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ん?今何でもするって言ったよな?~鬼畜な蛮族王と性奴隷に堕とされた媛巫女~《全年齢版》 作者:桜木桜
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第漆(7)話 更なる進撃

公約通り、300を達成したので投稿致します


塗れ場はノクターンノベルズ版の方に投稿してあります

読まなくともストーリー進行には全く(・・)影響はありません

Hな紋章を刻み込まれるだけです


ただよろしかったらぜひ、どうぞ

18歳未満の方はご遠慮ください、と一応書いておきます


「はぁ……」


 リンネイ城の庭で、ミィーミアはお茶を飲みながら、ため息をついた。

 ミィーミアがため息をついた理由、それは昨晩にミィーミアの体に刻み込まれた隷属紋にある。


 隷属紋とは、人間を隷属させる目的でその体に入れ墨・烙印の形で刻み込まれた方術陣、である。

 ミィーミアはそれをバータルに刻み込まれたのだ。


 元々、それを刻み込まれることはバータルの軍隊を雇う条件の一つであったので、致し方がないが……

 しかし全く不満がないわけではない。


(幸いなのは、普段は目に見えることはないことですね)


 烙印の形でその体に刻み込まれた隷属紋であるが、普段は肌に溶け込んでいるため、肉眼で目視することは不可能だ。

 もっとも、そもそも刻み込まれた場所は背中と臍下の下腹部なので、服に隠れていることを考えると肉眼で見えていようが見えなかろうが、服を脱がなければ人目につくことはないのだが。


「……まあ、当然の報い、ですか」


 ミィーミアは自虐気味に笑った。

 もしミィーミアが心の底から民の安寧を願って動いているのであれば、それに対する仕打ちが「烙印」であったならば、理不尽な出来事だ。


 しかしミィーミアの目的は復讐であり、そしてそのために蛮族を国内に招いた。

 これは外患誘致である。

 ミィーミアの血筋がいくら媛巫女として正しかろうとも、自分の行いが媛巫女に相応しいとはミィーミアは思っていなかった。


 だから当然の天罰……とまでは割り切れないが、しかし理不尽な出来事として憤るほどミィーミアは厚顔無恥ではない。


「ファリン」


 ミィーミアは自分のすぐ側に立っている、フェルテンシア・ファリンに話しかけた。


 すでにファリンはミィーミアの家臣、実質的にはバータルの部下として登用されていた。

 ファリンはバータルに従うことを嫌がったが……しかしファリンがミィーミアに従うということは、即ちバータルに従うということになるので、これは致し方がないことである。

 今はミィーミアの護衛、そして侍女として彼女の側にいる。

 もっともファリン自身もエルトニア王国の貴族ということもあり、別で護衛も侍女も存在するのだが。


「あなたもご一緒に、どうですか? 少し話がしたいのです」


 ミィーミアに唐突にそう言われたファリンは戸惑いの色を見せたが、しかしすぐに頷いた。


「承知しました。お付き合い致します」


 ミィーミアに促され、ファリンは椅子に座った。

 ミィーミアは侍女に命じて、ファリンの分のお茶を用意させる。


「昔は……」


 ミィーミアはそう小さな声で言ってから、しばらくした後に続けた。


「こうして、二人でお茶を飲みましたね」

「そう、ですね……随分と、昔の話になりますが」


 それはまだ、聖宮の情勢が落ち着いていた頃の話。

 情勢が不穏になってからは、ファリンは聖宮を訪れることが難しくなり、そしてミィーミアもファリンに会いに行くこともできなくなった。

 ファリンの婚約が決まり、定期的にリンネイ州へ出向くようになると二人はさらに疎遠になった。


「……」


 ミィーミアは緑茶の入った湯呑をテーブルに置いた。


「……申し訳ありませんでした、ファリン」

「きゅ、急にどうされましたか?」

「あなたに随分と酷いことを要求してしまいました……」


 ファリンを見たその時、ミィーミアは頭に血が上っていた。

 父と母を殺され、自分が命の危機にあった時、それを助けようともせずに黙認していた……にも関わらず親友面をするファリンに、カッとなってしまったのだ。


「あの時は怒りと憎しみでどうかしていました。今思うと、ただの八つ当たりですよね。……許せとは言いませんが、謝罪させてください」


 ミィーミアがそう言うと、ファリンは首を左右に振った。


「……その謝罪はお受けできません」


 ファリンの言葉にミィーミアは一瞬だけ、苦しそうな表情を浮かべた。

 が、しかしそれに対しファリンの表情は穏やかだった。


「あれは……私への罰です。私は媛巫女聖下を、見捨ててしまいました。流される形であったとはいえ、偽媛巫女に一度忠誠を誓ってしまった。親友である、そして正当なる媛巫女であるあなた様を差し置いて。媛巫女聖下のお怒りは正当なもの。どうか、お気になさらず」


「……そう言って頂けると、嬉しいです」


 ミィーミアは柔らかい笑みを浮かべた。

 場が少し和んだ……その時だった。


「媛巫女聖下、バータル殿下がお呼び……ファリンもいるのか?」


 現れたのはポンクスだ。

 彼はバータルがミィーミアのことを喧伝した際に、真っ先にミィーミアに対して恭順の意を示した者の一人だった。


 ポンクスが寝返ったことは、あっと言う間にバータルたちがリンエイ州を掌握した理由の一つである。


 なぜポンクスがあっさりと寝返ったのか。

 その理由はいくつかある。


 まず第一に、やはり彼も今の媛巫女の血筋には一定の疑問を持っていたからだ。

 ミィーミアは確かに半魔であるが、それでも万世一系の女子であり、正当な媛巫女位の継承者だ。

 どちらかと言えば、ミィーミアに軍配が上がる……ポンクスはそう考えた。


 が、しかし第一の理由は半分は建前である。

 第二の理由、本当の理由は自分の一族を生き残らせるためである。


 恭順の意を示さなければ、ポンクスはバータルに処刑されていただろう。

 そして……万が一にもバータルがこのまま戦争に勝ち続け、ポンクスの父を殺すようなことがあれば、ポンクスの一族はそこで途絶えてしまう。


 だからポンクスは確実に生き延びられるように、あえて自分の父親と敵対する道――つまりバータルに従う――という判断をした。


 これならばバータルとミィーミアが勝とうが、“偽媛巫女”が勝とうが、ポンクスかポンクスの父のどちらかは確実に生き残ることができる。


「……まあ、良い。ファリン、お前も来い」

「……分かりました」


 元々ポンクスとファリンの関係はあまり良くなかった。

 そして今は、完全に破綻している。

 正式な婚約破棄こそはしていないものの、実質的には婚約は破棄されたも同然だ。


 理由は……言うまでもない。




「よく来たな……ふむ、ファリンもいるか。まあ、良いだろう」


 リンネイ城の執務室の椅子に、偉そうにバータルは座っていた。

 一応、建前上はバータルよりもミィーミアの方が偉いのだが……

 そのあたりの事情はポンクスも含め、ある程度は心得ているので問題はなかった。


 もし、気になることがあるとすれば一つ。

 バータルの膝の上に少女が一人、ちょこんと座っていることだ。


 年はミィーミアよりも少し幼い、十二歳から十三歳程度に見える。

 白髪で、瑠璃色の瞳の少女だ。

 頭からは角が二本、しかし奇妙なことに右側は黒く、左側は白かった。


 彼女は以前、バータルから一時的に全軍の指揮を任されていた、ツェレンという少女である。

 彼女が鬼狄のうちでどのような立ち位置なのか、未だにミィーミアを含めた三人は分かっていなかったが……


 しかし、おそらくはバータルに次ぐ立ち位置の存在であることは、他の鬼狄の将軍の彼女への恭しい態度から察することができた。


 そんなバータルとツェレンの目の前には広い机があり、その上には大きな地図が広がっていた。

 リンネイ城に存在した、もっとも詳しい地図である。


「三日後には四万騎が北エルトニア河を渡り、合流し、こちらは合計六〇〇〇〇になる。うち一〇〇〇〇をリンネイ州の守りに残し、五〇〇〇〇の兵を率いて攻勢に出る。守勢に回れば敗北は免れんからな」


 今の神聖エルトニア国は一枚岩ではない。

 本来、軍司令官となるべきエルトニア王国の国王の権力は低下し、その実権はフェルテンシア家ともう一つの名門家によって、真っ二つに分裂している。


 さらに各州知事は私兵を勝手に組織し、軍閥と化している。


 そして四方からは異民族――西戎、東夷、南蛮、そしてバータルたち北の北狄――たちが流入しており、彼らもまた軍閥を組織したり、一方では完全に天下の秩序から離脱した王国を築き上げるに至っている。


 故に今すぐリンネイ州が襲われるということはまずない。

 どの軍閥も他の軍閥につけ入れられることを警戒しているし、そしてまた新たな媛巫女ミィーミアの存在に、どう対処して良いか様子を見ているからだ。


 だからこそ、バータルは攻勢に出る。

 二つ、三つ以上の軍閥が聖宮の命令で連合を組み、攻めてくればリンネイ州を失陥してしまう恐れがあるからだ。


「だが五〇〇〇〇では心許ない。それに占領には歩兵がいる。だから人族の兵を募る。ミィーミア、お前の名前を借りるぞ」


 媛巫女であるミィーミアは現人神である。

 バータルの名前よりは、ミィーミアの名前の方が効果がある。


「構いませんが、しかしバータル様」

「どうしたかな、我らが媛巫女ミィーミア聖下よ」


 冗談めかして言うバータルにミィーミアは少しだけ眉を潜めた。


「兵は集まりますか? あなたのことを恨んでいる可能性が……」

「恨んでいたとしても、飯が食えなければ兵に志願するか、盗賊にでもなるしかあるまい?」


 リンネイ州の流民問題は依然として解決していない。

 否、むしろ北エルトニア河の北側では鬼狄族たちによる土地の接収が進んでいるためむしろ悪化していた。


 バータルはその流民たちを兵士として使おうと考えていたのだ。

 質は悪いが……いないよりはマシ、肉壁にはなる。


「それとポンクス」

「はい、殿下」

「お前には一部、兵を分けてやる。忠誠を示せ」

「本当ですか、殿下、いえ、陛下! は、はい! 謹んでお受けいたします」

「陛下は気が早いな」


 バータルがポンクスに兵を分けようと思ったのはポンクスが有能であると見抜いたから……

 ではない。

 単純に将軍の数が足りなかったからである。

 自分には敗北したが、しかし多少の兵は指揮できるだろうと見越したのだ。


 尚、「『陛下』は気が早い」というバータルの言葉の意味は、まだ自分は大王、近衛大将軍ではないという意味である。

 媛巫女に対する『聖下』の次に高位である、『陛下』の敬称は王の中の王である大王であり近衛大将軍でもあるエルトニア王にのみ認められたものであり、蛮族の王は『殿下』である。


「さて、ファリン。お前は敬愛するミィーミア様の護衛だ。しっかり果たせよ?」

「……媛巫女聖下と呼べ」

「だ、そうだが。ミィーミア、そう呼ばなければならないか?」


 バータルはそう言いながら、わざとらしく、見せつけるようにミィーミアの肩を抱きながら言った。

 ミィーミアは小さく首を横に振った。


「どうぞ、ご自由にお呼びください」

「ほら、お前のミィーミア様もそうおっしゃっているぞ? うん?」

「……ふん」


 ファリンは鼻を鳴らした。

 ミィーミアに仕えるつもりはあるが、しかし蛮族の王に仕える気は毛頭なかった。


(私は認めない……今のエルトニア王家の代わりがあるとすれば、それはフェルテンシア家だけだ。こんな蛮族王なんかじゃない)


 事実上、エルトニア王の実権の半分を掌握しているフェルテンシア家の長女からすれば、バータルの命令を受け入れることは素直にできなかった。

 ファリンが“偽媛巫女”ではなくミィーミアを正当な媛巫女と認め、ミィーミアに仕えることで、事実上エルトニア王国とフェルテンシア家を裏切っているとしても、だ。


「それでバータル殿。攻撃目標はどこですか? まさか、決めていないということはありませんよね?」


 やや不機嫌そうな様子でファリンは尋ねた。


「ケーロン州だ」


 ケーロン州。

 そこはリンエイ州から北エルトニア河を西に遡った場所にある地域。


 水運を利用して運ばれた穀物の集積地であり、そしてまた鉄の生産が盛んな場所。


 そして……比較的中央に忠実な州知事の支配地域であり、つまり親“偽媛巫女”――裏返せば反ミィーミア――であることが明確な勢力である。


「分かりやすい敵から叩くぞ」


面白いと思って頂けたら、ブクマ、評価等を頂けると幸いです

お願い、何でもするからぁ……


今のところは今日の更新はこれで終わりですが、今日中に500話を達成したら+1話、700話で+1話を記念に投稿する予定です

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