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ループものライトノベル 続編
ご無沙汰しております。仕事の方が忙しく、なかなか更新の暇がありませんでした。

以前「ループものライトノベル4題」と題した記事で、ループもののライトノベルを4作品ほど紹介しました。実はそのうち、3作品までも続編が出ています。今回はそれらの続編をご紹介していきたいと思います。



空ろの箱と零(ゼロ)のマリア (電撃文庫) 空ろの箱と零のマリア〈2〉 (電撃文庫) 空ろの箱と零のマリア〈3〉 (電撃文庫) 空ろの箱と零のマリア〈4〉 (電撃文庫)
御影瑛路『空ろの箱と零のマリア』(電撃文庫)
 この作品の特色は「箱」と呼ばれる超能力の存在。正体不明の超越者によって、能力を与えられた人間が毎回事件を引き起こし、主人公たちがそれに巻き込まれるという、超能力バトルものの変種といっていい作品です。
 1巻のストーリーは、同じ時間を繰り返すタイムループに巻き込まれた主人公が、ループを引き起こしている能力者を探し、ループから脱出する、というもの。ドンデン返しが繰り返される展開に加え、恋愛小説的な側面もあり、なかなかの秀作でした。
 ループはあくまで特定の超能力者によって引き起こされたという設定だったので、2巻目以降は、基本的にループが主題ではありません。ですが、ループものでなくても、このシリーズ、かなり面白いです。2巻は、相手の体を乗っ取る能力者が相手の話で、小粒ですが、なかなかよくできたサスペンス。3巻、4巻は続きものなのですが、これが1巻にも劣らぬ素晴らしい出来!
 日常に退屈を感じている能力者によって、主人公たちは異空間に囚われてしまいます。そこは殺人ゲームの舞台でした。周りの人間を殺し、自分に与えられた条件を満たさない限り、その空間から脱出はできないのです。誰も殺しを行わなかった場合、全ての人間が死んでしまうという、実にえぐい設定になっています。
 疑心暗鬼の中、皆が権謀術数をめぐらす心理戦がメインになっており、サスペンスたっぷり。この巻に限らず、このシリーズ、心理描写が細かいのが特徴です。基本的にはかなりシリアスな展開で、挫折感や罪悪感など、テーマも重いものが多いのですが、読みごたえはあり、おすすめのシリーズです。



クイックセーブ&ロード (ガガガ文庫) クイックセーブ&ロード 2 (ガガガ文庫) クイックセーブ&ロード 3 (ガガガ文庫)
鮎川歩『クイックセーブ&ロード』(小学館 ガガガ文庫)
 「死ぬ」ことによって、過去に「セーブ」した時間・場所から人生をやり直す能力を持つ主人公が、事件を解決するために、自殺を繰り返すという物語です。2巻では、主人公と同じ能力を持つキャラクターが登場し、ある種の「あやつり」テーマの作品にもなっています。
 3巻が最終巻なのですが、この巻では趣が変わっています。『セーブ&ロード』能力が都市伝説となり、それを信じた子供たちの自殺が流行するなか、主人公は記憶を失い、自らの能力が使えなくなっています。自分が記憶を失うこととなった事故を起こした犯人は誰なのか? 主人公は調査を続けますが…。
 死ねばすべてやり直せるという、ある意味何でもありの設定だけに、どう完結させるのかと興味深く読みましたが、なかなか上手い終わらせ方かと思います。何とも不謹慎な設定の話なので、読む人を選びますが、ループものの新機軸として、面白い試みかと思います。



サクラダリセット  CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫) サクラダリセット2  WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL (角川スニーカー文庫)
河野裕『サクラダリセット』(角川スニーカー文庫)
 現在2巻まで出ています。様々な超能力者が住む都市を舞台にした、超能力バトルもの的な作品です。時間を三日分巻き戻すことのできる能力を持つ少女を相棒に持つ、主人公の少年が、能力を駆使して事件を解決するという展開になっています。
 2巻では、都市で唯一の予知能力者と、能力自体を封印できる能力者をめぐってストーリーが進められます。自分自身は大した能力を持っていないにもかかわらず、仲間の能力を活用して戦うという主人公の造形がユニークです。とくに、複数の人間の能力を組み合わせて使うというアイディアがじつに秀逸。主人公の過去をはじめ、都市や秘密機関の謎など、読者をひっぱるテクニックも巧みで、リーダビリティはひじょうに高いです。
 
この記事に対するコメント

なんというか…カワイイですね(笑
個人的には、『サクラダリセット』のお嬢さんでしょうか。
【2010/06/17 21:00】 URL | 迷跡 #8Vfzr.cc [ 編集]


『空ろの箱と零のマリア』これから読んでみます。何となく買うのが恥かしかったのですが・・
電撃文庫を読むのも初めてです。昔、秋元文庫はよく読みました。
でも、楽しい本をこちらで教えていただいて読書の楽しみが増えました。
【2010/06/17 21:01】 URL | マルケス #- [ 編集]

>迷跡さん
ライトノベルはイラストが命!ですからね。
最近は、ライトノベルにも秀作が多くて、追いかけるのが大変です。
【2010/06/17 21:54】 URL | kazuou #- [ 編集]

>マルケスさん
僕も最初は恥ずかしかったのですが、慣れてしまいました(笑)。
最近よくライトノベルを手に取るようになったのですが、ひとむかし前のジュニア小説やヤングアダルト作品と比べても、作品全体のレベルが上がっているように感じます。定義と矛盾しますけど、やたら「難解な」ライトノベルとかあったりしますし。
最近読んだなかでも『空ろの箱と零のマリア』は、オススメのシリーズですので、ぜひ。
【2010/06/17 22:00】 URL | kazuou #- [ 編集]


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kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(盛林堂書房さんでの通販分は完売。2019年11月に開催の「文学フリマ東京」にて少数ですが販売予定です)。



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