会長は「東京オリパラ向けのイーパレットに当社の自動運転技術が採用されてよかった」と喜びをかみしめた。

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  • 大吉254751bcddb2
    実際に今後の超高齢化の日本で高齢者の痛ましい事故を減らすためには、
    早急な実用化に向けて動いて欲しいと思っています
    まだまだ問題は多いと思いますが国も他メーカーも協力して事故の被害が少しでも減るような物ならば何でも導入して欲しいと思っています
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    2019/10/21 08:29
  • 溝澗正載60b42a2249e4
    メルセデスが自動車を作り始めたころは馬車の時代。
    舗装された道はなく、ガソリンスタンドもなかった。
    将来自動車の時代が予想されたが、それがいつ実現するのかはわからなかった。

    自動運転も時間を掛けて、技術革新・社会インフラ整備・法令改正・社会的認知度の向上などが進んで実現するのでは。

    誰もが普通に使うようになるまで最低でも10年はかかる。
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    2019/10/21 10:54
  • NK06bdeb6ec040
    すべての自動車が一斉に自動運転に置き換わればよいが、それは不可能。混在期間をどうするかという議論が一向に出てこない。「自動運転かどうかを表示して一般車が譲るようにルールを作ればよい」などというバカ学者が登場するくらいだから、社会全体として本気にしていないということ。制限速度を守って運転しているとあおり運転をされるような車社会でどうして自動運転なんか普及するの?
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    2019/10/21 10:01
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