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第十回 ホルス・マスター

                                          ジャンル:魔法 冒険活劇
ホルスマスターさて、このラノベ紹介もやっとこさっとこ第10回を迎えました。その記念すべき?作品はこちら。


この『ホルス・マスター』は第1巻の初版が1998年ですので、今から15年程前の作品になります。出版社はファミ通文庫、作者は嬉野秋彦さんという方です。私が今まで紹介した中ではダントツで多い全16巻となっております。

この作者さん、ご自身であとがきに書かれているように作品によって出来不出来が激しいのですが、この『ホルス・マスター』は素晴らしく出来がいい。ですから他の手抜き作品を基準に考えて、この作品を敬遠することの無いようにお願いします。

ジャンルで言えば冒険活劇でしょうか。戦記モノも少しからむかな。
『ホルス・マスター』の世界にはホルスという魔法の武具が存在します。人はホルスを装備することによって初めて魔法という奇跡を行使することが可能になるのですが、ホルスにも高級品と安物があって、いいホルスほど威力の高い魔法が使えるようになります。そこへ使用者の腕が加わると戦場では一騎当千の働きが可能となり、それゆえに国家は優秀なホルスの使い手を集めることが不可欠となっています。
お話の舞台は、おもに七星剣士団領という七人の剣王(強力なホルスの使い手)が治めている国になります。この国は数年前に剣王達の盟主であるレオニードが暴君クラウスから奪い取ったばかりの地で、完全実力主義の若くて野心的な国家です。そんな国家に、強力なホルス『バルバドゥンク』を強奪した犯人として指名手配されているのが主人公のアルハイム=ハディードなのでした。

――あらすじ

目つき超ワル!性格激悪!だけどべらぼうに腕が立つ。そんな青年アルハイムはこの世で唯一愛を捧げている妹のディミトリアスと共に旅を続けていた。
二人が訪れたのは剣王シャスティヤが治める町アイゼンバートル。元々この町は有力者達が評議会を作って民主的に治めている、いわゆる自由自治都市だったが、数年前に剣王シャスティアが現れて、力ずくで領主の地位に収まったという、いわく付きの町。町の有力者達はシャスティアを除きたいと考えているし、シャスティアは剣士団内での地位を高め、あわよくば盟主になりたいと考えている。そしてもう一人の登場人物、自称『超天才美少女格闘家』のプルプリッサ=サリーは剣王の地位を求めてこの町に足を踏み入れたところだった。そんな状態の町に『剣王レオニ―ドからホルスを奪い取った男』アルハイムが現れたことで、それぞれの思惑は絡み合い、くすぶっていた火種は炎上する。
彼らの行動を冷静に受けとめ自分達の利益を引き出そうとするアルハイム。彼の旅の目的は失語症にかかった妹の声を再び取り戻すことだった…。

ちょっと変則的ですが、うまい具合に王道と絡み合った素晴らしい作品です。全16冊も決して長いとは感じないでしょう。本の冒頭部分で作者さんの表現方法にアレルギーを感じた方も、だまされたと思って読み進めてみてはいかがでしょうか?きっと満足いただけると思います。

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第九回 迷宮街クロニクル

                                    ジャンル:ファンタジー、魔法、現代
今さら再確認というわけではないのですが王道の強さは不変でしょう。むろん、その時代に合わせたアレンジを施さなければ、ただのパクリになって見向きもされなくなってしまうのですが。では、第九回。
迷宮街クロニクル

ここ数年、web小説が書籍化されるパターンが増えてきました。
「このライトノベルがすごい!2012」で堂々の第一位を取った「ソードアート・オンライン」や「ログ・ホライズン」、最近だと「魔法科高校の劣等性」などがありますが、私が初めてこのジャンルを知ったのは、この「迷宮街クロニクル」でした。出版社はGA文庫で初版は2008年、作者は林亮介氏です。
この作品は「和風ウィザードリィ」と銘打たれていますが、私なんかはそれだけで魅力を感じてしまいます。ウィザードリィをご存知無い方には、ロールプレイングゲームの元祖と考えて頂ければなんとなくお分かりになるのではないでしょうか?モンスターがあふれるダンジョンをひたすら奥へ奥へと突き進む攻略ゲームです。
本作でも、主人公とその仲間達は互いに協力しながらモンスターとの戦いの日々に明け暮れ、能力的にも人間的にもレベルアップしていきます。まさに王道中の王道ですね。
ただし従来のファンタジー作品と違い、舞台を現代日本に置いてあるため、より現実に近付いた世界設定になっています。迷宮街を一歩外に出れば、我々のような一般人が普通に暮らしていますし、街の住人も元OLや元バンドマン、高校を卒業したばかりの少年少女など、そういった当たり前の人々が無骨な剣を持って戦っているのです。
注意点としてこの作品は死者が大量に出ます。まあ残酷描写はあっても残虐描写は無いのでおそらく気にするほどのことは無いとは思いますが。

――あらすじ

地震の影響で京都の一角に突然ぽっかりと開いた巨大な穴。そこはファンタジーの世界に現れるようなモンスターの潜むダンジョンだった。
調査の結果そこには貴重かつ未知の物質が大量に存在することが判明し、それを求める民間企業との仲立ちをするために誕生したのが日本政府公認の「探索者」だ。第一期の募集には1万1千名もの応募があり、試験をパスした者のみが探索者と認められ、迷宮に足を踏み入れていった。迷宮の近くには探索者のための町が作られ、その町はいつしか「迷宮街」と呼ばれていた。
そして三ヶ月。現在、探索者の数は戦闘で亡くなったり街を去ったりして約400名、迷宮の探索は地下4階まで進んでいる。そんな中、主人公の真壁啓一は探索者の第二期募集の試験を受けるために迷宮街を訪れていた・・・。

先ほども書きましたが、とにかく人が死にます。迷宮が口を開いてからまだ数ヶ月、何か一つを学ぶのに人間の命を糧にする必要がある時期なんですよね。そういったちょっとリアルなファンタジー、全四巻お楽しみ下さい。

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第八回 二年四組 交換日記

                                                ジャンル:学園物
たまには新しいタイトルでも。第八回。二年四組 交換日記

こちらは第9回SD小説新人賞の佳作に選ばれた作品で、作者は朝田雅康さん。ちなみにこの賞での佳作とは大賞の一コ下を意味します。出版は2010年の10月ですから、一年ちょっと前の作品ですね。

この作品はタイトルの通り、序章と終章以外は全て交換日記です。ただし、昔のカップルがやったような甘々のものではなく、問題児が提出しなければならないような日々の報告書みたいなものでしょうか。
主役は二年四組の生徒達。書き手は全十二章だから12人。時系列順に並んだそれぞれの視点から、起こった事件を読み解くストーリーになっています。
この作品、なにが楽しいかってそれは生徒の一覧表を作ることです。日記は匿名を遵守しているため、誰が書いたのか分からない仕様になってますし、最初に書いた人間が生徒の名前を直接書かずにあだ名で表現したため、以後それが日記のルールになって誰が誰だかさっぱり分からない。でもよく読むとヒントが各所にちりばめられているため、誰がどのあだ名で交友関係はこうで、という表を作ることが出来るんです。
これは楽しかったなあ。文章も軽妙で飽きが来ないので、めんどくさいとは思いませんでした。ぜひお勧め。

――あらすじ

教師達の陰謀で問題児ばかりが集められた二年四組。これがそろいもそろって本当にアクの強い生徒ばかり。しかも問題児とは言ってもいわゆるテンプレートな不良は三人だけで、残りはそれよりもタチの悪い個性の強い奴らばっかり。暴力男や性格激悪男、お嬢様にネット犯罪者にモデルにストーカー女に陰謀大好きな政治家の息子にと、本当にどうしようもない。しかし、これを率いることが出来てしまうのが圧倒的な統率力と誇る委員長(あだ名)。
彼女はクラスメート同士の理解を深めるために交換日記を提案。反対の意見を握りつぶしあっさり断行する――。
これは二年四組の生徒達に起こったある事件のあらましを、生徒それぞれの視点から著した物語である。

でも実のところ、この作品の本題は事件そのものではなく、生徒達の人間関係にあるんですよね。誰が誰を好きだとか、この派閥にいるのは誰だとか、過去にこういった事件があってすっきりしない関係だとか、複雑に絡み合ってパズルの様。これは表を作らざるを得ないでしょう。
ちなみにカバーや見開きの巻頭イラストに、表を作る上でのちょっとしたヒントが書いてあるのですが、私はこれは使わなかったなあ。ノーヒントの方が楽しいでしょ?

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第七回 やさしい竜の殺し方

                                         ジャンル:魔法 ファンタジー
む?半分がた女性作家さんになってしまってる…。偶然なんだけどなー、第七回。
やさしい竜の殺し方
こちらは平成9年当初は角川Sneaker Booksという新書サイズのレーベルから出版された作品で全三巻。後に角川ビーンズ文庫から全五冊+続編一冊の形で再版されました。作者は津守時生さん。
私も男ですから好きな作品の作家さんは男性が多いのです。それは男と女では明確な好みの違いがあるからでが、それだけにおもしろいと感じた女性作家さんは印象深いわけです。この方はその一人。
作風は一昔前(もっと前かな)の少女漫画の小説版といったところですか(すいません、私の少女漫画の知識は『11人いる!』辺りくらいからなので、的外れな意見かもしれません)。基本路線としては、圧倒的な強さと圧倒的な美しさ(←これ重要)を兼ね備えた男性主人公の活躍と苦悩の物語かな。
この方の作品を初めて読んだのは「喪神の碑シリーズ(角川スニーカー文庫)」で、もう二十年以上も前になります。角川スニーカー文庫の黎明期を支えた人物ですね。最近は活動縮小の宣言通り新刊を出されている様子はありません。
ベテラン作家さんなので他にシリーズを出していらっしゃるのですが、あえてこの作品を紹介したのは、一番ライトノベルっぽいからかな…。他のシリーズも同じくらいお勧めしたいです。特に『三千世界の鴉を殺し』は最も新しいシリーズだけあって一番とっつきやすいんじゃないかなと思います。未完だけど。

さて角川Sneakerはともかく、角川ビーンズと聞けば想像がつくかもしれませんが、BL要素があります。と言っても最低限ですのでご安心を。それを求めていた方はご愁傷様。むろん性描写もありません。

――あらすじ

古の昔。崩壊の危機に陥った世界を救うため、幻獣王と聖王が多大な犠牲を払って掛けた世界二分割の大魔法。世界は幻獣の住む陰界と人間の住む陽界に分かたれ、安定が保たれることになった。そして千年、陽界では聖王の末裔達が覇を競い合う戦乱の世になっていた。
ある王国の剣術大会で優勝した元聖騎士で傭兵のアーカンジェルは他部門で優勝した者達と共に、陰界より流され敵国に飼いならされた幻獣を退治する依頼を引き受けることになる。メンバーは傭兵仲間のドウマ、王国の王女クローディアとお付きのガイス。そして、戦乱の世になると現れると言われている幻獣ハンターの少年ウランボルグ。
自らを「人間ではない」と言い放つウランボルグは、何故かアーカンジェルを守ると宣言。その容姿の美しさから同姓にすら言い寄られることの多いアーカンジェルは、まだ未熟とすら言える年の少年の申し出に迷惑顔。
しかし旅を続ける内にウランボルグの目的が判明し、話は大事(おおごと)へと発展。アーカンジェルは深く苦悩することになる――。

このあらすじだと勘違いを起こさせてしまうかもしれませんが、暗い話ではありません。確かに暗い過去を持っていたりもするのですが、むしろユーモア溢れた感動の物語になっています。この辺りのバランス感覚がこの方の真骨頂ですので、安心してお楽しみ頂けると思います。

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第六回 暴れん坊プリンセス

                                        ジャンル:魔法 ファンタジー
第六回。真剣に紹介しようとすると、いろいろ悩むものですね。結果、時期がいいのでこちらにしました。暴れん坊プリンセス

この「暴れん坊プリンセス」、実は同名のps2用ゲーム(2001年発売)のノベライズです。なぜ時期がいいかと言いますと、最近PSP版で名作「俺の屍を越えてゆけ」通称「俺屍(おれしか)」のリメイクが発売されたんですが、これと原作者が同じなんですね。まあゲームの方は、俺屍と比べると技術力が上がって造りが雑になっているので、今やるのはお勧め出来ません。

さてこの作品、面白いという以外にお勧めする理由があります。
みなさん、ノベライズって基本的につまらないと思いませんか?
まあそうなる理由はいくつか思い浮かぶのですが、推測はともかく起こった事実だけを上げると、なまじ原作の人気が高いせいで『つまらないのに続巻が出続ける』という非常にうっとうしい状況になっている例が過去にはいくつもありました。最近はそうでないモノも増えてはいるようですが、それでも「原作の予備知識が無かったらこれはどうだろう?」などと感じたことのある方も結構いらっしゃるのでは?しかしこの作品、ノベライズのくせにおもしろいんです!
「マジで?」という方、お手に取って確かめてみてはいかが。全三巻です。
作者は細江ひろみさん。ノベライズ作品が多い方ですがオリジナルもいくつか書いていらっしゃいます。
ちなみにこの作品は原作者の桝田省治さんの監修を受けています。

 ――ということで、あらすじ。

小柄な体に凹凸の無いボディ。どうひいき目に見ても14才程度の子供にしか見えない少女、ルージュ=ビクトワールは小国シルバーベルの王女様。ちなみに御年(おんとし)18才。彼女の国は今や存亡の危機。未曾有の財政難にあえぐシルバーベルを助けるために彼女が始めたこと。それは権力者達の中に潜み人々の恐怖と絶望をすすろうとする魔物達をその手で退治することだった。聖騎士のシオン、お供のジャスミンらを引き連れ、人間には決して倒すことのできない魔物達をその右腕に宿る守護竜の力でバッタバッタと薙ぎ倒す。
「暴れん坊プリンセス、好評発売中!」

と、ここまでがゲームの方のあらすじになるわけですが、この作品ではルージュの子供時代から始まります。まだ傾く前のシルバーベル。幼い頃のシオン達との出会い。そして、なぜ彼女の体が小柄なのか、なぜ代々女王にしか引き継がれないはずの守護竜を彼女が宿しているのか、その理由が語られます。桝田省治原作だけあって、ちょっとシビアな展開ですね。彼女の味方をしてあげたくなります。
ストーリーのおもしろさに加えて軽快な文章と魅力的なキャラクター。考えてみるとおもしろくなる要素はそろってるんですよね。
ちなみにゲーム版の主人公は聖騎士のシオン君ですが…ムリですね。影が薄くって。

補足としてイラストは桜瀬琥姫さん。現在まで続くアトリエシリーズの元祖「マリーのアトリエ」のキャラデザインを担当された方です。アトリエシリーズの絵柄の方向性を定めた人と言ってもいいでしょうね。私、この人の絵は好きなんですよ。巻頭の見開きイラストとか最高です。

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