診療実績が乏しく再編・統合の議論が必要だと厚生労働省が公表した公立・公的病院のリストが地方の反発を招いている。説明不足が一因だとしても、少子高齢化への危機感の共有こそ重要だ。
自治体や医療機関にすれば病院の統廃合を名指しで求められたと受け止める。厚労省が公表の狙いを丁寧に説明すべきは当然だ。
一方で、自治体や医療機関は少子高齢化への危機感をもっと共有したい。それなしに再編の議論は前に進まない。
厚労省はがん、心疾患、脳卒中など九項目について「治療実績が少ない」、「他の医療機関と競合している」との条件に当てはまる医療機関名を公表した。全国約千六百の公立・公的病院のうち四百二十四病院が該当した。
地域で医療を取り巻く事情は違う。一律の基準での公表に自治体や医療機関から反発がでたことも理解できる。
ただ、リスト公表は地域で当事者の協議促進が狙いだという。対立を深めるべきではない。
医療界は二つの課題に直面している。ひとつは少子化による人口減だ。医療機関が抱えるベッド数は過剰になると試算されている。厚労省は今より約五万床減らし百十九万床にする方針だ。人口減を考えれば医療機関の縮小は避けて通れない。
もうひとつは高齢化だ。団塊世代が七十五歳を超える二〇二五年に向け、重症者に治療を行う急性期医療を減らし、高齢者のニーズが高いリハビリ医療などを増やさなければならない。
縮小と転換を進めないと医療機関の存続自体が危うくなる。その課題解決へ都道府県が地域医療構想をまとめている。地域の医療機関と協議しながら地域ごとにまとめる医療の将来像である。
厚労省は医療機関の再編に強制力を持たないため、構想策定を通して地域で医療の将来像を決めるよう促してきた。だが、多くの自治体は住民の反対を恐れ再編に二の足を踏んでいる。
赤字経営の公立病院は六割になる。経営面からも見直しは急務だ。再編で病院の集約ができれば勤務医の過重労働改善にもつながる。問題の放置は許されない。
地域に必要な医療は何か、その実現に民間病院も含めどう役割分担をし再編するのか、地方にはそれを真剣に議論する責任がある。
厚労省は医療機関の多くを占める民間病院のデータも公表し議論の活性化をさらに図るべきだ。
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