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ん?今何でもするって言ったよな?~鬼畜な蛮族王と性奴隷に堕とされた媛巫女~《全年齢版》 作者:桜木桜
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第捌(8)話 新兵器

500ptに達したので、公約通りに投稿致しました


 ミィーミアの名の下募兵を行ったところ、あっと言う間に兵は集まった。

 リンネイ州の私兵二〇〇〇〇と、流民を中心とした募兵三〇〇〇〇。


 この歩兵五〇〇〇〇に、鬼狄の騎兵五〇〇〇〇を加えた合計一〇〇〇〇〇の軍勢を率いてバータルはケーロン州へと向かうことにした。


「ツェレン、一〇〇〇〇騎……角馬騎兵一〇〇〇騎、重騎兵二〇〇〇騎、軽騎兵七〇〇〇騎を任せる。まずは先行して、敵を調べてこい」


「しらべる、だけ?」


「可能であれば、倒せ」


「わかった」


 ツェレンは小さく頷いた。

 本当にこんな少女に一〇〇〇〇騎も任せるのか、ファリンとポンクスは不安を覚えたがバータルの決定には逆らえない。


「リンネイ州の私兵二〇〇〇〇と騎兵のうち三〇〇〇〇は俺が指揮する」


 リンネイ州の私兵はある程度の訓練は受けているため、募兵で新たに集まった兵よりは精強である。

 自分が率いる本隊にはできるだけ精鋭を集めたかった。


「残り四〇〇〇〇――騎兵一〇〇〇〇と歩兵三〇〇〇〇――には後から残党狩りと占領を行って貰おう。ポンクス、そのうちの五〇〇〇をお前にやる」

「後から? よろしいのですか?」

「ついて来れんだろう。お荷物に合わせて、ちんたら歩くつもりはないぞ」


 ここで言うお荷物というのは募兵で集まった新兵のことである。 

 流民が武器を持っただけのこの兵は、まともに訓練すら受けていない。


 バータルはこの四〇〇〇〇の兵には、鬼狄の将軍の中でも若輩で経験が浅い者や、まだ信用のおけない投降したばかりのリンネイ州の将軍を配置していた。


 斯くして合計一〇〇〇〇〇が進撃を開始した。






「知っての通り、媛巫女を偽称する半魔と魔族の王が、このケーロン州へと向かっておる」


 ケーロン州の州知事は部下たちにそう言った。

 彼は若干肥満気味の、中年の男だった。


 現在の州知事の多くは土着の有力者と結びつき、中央から離れて独自に動く傾向が強い――つまり軍閥化している――が、彼は比較的、中央に忠実であった。


 正確に言えば中央に忠実なものが、派遣されてきたと言えるだろう。


 ケーロン州は北エルトニア平原に位置するため元々、肥沃な土地である。

 さらに周囲の運河の連結点でもあり、多くの穀物がこの地に集まる。

 税として徴収された穀物も、農民たちが売り払った穀物も、だ。


 そしてまたケーロン州の周辺では石炭が算出し、さらに西の鉄鉱山から水運を利用して鉄鉱石が運ばれてくる。

 そのため鉄の一大生産地でもあり、転じて武器の生産拠点の一つだ。


 故に軍事戦略上、非常に重要な地点なのである。

 この地を北狄から守るために、中央からはより忠誠心が高く、能力が高い州知事が派遣される傾向が強い。


 その伝統があり、ケーロン州の州知事は比較的中央の命令を聞く。


 もっとも……それでも軍閥であることには変わりはない。

 本来州知事には軍を率いる権限はないのだから。


「これより兵を募り、これを迎え撃つ。いかほど、必要か。諸君らの考えを聞かせてくれ」


 州知事は自らの幕下ばくかの軍師たちに尋ねた。

 彼らの多くは地元の名士たちである。


 多くの州知事たちは地元の名士、知識人、有力者を招き、軍師などに厚遇したりするが……

 それはその知略を期待して、というよりは地元の支持を取り付けるためというのが大きい。


 そして彼らの意見を聞くのは、実際に優れた献策を期待しているというよりは、地元の土着勢力を尊重しているという姿勢を見せるためである。


「我がケーロン州が常備している兵は、治安維持のために州の各地に分散されているものを搔き集めれば十五万に達します。これは蛮族の数を大きく上回る。故に兵を集中させれば、我らは必ずや勝てるかと」


 兵力の分散は危険である。

 というのは兵法の常識である。故にまず分散されている兵を集めるべきだ、というのは全くもってその通りのことだ。


「兵を一点に集めるべきであるという意見には賛成でございます。ですが十五万では心許ないかと。かの鬼狄はまるで獣の如く、闘争に関してだけは優れた能力を持っております。リンネイ州の州知事代理は倍の兵数でもって挑むも、敗北したと聞いております。故に念を入れて、さらに十五万の兵を募るべきかと」


 兵数は多ければ多いに越したことはない。

 足りない分の兵を雇う、というのはエルトニア王国ではよくあることだ。

 雇われて戦うことを生業とする者――つまり傭兵――も乱世の今では数多くいるので、困らないだろう。


「三十万の兵でもって、会戦を挑めば必ずや勝てるでしょう。こちらは敵の三倍です」


 大方、彼らの意見は一致しているようだった。

 州知事はホッと息をついた。

 ……意見が割れると、それをまとめるのは苦労するのだ。


「では諸君らの意見の通り、三十万を……」

「いやー、僕はちょっとやめておいた方が良いと思いますけどねぇ」


 少し間の抜けた、イマイチ空気の読めない声が響いた。

 声の主は軍師たちの中で最も若い、二十代前半程度の若者だった。


 彼の名前はルクロウス・ロウエン。

 このケーロン州でそれなりに名の通った地主の一族、ルクロウス家の長男である。


 州知事は内心で舌打ちをするも、それを表情には出さず尋ねた。


「ふむ、意見を聞かせてはもらえないか?」


「下手に兵は動かすべきではありませんね。各個撃破されるかもしれません。兵は集めず、現地での判断と指揮に任せるのが、次善かと」


 ロウエンがそういうと、一斉に他の軍師たちが反論した。


「何を言うか。兵を分散させておけば、それこそ各個撃破を招きますぞ?」

「敵は十万。少なくとも同数以上を集めなければ、抵抗できますまい」

「少なくとも指揮系統を閣下の下で一本化させなければ、混乱を招く。現地での判断に任せるなど、もってのほか」


 するとロウエンは肩を竦めた。


「それは敵の進軍速度がこちらと同じか、それ以下の場合でしょう? 想定外はあり得ます。集まる前に撃破されてしまえば、元も子もありませんよ? 少なくとも城壁に篭っていればそう簡単には撃破されないでしょうし、安全だと思うんですけどね。まあ、兵を分散させずに集中させるのが理想であり最善ということは分かりますが」


 ロウエンの意見は最善ではなく、次善を目指したものだ。

 確かに彼の言う通り、各城郭に分散されている兵士がそれぞれ籠城戦を展開すれば、一度にすべての兵を失い、ケーロン州をあっという間に奪われる……ということはなくなる。


「なるほど、ルクロウス殿の意見にも一理ある」


 州知事は一応、彼の意見にも耳を傾け、賛同の意を示した。

 が、しかしすぐにやんわりと反論した。


「だが籠城している間に、田畑を蛮族たちに荒らされてしまうのではないかね?」

「それは……まあ致し方がないことでしょう。少なくとも、都市の食糧庫を奪われるよりはマシかと。十万の兵を農村だけの略奪で養うのは不可能。すぐに撤退するでしょう」


 それは民草を見捨てるという、非常な案であった。

 しかし決して批難されるほどのことではない。

 小を切り捨て大を取る、それは決して間違いではないのだから。


 だが……


「何を言うか、民を見捨てるなど!」

「民があってこその国ではないか」

「最初からそのような消極的な、民草を見捨てるようなことはするべきではない」


 きれいごとを口にする軍師たち。

 ……一見彼らはとてつもない善人か、もしくはお花畑に見えるかもしれないが、それは表面的な見方である。


 彼らは地元の名士なのだ。

 つまり地元の、農民たちからの支持が最も重要であり、彼らがその農民を見捨てるような――つまり農民たちからの支持を失いかねないような――策は受け入れられない。


 早い話、彼らにとって大は地元の民たちであり、小は国やこのケーロン州そのものである。

 無論、そのようなことは口には決して出さないが。


(……ルクロウス殿の意見はもっともだが、それを取れば私の権力基盤が揺らぎかねん。中央からの覚えも悪くなるだろうし)


 ケーロン州の州知事はそう判断し、最終的にロウエンの意見を引けた。

 そのことはすでに予想していたのか、ロウエンは静かに肩を竦めた。






「それで兄さん、どうして戻って来たの? ちゃんと働きなよ」


 ケーロン州の郡の一つ、ルコウ郡の郡都、ルコウ市のとある屋敷。

 その屋敷の主人であるルクロウス・ロウエンに対し、一人の少女――ルクロウス・リンリン――は

尋ねた。

 ロウエンは肩を竦めた。


「だってほら、このままだとこの街は蛮族に占領されてしまうかもしれないだろう? その前に僕の蔵書を避難させておこうと思ってね」


 彼の趣味は古書の収集である。

 彼が現地での籠城戦は唱えた理由は簡単で、自らの古書を守りたいがためであった。


 それが叶わないと見た彼は、まるで自分の意見が受け入れられなかったことに腹を立てたように見せかけ、故郷へと戻り蔵書を避難させようと考えていた。


「しかし三十万でしょう? 敗北するのは十万の方では? さすがに三倍以上の兵力差を覆すのは難しいんじゃない?」


「敵がゆっくりと、十万をぞろぞろと引き連れてきてくれれば、ね。……敵の数が十万以下であったら、こちらが負ける可能性が跳ね上がる」


「……十万以下ならば、なおさらこちらが有利では?」


「そうだと良いよね。まあ……我らの、州知事殿の勝利を祈ろうじゃないか。そうすれば蔵書を動かす手間は省ける。……僕はできるだけ、働きたくないからね」


 何とものんびりと、無責任なことを言う兄にリンリンは眉を潜めた。


「ああ、そうだ。もしもの時のために、君のあの発明品、びっくり武器を用意しておいてくれ。初実戦で、まだ信用のおけない武器だけど、まあないよりはマシだ」


 リンリンはため息をついた。


「びっくり武器ではないって、何度も言ってるでしょう? あれの名前は……」


 ――火筒です――


大抵のなろう軍記では主人公が先に鉄砲を出しますが、この作品では逆張り(というよりは史実準拠)で敵側が先に鉄砲を使用致します

鉄砲チートというやつには作者的にはいろいろと思うところがありまして


面白い、続きが読みたいと思って頂けたら、評価、ブクマ等を頂けると幸いです


今のところは本日の更新はこれで終わりの予定ですが、今日中に700ptを達成したら+1話、1000ptで+1話を記念に投稿する予定です

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