・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。
・キャラ崩壊注意です。
以上を踏まえた上でお読み下さい。
「アインズ様、【魔導国情報先進国及び、プロパガンダ構想】ですが、計画の第1段階は順調に推移しております。エ・ランテルにおける〝ラジオ〟の認知率は99.42%、聴取率につきましては平日・休日、時間帯、種族、職業・年齢層、性別・地区に分けた各種の統計をグラフにしてご用意致しました。」
「うむ。ご苦労。」
ナザリックの執務室。アインズはデミウルゴスより渡された資料に目を通す。細かい事はサッパリ解らないが、ひとつだけわかることは……
(なにこれ!?すっげぇ皆聴いてるじゃん!暇なの?いや、暇だよね。この世界にはゲームどころか、本すら読めない人も多いんだから。)
「まぁ想定通りと言ったところか。設置台数の増加も計画通りに。」
「心得ております。……
( いや、図書館や宝物殿から適当な本や資料を持ってきただけなんだけれどなぁ。まぁタブラさんの各国の神話を童話に変えたオリジナル小説とか、たっち・みーさんの『三幕構成から考察する特撮番組と〝ヒーロー像〟の歴史的推移』みたいな趣味で書いた論文まであったけれどさ。 )
「気にするな。何度も言うように、これはこの世界で初の試み。アインズ・ウール・ゴウンの名を冠している以上、例え娯楽であろうと民の興が冷めてはならぬと判断したまでだ。何より、放送内容はアルベド、デミウルゴス、パンドラズ・アクターへ一任しているのだ。お前達の手柄である、わたしも誇らしい。」
「……おお!何と勿体なきお言葉!力なき我々に道標となる光をもたらして下さるだけでなく、こうして労いのお言葉まで。我々一同、アインズ様の御慈悲に甘えることなく、今後一層益々の努力をして参ります。計画の第一段階前半は終了と言って良いでしょう。今までは御方々より賜った叡智を、不敬にも稚拙で無知蒙昧な我々で改悪し放送しておりましたが、〝放送者〟の育成を兼ねてナザリックの面々で放送内容を考察・吟味し、放送内容を少しずつ変化させて参ります。」
「あ、ああ。期待しているぞ。」
(え!?誰がどんな放送するの?いや、口出ししても不味いか。只でさえ〝俺を讃える番組禁止〟って縛りを渋々受け入れて貰ってるんだから。……あとで聴いてみようか。俺が聴くってなれば変に気を遣うだろうから、あえて書類に目を通すだけにしていたけれど、姿を消して視察するかな。)
(よし、完全不可視化に魔力探知・熱探知・音量探知。全部完璧だ。メイド達には私室で思考に耽りたいからひとりにしてくれと言っているし、扉にはロックも掛けた。……デミウルゴスの話では、新番組が今日の23時からだったよな。それにしても、深夜なのに凄い人だかりだ、ゴールデンタイムはどれだけ混んでるんだ?巨人族まで聴きに来ていて、もう公園で収まり切れてないぞ?)
「………♪ アインズ・ウール・ゴウン魔導国ラジオが、23時をお知らせします。本日より、魔導国国民の皆様から多くの要望がございました新番組を開始致します。放送中、具合が悪くなったり、怪我をされた方はお近くの警邏隊デス・ナイトまでお声がけください。また、周りの方や近隣住民の方のご迷惑になる行為はおやめくださいますようお願いいたします。場合によっては退場していただく事が御座います。」
(この声はユリ・アルファか。確かに凜としていて、場内アナウンスには適切だ。うん、ガヤガヤも治まったな。何だか〝皆さんが静かになるまで○○分掛かりました〟っていう教師みたいだ。)
「皆さん、こんばんわ。ナーベ――が――の、相談室の時間。メインパアソナリテエのナーベ。です。」
(何故そのチョイス!?深夜の相談室ラジオは定番だけれど、人選おかしいだろ!?しかもめっちゃカンペ読んでるの丸出しじゃん!)
「皆さんこんばんわ。アシスタントを務めさせて頂く、ユリ・アルファと申します。」
(あ、良かった。希望が……。でも凄いなナーベの時に皆が湧くのは想定通りとして、ユリの時も結構湧いている。ユリは孤児院や学園での仕事もしているんだもんな、ナーベの人気には届かないけれど、ユリも街に馴染んできているか。)
「この番組は、アブ共……国民皆様から寄せられたお悩みを、この漆黒の英雄モモンさ――んの相方であるわたしがビシバシお答えしていく番組です。」
(そこはユリに読ませろ!危なっかしくて聴いてられねぇ!アブ共って言ったぞ!?)
「ではナーベさん、最初のご相談です。〝わたしは魔導国に来てまだ半年ほどの亜人です。やはり人間が多く、やったことのない仕事に悩んでいます。色んな種族とのコミュニケーションも上手くとれずにいる中、どのようにすればいいでしょうか?〟」
(そうだよな、人間が亜人を怖がるように、亜人も人間は怖いのか。)
「ではお答えします、お仕事でも他者との関係でも、ひとつひとつを一生懸命やっていれば、必ず誰かが見てくれています。もし不安が残るのでしたら、上手くやっている同族でも尊敬出来る他種族でも、その方を参考にして一歩ずつ進めば、必ずあなたもアインズ様のお役に立てる日が来るでしょう。錬成は模倣から始まるとも申します。最初から上手く出来る者なんて41人程しかおりません。今日出来る事を一生懸命に、それが明日に繋がるのです。」
「――――ということです。解りましたか?国民の皆様ども。」
(あ、うん。完全にユリのお悩み相談室だ……。)
……………。
「……新番組、ナーベの相談室もお別れのお時間となりました。街でモモン様・ナーベ様へ、ご相談がある方はお気軽にお申し付け下さい。当番組は全てのお悩みを匿名で受け付けております。それでは皆様良い夢を。」
「では。」
(……ほとんどナーベラル話してなかったぞ。まぁネームバリューがあるから良いのか。それにそこそこ盛り上がっているみたいだし、結果オーライだな。)
「………♪ アインズ・ウール・ゴウン魔導国ラジオが、23時30分をお知らせします。」
(え?まだ続くの?)
「
(やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!)
アインズの苦悶とは裏腹に、謎のDJ(自称)がお送りする軽快なトークは結構な盛り上がりを見せるのだが、アインズはしばらく本気で寝室から出てこられなくなった。