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 台風19号の被災地は、東北や長野を中心に朝晩冷え込む季節を迎えている。避難生活を送る人は11都県で4千人を超え、長期化は避けられない。

 体育館などでの雑居が心身に与える負担は大きい。一日でも早く解消できるよう、公営住宅や公務員宿舎の空き室などを利用して、住まいの確保に全力をあげる必要がある。

 仮設住宅の提供も急がれる。

 東日本大震災以降、従来のプレハブ住宅に代わって、民間の賃貸住宅を自治体が借り上げる「みなし仮設」が主流になっている。用地を確保して一から建設するプレハブよりも、早く入居できるのが最大の利点だ。費用も、1戸600万~700万円かかるプレハブに対し、2年間で200万円程度に抑えられる。昨年の西日本豪雨の被災地でも、仮設の8割以上が「みなし」だった。

 自治体は、避難者のニーズの把握を急ぐとともに、不動産業界などと連携し、十分な物件を確保してもらいたい。

 入居の条件や手続きなどの情報を、分かりやすく示すことが大切なのは言うまでもない。避難者の間に混乱や不信を生まないために、相談窓口の充実も欠かせない。

 仮設住宅に住むには罹災(りさい)証明書が必要だ。過去の災害では、職員の人手不足から発行に時間がかかり、入居が遅れることもしばしばあった。被災自治体は復旧作業や避難所の運営など、やらなければならない仕事が山積していて余力がない。国や県、被害のなかった自治体は応援のスタッフを派遣し、しっかりサポートしてほしい。

 証明書の発行には原則として自治体職員による現地調査が必要だが、現在の運用指針では、航空写真衛星写真、本人が提出した画像などに基づき、「全壊」や「一部損壊」を判定できることになっている。地域の実情に応じた弾力的な運用を考えるべきだ。

 「みなし仮設」の提供にあたって忘れていけないのは、被災者を孤立させない取り組みだ。

 移り住む先がアパートやマンションに分散するため、顔なじみと交流する機会が減り、こもりがちになる人が少なくない。プレハブ住宅が固まって建っていれば、様々なボランティアの訪問が期待できるが、そうした目も届きにくくなる。

 同郷同士で集まれる場をつくったり、頻繁に戸別訪問をしたりして、つながりを維持する。これまでの「みなし仮設」の経験からくみ取れる教訓だ。

 落ち着いた暮らしを取り戻すには時間がかかる。行政、NPO、企業……。多くの力を結集して被災者を支えていきたい。

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