『おしん 一挙再放送▽第29週・自立編』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド)
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『おしん 一挙再放送▽第29週・自立編』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
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おしん 一挙再放送▽第29週・自立編[字]
主人公おしんの明治から昭和に至る激動の生涯を描き、国内のみならず世界各地で大きな感動を呼んだ1983年度連続テレビ小説。全297回を1年にわたりアンコール放送。
詳細情報
番組内容
おしん(田中裕子)が酒田を去る日が来た。8才で加賀屋へ奉公し、8年の歳月を過ごした酒田へふたたび帰ってきたおしんだったが、酒田もおしんの永住の地にはならなかった。おしんの努力で繁盛し始めた飯屋も、浩太(渡瀬恒彦)の忠告や、加代(東てる美)のことを考えると、おしんには店を続けられなかった。おしんが酒田を出発するという前の日の夜、店には浩太と加代が来て、お互いの別れを惜しむ酒になっていた。
出演者
【出演】田中裕子,渡瀬恒彦,小林千登勢,東てる美,石田太郎,赤木春恵,大橋吾郎,乙羽信子,【語り】奈良岡朋子
原作・脚本
【作】橋田壽賀子
音楽
【音楽】坂田晃一
♬~
(テーマ音楽)
♬~
おしんが酒田を去る日が来た。
8歳の時 加賀屋へ奉公し
8年の歳月を過ごした酒田へ
加賀屋の援助で 再び帰ってきた
おしんであったが
酒田も おしんの永住の地には
ならなかった。
明日は おしんが
酒田をたつという前の夜
おしんの店には
浩太と加代が来て
いつか お互いの別れを惜しむ
酒になっていた。
(おしん)こんな事だったら
何か 支度しとくんでしたのに…。
(加代)何にも要らねえって!
最後の晩に 3人で
話し合いたいだけだったんだから。
いいから おしんも
ここ 座ってくれ。 なっ。
はい。
(浩太)あの… 雄は?
よく 眠っています。
おしん。
はい。
よし。 はい。
あっ。
おしん
あれから10年だな もう…。
おしん…。
オレ あの時 浩太さんに
「おしんは 嫁に行く」って
言ったんだ。
だって…
おしんの結納の日だったんだもん。
浩太さん… 浩太さん 絶望してた。
オレは その心の隙間に
つけ込んだんだよ。
お加代様…。
オレたち3人は
つまんねえ運命だのう。
この酒田で会って
10年たって
また この酒田で会って
また ちりぢりばらばらに
別れねばならねえ。
ホントに つまんねえ運命だのう。
みんな それぞれ
違う道 歩いてるんです。
お加代様は 旦那様を
大事になさらなければ…。
そのために
おしんは この店 やめた。
それぐらい 分かってる。
分かってるけど…
分かってるから
オレ おとなしく 加賀屋に
おさまるつもりにもなったんだ。
んだども…。
(浩太)加代さん。
世の中の人で 自分の思いどおりに
生きてる人なんか いやしないよ。
みんな 何かに ぶち当たって
それ 乗り越えようと
あがいたり 諦めたりしながら
いつの間にか 自分じゃ
考えてもいなかった人生
歩いてる。
それを 恨んでも 悔やんでも
どうしようもない事だよ。
その時その時の幸せを
見つける努力しなきゃ…。
じゃないと
一生 幸せを知らないで
終わってしまう事になる。
♬~
よし…。
いつか 今度 会える時は
みんなが歩いてきた道を
笑って話し合えるように
なりたいな。
(ため息)
また 会えるかのう?
会えるよ。
おしん… きっと会えるな。
きっと会えるな。
きっと会えます。
(ため息)
きっと また 酒田で
浩太さんと3人
きっと会いましょう。
♬~
10年という歳月
それぞれの道を歩いて 再会した
3人は
また それぞれの道に
別れていこうとしていた。
…が この夜 誓い合った
3人の約束は
ついに 果たされる事はなかった。
♬~
よいしょ。
雄…。
(物売りの声)
あっ どうも。
(清太郎)おしん
これは 俺の気持ちだ。
受け取ってくれ。
とんでもございません。
ご迷惑ばかり おかけ致しました。
頂けません。
(みの)遠慮しねえで いいんだよ。
荷物になるもんでは ねえ。
もらってくれ。
いいえ…。
それで お父さんも おっ母様も
気が晴れるんだから
取っといてやってくれ。
伊勢で困る事があったらば
帰ってこいのう。
無理するんではねえんだぞ。
んだ。
辛抱して 体 壊しては
何にもならねえからのう。
(みの)雄坊とも お別れだのう。
とうとう うちの子には
なってもらえなかったのう。
♬~
おしんは
何度も 加賀屋を振り返っていた。
おしんにとって 加賀屋は
山形の実家以上に
思い出深い家であった。
くにに育んでもらった
少女の日の事が
おしんの胸を
懐かしく 去来していた。
そして それが 加賀屋を見る
最後になったのである。
(圭)そうだったのか…。
ここに来るんなら
うち 帰った方が早いのに
ここのホテルで しばらく
休んでいきたいって言ったのは
やっぱり ここに
思い出があったから…。
あのころは 今みたいに
交通が便利じゃなくてね。
ホントに ここまで来るのは
大変だった。
つくづく 遠い遠い所へ
来ちまったって
泣きたいように 情けなかったね。
あの時も この浜を歩いてた。
訪ねていくうちが
なかなか 分からなくてさ
ホントに たどりつけるのかと
お先真っ暗な気持ちだった。
港も コンクリートの堤防になっちゃって
昔の面影は ないけど
海の色だけは 変わらないね。
♬~
青いね。 ザブ~ン ザブ~ンって…。
♬~
雄 ここだ! ここだ!
アタ~ッ… イタタ…。 アイタタタタ…。
よかった~!
(ひさ)コラ!
どこに 腰 下ろしてんねが!
罰当たり!
大事な商売道具やで!
漁師の命やで!
すみません どうも…。
あんた 見かけん顔やな。
申し訳ありません。
何にも知らなかったもんで…。
なあ あんた 酒田から?
そうやろ?
はい…。
どこで
行き違うてしもうたんやろな。
浩太さんからは
今日 着くいうてね
知らせを もろうてたよってに
さっきから あの辺まで
見に行っとったんやで。
さあ 入んない!
あ~ おたいはな 神山ひさ。
あんたの身元引受人や。
あなたが?
あんた
どこぞ 体の具合でも悪いんか?
いや あの… 飲まず食わずで
ここまで来たもんで
ちょっと
足に 力が入らないだけなんです。
へえ~ 腹が減っとんのんかいな。
すみません…。
ここ 見つかるまで 心細くて
食べる気にならなかったもんで…。
そんな 気の小さい事ではな
女子は 一人で
生きていかれへんで!
さあ しっかりしな!
はい!
♬~
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(ひさ)はあ~ この子 連れて
酒田からでは
疲れるの 無理ないわな~。
よう こんな知らんとこまで
あんた 一人で来たな。
けど 浩太さんも 浩太さんやで。
あんた一人で よこすやなんて…。
(おしん)いや 浩太さんは
急に お仕事 おありになって…。
なにが 仕事や!
親 泣かせるような事ばっかり
しよってからに…。
金に不自由がある訳やなし
おとなしゅう 大学 出て
官員さんでも なっとったら…。
父親は 大地主の多額納税者の
貴族院議員や。
親の七光りで 出世は
思いのままやっていうのにな。
あの~ 浩太さんは 貴族院議員の
息子さんなんですか?
浩太さんの母親と おたいは
いとこ同士でな。
いとこいうても
向こうは ご大家の奥さん
おたいは 漁師の女房や。
何とのうな つきあいも
遠のいてしもうたけど
浩太さん 小さい時からな
ここが好きで
中学の頃も よう遊びに来とった。
今でも フラッと やって来よってな。
ホンマに 心の優しい
ええ子やのに…。
あんなもんに
かぶれてしもうてからに…。
心の優しい方です。
貧しい人たち見ると
黙っていられないんですよね。
まあ そういう事かもしれんわな。
浩太さんに頼まれたら
嫌とは言えんしな。
浩太さんが
大事にしとる人やったら
悪い人やないやろ。
まあ おたいにできる事は
何でもするよってにな。
♬~
ふと 目が覚めて
おしんは 一瞬 自分が
どこにいるのか 分からなかった。
見知らぬ部屋である。
しかも 一緒に寝ているはずの
雄の姿がない。
「そうだ。 今日から
新しい暮らしが始まるんだった」。
昨日 神山ひさの家に
たどりついた事を思い出していた。
これから どんな毎日が
自分を待っているのだろうか…。
おしんの胸に
突然 暗い不安が広がった。
雄。 雄!
雄!
(ひさ)はい はい はい!
あ~ もう 海を見せてきた!
なあ!
雄坊が とっくに起きたのに
あんた
気が付かんと 寝とるやなんて
よっぽど くたびれとったんやな。
すみません。 何だか
すっかり 安心してしまって…。
おかげさまで
ゆっくり 休ませてもらいました。
あの… 明日からは
ちゃんと早く起きて
台所の手伝い
させてもらいますから…。
それはな おたいの仕事や!
あんたには あんたのする事が
あるよってんな。
いや でも
お世話になるんですから…。
あんたにはな
部屋 貸してあげてるだけや。
浩太さんからな
あんたらの住む家を
探してやってくれってね
頼まれたんやけど
うちはな
息子が 3人おるんやけどな
みんな 東京や名古屋の学校
行ってしもうてて おたい一人や。
あんたらの寝る部屋ぐらい
あるよってんな
ここに いてもらう事にしたんや。
ありがとうございます。
そうさせてもらえたら
どんなに助かりますか…。
でも ただ それなら それで
私も 何か お役に立つ事
させてもらわないと…。
若い衆も
何か おられるみたいですし…。
漁に出ていく若い衆の
面倒 見るのは
船を持っとる者の務めや。
それくらいの事せんとな
おたいのする事 あらへん。
おしんちゃんはな
明日からでも 行商に出んと
食べていかれへんしな。
行商って…。 私が?
あんた そのために
ここへ来たんやないかいな!
浩太さんから
何も聞いとらんのんか?
うちの船で取れた魚をな
安う 卸したるで。
それを あんた 売って歩くんや。
売って歩くって
あの… どこへ?
そんな事 おたいが知るかいな!
うちはな 魚を卸したるだけや。
なっ! それを なんぼに売ろうと
あんたの勝手やで。
なんぼ 利益を掛けて
もうけるかは あんたの腕や!
なっ! 同業者も多い事やってんな
競争 激しいで!
そら 簡単にはいかんやろ。
けどな おたいが
なんぼ 口で言うたかてやで
そんなもん あんたが
体で覚えな しょうがないし…。
まあな やっとりゃ
嫌でも覚える。
(競りの声)
(競りの声)
あの人たちも みんな?
ああ。 ここで 魚 買うて
みんな 行商で売り歩くんや。
行こう。
今日からな この人も
あんたたちの お仲間入り
させてもらうよってんな
よろしゅう 頼むんな!
よろしく お願い致します。
はい よっしゃ!
さあ さあ
続けようか 続けようか!
今日はな カレイが豊漁やで。 安いで。
イナダも 今が旬や。
今日は こんだけにしとく!
あっ 車エビも もろうとこうか!
締めて 3円50銭。
へえ!
(ヒデ)わしは?
(ひさ)あんた タイ みんな
持っていくんかいな?
祝い事のあるうちで
みんな 頼まれてな。
あんた ええお得意 持っとるな~。
ハハハハハハ!
オレ オレ! いくらや?
4円と言いたいとこやけどな
3円80銭に まけとくわ!
おおきにな!
ほれ いこうか!
(競りの声)
よいしょ! すいません。
ほら 雄坊 入ったか?
怪しいな 天気が。
笠 持ってった方がいい。
何が何だか分からぬまま おしんは
魚の行商の第一歩を踏み出した。
髪結いの出髪から始まって
さまざまな商いをしてきた
おしんである。
それも 皆 一から
始めたものばかりであった。
その経験で いつか 商売の勘と
根性を身につけた おしんには
なんとかなるさと居直れる強さも
培われていた。
一歩 外へ出た時 おしんは
本来の自分を取り戻して
与えられた自分の道を
しっかり 歩き始めていた。
(ひさ)大丈夫か~?
魚~ いかがですか?
カレイに イナダ タイ
旬の魚 いかがですか?
あっ 奥さん 魚 いかがですか?
お安くしときます!
魚なら もう 買うたよって。
また よろしく お願いします。
魚 いかがですか?
魚~ いかがですか?
はあ~。
はあ~。
魚屋です!
新しい魚 いかがですか?
何や あんた 初めて見る顔やな。
はい。 今日から始めたんです。
せっかくやけどな うちは
決まった人が来てくれてんねん。
あ… お安くしときます。
そやけどな ほかのもんかて
いろいろ 頼んでんねよってに
あんたから
買う訳にいかんのんや!
そうですか…。 じゃあ また
よろしく お願い致します。
あんたな
この辺 歩いたかて 無駄やで。
大抵のとこがな 決まった人から
買うてんなよってにな。
はい。 ありがとうございました。
(雄)あれ? 何か
梅干しが入ってるの?
うん。
あれ? 何か 梅干しが
入ってるからね!
うん。
歩いても 歩いても
ちっとも 売れねえな…。
どうしたら いいんだろう?
(ため息)
こんにちは! 奥さん あの~
この村にも 決まった魚屋さん
来るんですか?
ああ。 1日か2日置きに来る
おばやんが おるわ。
今日は 来やへんで
買う人もおるかもしれへんけど…。
奥さん いかがですか?
オレか? 要らん 要らん。
うちに来る おばやんにな
町におる娘のとこへ
物 持ってってもろうたり
よう 世話になっとるでな。
よく分かりました。
あ~ こんだけ 歩いても
売れないんだったら
誰かに もらってもらおうかな 魚。
持って帰ったって
重たいだけだし
捨てるような事になったら
もったいないし…。
奥さん カレイ いかがです?
カレイ もらって下さい。
もし よかったら
ほかの人にも差し上げますから
声 かけて下さいよ。
まだまだ 新しいんだ。
声 かけて下さい ちょっと…。
あんた ホントか?
だって このまま捨てるような事に
なったら もったいないもの。
魚だって 食べてもらった方が
喜ぶに違いない。
おい おい! おいない おいない!
タダで… タダで
魚 くれるんやて!
どうぞ! よいしょ! ほら!
どうぞ!
生きがええな!
♬~
あ~ 遅かったな! あんた
どこまで行っとったんや?
心配しとったんやで!
なあ 魚は?
えっ!?
みんな 売れたんかいな?
へえ~!
びっくりしたな~ もう!
初めから 一匹 残らず
売ってくるやなんて!
おたいはな ⅓も売れたら
大した腕やと思うとったのに…。
立派なもんやわ!
すいません。
あんたな 一体 どないして
売ってきたんや?
はあ~。 まあ…。
よいしょ!
♬~
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(ひさ)風呂
薪 くべといたよってんな
食べたら入って はよ寝なさいや。
(おしん)すいません。
お世話をおかけします。
浩太さんから預かった大事な人や。
早う 一人前に
なってもらわん事にはな。
けど 初めから
よう 魚 売ってきたな。
あんた
なんぼ もうけ 掛けたんや?
まあ そんな事は
どうでもええわな。
たとえ
タダ同然の たたき売りでも
荷を空にして戻ってくるっていう
その度胸が 気に入ったわ。
おぶ 飲み。
すいません。
けど あんたも苦労するな~。
浩太さんから 話があった時な
おたいは 「女子の1人や2人
食べさせるのは
何でもない事やよってに
うちで預かろう」言うたんや。
そしたら 「おしんさんは
ちゃんと独り立ちできるように
してやってほしい」って…。
そう言われたら
おたいかて 責任があるもんな。
あんたら 楽させるのは
何でもない。
誰が つらい目に
遭わせたいもんかいな。
けど 甘やかしたらな
浩太さんの気持ちにも
背く事になるし
あんたのためにも ならへん。
そやで 厳しい商売やっちゅう事を
承知の上で。
はい。 よく分かっております。
まあ 一日も早う 商売に慣れて
旦那とも暮らすように
ならんといかんな。
はい。
ええか。
行商いうのはな
商売の基本みたいなもんや。
行商も ろくに でけんでは
何やってたってあかん。
そのつもりで 頑張んのやな!
はい!
♬~
魚~ いかがですか?
飛び切り 安くなっております!
新しい魚 いかがですか?
魚~ いかがですか?
飛び切り 安くなっております!
新しい魚 いかがですか?
(よし)ちょっと 魚 見せてんか。
はい! ありがとうございます!
よいしょ!
これ ホンマに ここに書いてある
値段で売るのんかいな?
はい!
あんまり安いわさな
昨日の残り 売ってんのと
違うやろかと思ったけど
今朝のやわ!
(さだ)ホントやね。 いつも持ってくる
おばさんな これと同じのが
昨日 5銭 高かったで!
そうやがな。
うちも 昨日 カレイ 買うたけどな
こんなに 安うなかったで!
私 商売 始めたばっかりなんです。
それで お客様に
喜んでもらえたらと思って
安くしています!
道理で見た事ない顔やと思うたわ。
あれ まあまあ
子ども 連れて えらいこっちゃな。
今日は
キスでも もろうとこうかな。
ありがとうございます!
うちな イナダの刺身 もろうとくわ。
はい!
えらい安い魚屋やな。
新しいのんかいな?
今朝 揚がったもんばっかりで!
商売 始めたばっかりだから
安くさせてもらってます。
アナゴも あるんです。
うちとこ アナゴ 作ってんか?
はい! ありがとうございます!
あ~れ あんた 昨日
魚屋になったようには見えんな!
(ヒデ)ちょっと…。
カレイ 15銭や。
よいしょ。
ヒュ~ッ ガラガラガラガラ~!
何ぞ あったんか?
ただいま 帰りました!
なっとしたんや?
まだ 昼間やで。
いや~ みんな 売り切れて
しまったもんで! えっ?
明日からは もう少し
仕入れ 増やしていきます。
あんた 一体
どんな商売しとんのや?
まあ ええけど…。
そら あんたには あんたの考えが
あって してる事やろし
おたいが とやかく
口 挟む事ではないけどな。
あの~ 昼から
何か 手伝い ありましたら
何でも させてもらいます。
言いつけて下さい。
よいしょ。 お手々 洗おうか。
(ひさ)酒田では 飯屋やって
繁盛したんやってな。
浩太さんはな あんたには そんな
ヤクザな商売させたない言うて…。
おたいはな そんな余計な世話
焼かんでもええと
思うとったけど…。
いいえ。
ありがたいと思ってるんです。
いろいろ 事情ありまして
酒田の店は
やっていられなかったもんで…。
あんたの腕で
そこまで やれたんやったらな
何にも 心配する事あらへん。
飯屋やて 魚屋やて
商売に変わりはあれへん。
今まで 商売して教わった事
無駄にしないで
今度こそ 一生の仕事にしたいと
思ってるんです。
いや~ ホントの事 言うたらな
浩太さんに頼まれて
安請け合いしたもんのな
どんな人が来るかと思って
気が重かったんや。
けど 浩太さんが やっぱり
肩入れするだけの事は ある。
あんたはな
立派に 独り立ちできる人や。
おたいかてな
世話の しがいがある。
娘のつもりで
面倒 見るよってんな。
あっ そうや。 もうそろそろ
夕飯の支度に かかろうか。
今日はな 伊勢エビが
取ってあんねんで。
あんた 食べた事ないやろ?
なっ。 伊勢へ来たんや
一遍 食べてみない!
とんでもありません。
市場に出したら いくらにでも
なるものを…。 罰 当たります。
食べさせてやりたいんや!
(戸が開く音)
あ~ あんたら 今 あがったんか?
(トメ)あがるも何も
今日は ひどい目に遭うたわ!
うちらの魚が 高い言われて!
これじゃ
商売にも何にもならんわ!
一体 どういう了見か
聞きに来たんや!
いきなり 何の話やな?
(トメ)
あんたには よう分かっとるやろな
わしらの言うとる事!
わしらな 大体 仕入れ値に
3割 掛けて 売っとるんや!
それを この人は せいぜい 1割の
もうけで たたき売ってるんやで。
そんな事されたら
ほかの者は 高い高い言われて
商売にも何にもならんやないか!
あんた一人が
勝手なまねしたばっかりに
ほかの者が どないに
迷惑してるのか分かってんのか?
お内儀さんも お内儀さんや!
なあ!
お内儀さんが ついとって
こんなアホな事させるやなんて!
お内儀さんには
何の関係もないんです。
私の一存で した事ですから…。
(ひさ)たとえ 知っとっても
おたいは 何にも言うつもりは
あらへんで。
なあ 勝手気ままに
競争できるっていうのが
商売の面白さやないか。
いちいち そんな文句を言いに来る
あんたらの方が
おかしいのと違うか?
お内儀さん!
いや それだけやないわ! 昨日は
タダで 魚 配って歩いた言うて
えらい 評判になっとるんやで!
そのあとへ 魚 売りに行った者の
身にもなってさ!
あんたが損しただけじゃ
済まんのやでな!
(ひさ)これからやて この人は
何をするや 分からへんで!
それは
誰も止める事ができへんのや!
この人が 何かしたら
文句を言いに来る前にやな
この人と競争する事を
考えたらええ。
それが 商売ってもんと違うか?
何や!
まあ あんたらも 気張んないな!
申し訳ありません。
とんだ ご迷惑おかけしました。
おしんちゃん あんた…。
安く売ったのは
私の顔を お客様に 覚えて
もらいたかったからなんです!
タダで 魚 配ったんだって
魚が もったいなかったから
だけでは ありません!
そうしとけば 私の事は忘れないし
今度 行った時に
必ず 買ってくれると
思ったからなんです!
フフフフ! それが
おしんちゃんの商売かいな。
「損して得取れ」とは
よう言うたもんやな!
行商やるからには
誰にも負けたくない!
私は 私のやり方で
お客様 取ってみせます!
それぐらいの根性がないと
この商売 やっていけないような
気がするんです!
あ~ 大した根性や!
けど それが通るかどうかやな。
まあ 思いどおり
やってみる事やな。
(競りの声)
よっしゃ カレイだ!
30で いってみようか!
買うた 買うた! 買うた 買うた!
アジや! 30や! どうや?
買うた! 買うた 買うた!
また あんたか。
タコ! よっしゃ 20や! どうや?
25! 26!
7!
売った!
カニや! 50や! 50 どうや?
買った 買った 買った! 買った!
よっしゃ!
車エビ いってみよう!
いくよ! 30!
2!
6! 6! 6!
よっしゃ! 6 売った!
あんた そんな ようけ仕入れて
ええのんかいな?
安く売ろうと思ったら 量で
勝負しないと 稼げませんから!
3! 5!
よっしゃ! 25 売った!
これは 30から いってみようか!
30 どうや?
5! 5! 5! 5! 5!
魚~! 魚 いかがですか?
今日は 何があるの?
こんにちは! 毎度!
今日は アジが いいんですよね。
あと メバルか イナダか。
アジのたたき 作ってや。
はい! ありがとうございます!
よいしょ!
おばちゃんが
だっこしたるからな!
ほれ! ほら よいしょ!
あ~ ええ子や!
高いな! おとなしいな!
なあ!
そやけど あんた 偉いな
毎日 子連れで。
どうせ買うんやったらな
あんたのとこにしようて
言うとったんや。
今までの人には 悪いけどな
うちらかて
1銭でも安い方が助かるしな!
いや~ これからも
勉強させてもらいます!
よろしく お願いします!
こんにちは!
あ~! あんた
この間の魚屋さんやな!
悪かったな タダで もろうて…。
いえいえ。 こちらも 重たい魚
持って帰らずに済みました!
今日は ちゃんと買うで!
なっ うち 寄ってって!
ありがとうございます。
でも 今日は もう みんな
売り切れてしまって…。
何や~!
もう 何もあらへんのかいな。
今度 よろしく お願いします。
また来ますから。 うん。
あれ? ジャガイモ 植えるんですか?
ああ。
病人がおるで
仕事が ちっとも進めへん。
あっ それじゃ 私 手伝います。
もう 仕事 終わったから。
えっ?
さあ じゃあ 雄 遊んでこい。
なっ。 あんまり
遠く 行くんじゃないぞ。 はい。
いや あんた…。
私ね 小作の娘なんですよ。
だから 畑仕事は慣れてるんだ!
いや~ 懐かしいな。 よいしょ!
ああ… ハハハ!
何だか 土のにおいは懐かしい!
よいしょ!
ガチャッ! ガチャッと!
いや~ 足 洗いましょう!
歩き回って 疲れとるいうのに
畑仕事 手伝うてきたんかいな。
いや~ 皆さん
喜んで下さいました。
当たり前や!
なにも そんな事せんかて…。
すいません。
よいしょ! はい!
いや~ でも
人が しない事 やらないと
お客様は 取れませんから!
でも 久しぶりに 畑仕事して
楽しかったです。
雄も いっぱい 遊んだよね!
ひさは 恐らく おしん自身も
気付いていないであろう
したたかな商魂を
おしんの中に見ていた。
いつか
それが実る時も来るだろう。
その日までは
おしんを見守ってやろうと
ひさは 心に決めていた。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
漁のある限り 毎日 おしんは
雄と魚をのせた箱車を押して
周辺の町から村を 歩いて回った。
ほかの行商仲間より
1銭でも2銭でも安くし
もうけは 数を売る事で補う。
誰よりも安い魚が
日を追うごとに 信用を呼んで
ひいきの客を増やしていった。
♬~
(おしん)ありがとうございました。
どうも!
(さだ)なあ うちとこな
昨日から おばあちゃん
寝込んでしもうたんやわ。
何ぞ 白身の魚ってある?
それは ご心配で…。
キスの白焼きだったら
あっさりしてますけども。
これ 私の気持ちです。
ばんちゃんの お見舞いに。
冗談やないよ あんた
そんな商売物を!
私の ばんちゃんは
もう 死んでしまって
孝行したくたって できないんだ。
そのかわりに させてもらいます。
(よし)へえ~
ええとこ あるやないか!
おばあちゃん聞いたら 喜ぶわ。
もろうといたら ええがな!
悪いな~。
ほんなら まあ 遠慮なしやに。
そしたらな
ここへな うちの おかずはな
アジ3匹ばかり 入れといて。
ありがとうございます いつも!
20銭やったかいな?
はい そうです。 ちょうどです。
どうも!
おおきに!
ありがとうございました!
また よろしく お願いします!
明日 息子の結納で
人が寄るんやわ。
はい。
やっぱり タイと伊勢エビがないと
祝いの膳にならんわな。
そら 一世一代や!
それくらい 張り込まな!
けど あんまり高いと
手が出やんわ。
勉強させてもらいますから 後で
いくらぐらいの ご予算なのか
伺いにあがります。
そうか! ほな 待ってるわ!
もし よかったら
明日 手伝いましょうか?
あの~ 塩焼きだとか それから
刺身だとか それぐらいだったら
私 できますから。
へえ~ 助かるわ!
ほんなら うちも 法事の時
あんたに頼もうかいな!
もう 精進落としのお膳に
いっつも 苦労するんやわ!
いや~ 私で できる事だったら
何だって 言いつけて下さい!
(よし)ほな ほな 待ってる!
はい。 後で どうも!
今日は もう少し
沖まで出てみようかな。
そうやな! あっ お疲れさん!
行ってらっしゃい!
気ぃ付けて! へえ!
うわ~!
(ひさ)あ~ お帰り!
今日も遅かったな! ほれ!
村で 離れ建てたうちがあって
母屋から引っ越すの
手伝ってきました!
また 手伝うてたんかいな~!
最初に タダで
魚 もらってもらった人たちが
このごろ 買って下さるんですよ。
それで お礼のつもりなんです。
あんたも変わってるな~!
魚 買うてくれたからって
なんも そんな事まで せんかて
ええやないか~!
無理して あんた 体 壊して
病気にでもなったら…。 なあ!
ほかの人たちと
同じ事してたんでは
お客さんに
かわいがってもらえないから。
よいしょ!
よっしゃ 20からやで!
3! 3! よっしゃ 売った!
30から いってみようか!
3! 5! 5!
45!
45 売った! よし!
よっしゃ 20から いってみよう!
25!
25! ほか いないか?
50! よっしゃ 50 売った!
(ひさ)嵐が近づいとって
今晩は 荒れるそうやで!
明日は 魚がないで。
漁に出られへんしな。
じゃあ 明日は 休まなければ
ならないんですか?
嵐の日は 行商の骨休めや。
ゆっくりしたらええ。
じゃあ このイワシ みんな
買った 買った!
え~っと タイ 買った!
おしんちゃん…。
あんた なんぼ 気張ったかて
今日一日では とてもやないけど
あんた さばききれへんで!
いいんです!
みんな もらいます! よっ!
よいしょ!
横 いこうか!
いいか? いくぞ!
(金づちで打つ音)
お帰り!
ええ匂いやな~。
何 炊いとるんや?
イワシ! 佃煮にするんだ。
そんなに ぎょうさん炊いて
なっとすんや?
売るんだよ。
佃煮屋に商売替えか?
おしんさん。
夏になって 台風だ何だという度に
商売 休んでたら
もったいないから
これ持って 回るんだ。
なあ このタイも?
これは みそ漬けにするの。
うまいぞ~。 長もちするし!
漁が しけて
3日も休んだ日には
これ持って 回ったら
みんなに喜んでもらえる。
へえ~ 俺 みそ漬けなんか
食うた事あらへんわ。
そりゃ 一年中
おいしい魚 食べてるじゃない!
でもね 東北の山の中にいたら
魚っていったら 塩漬けか干物か。
それも 年に1度か2度しか
食べれないんだ。
みそ漬けなんていったら
大変な御馳走なんだから!
まあ こういう いい所に
住んでる人たちには
分からねえだろうな。
そないなもんかいな。
私ね ここが 気に入った。
一生 ここで住みたい。
だから お客様は
絶対 大事にしないと!
商売していくんだったら お客様は
一生の財産になるからな!
♬~
おしんの願いは
いつも行商している町で
魚屋の店を開く事であった。
そこへ
夫の竜三を 佐賀から呼び
親子3人の暮らしができるように
なるのを 夢みていた。
やがて 夏が過ぎ 秋が終わって
厳しい冬が来ても
おしんは 一日も休まず 雄と魚を
のせた箱車を押して歩いた。
時代は 慌ただしく
大正から昭和に変わり
おしんが ひさの家へ世話になって
1年がたっていた。
♬~
(ひさ)遅かったな~!
婚礼の料理の打ち合わせあって…。
(浩太)元気そうだね おしんさん。
浩太さん!
(ひさ)「おしんちゃんと雄坊に
一目 会うて 帰る」言うてな
さっきから 待っとったんや。
浩太さんも お変わりなくて!
おい。 お前も変わんないな~。
覚えてるか?
おじちゃん 覚えてる?
覚えてる!
まだ 酒田に
おいでになるんですか?
いや
庄内支部は そのままだけどね
僕は ほとんど 酒田へ行ってない。
あっちこっち 飛び回るのに
忙しくて。
でも よく こちらへ…
お忙しいのに。
気には なってたんだけどね
こっち来る暇がなくて…。
(ひさ)おしんちゃんの様子
知らせようにも
あんた どこにいるや
分からへんやないか。
手紙の出しようも
ないやないかいな!
申し訳ない 頼みっぱなしで。
あんた 相変わらず
逃げ回ってんのか?
いや そんな事ないよ。 今は
農民活動も 公に認められてる。
ところがね 小作争議の形態が
変わってきてね。
今までは 小作が地主に対して
小作料の引き下げを要求する
闘争だった。
それが 最近は 逆に
地主が小作に対して
小作料の引き上げを要求する
場合が増えてね。
それに 暴力を使って
小作人を追い出そうとしたり
裁判に持ち込んで 小作に米を
作らせないという手段に出たり
いろいろ 複雑で難しい問題が
多くて…。
大変なんですね。
不景気になってきたからね。
地主も 経済的に困って
必死なんだよ。
小作争議は 泥沼に
はまっちまったって感じだな。
おしんさん 頑張ってるらしいね。
はい。 本当に 浩太さんと
お内儀さんのおかげです。
いいや。 おしんちゃんの根性で
気張ってきたからや。
この人な ただ 魚 売ってるだけや
あらへんで。
心で商いして お客の心を
ちゃんと つかんどる。
ほかにもな 大勢 商いの衆は
いてるけど
誰にも でけん事をして
お得意さんを増やしてきたんや。
前はな 文句 言うたり
陰口を言うたりする
同業者やて おったけどな
今は もう おしんちゃんに
一目 置いてるがな。
まあ 大した商売人やわ! ハハハ!
よかった。
まあ おばさんに頼んだから
なんとかしてくれるとは
思ってたけど…。
おたいは 何にもしとらへんで。
下宿代やて
ちゃんと もろうとるし
魚やてな ほかの人と同じ値で
卸させてもろうてますよってに。
いえ もう お内儀さんは 私に
余計な気を遣わせまいとして…。
おかげで 私 商売の事だけ
考えられましたから
行商の事は
一人前に なんとかなりました。
安心したよ
おしんさん 見届けられて…。
酒田で 酔っ払い相手の店
やってられたら
心が残って 好きな事
できなかったかもしれないな。
(ひさ)そろそろな
一軒 店 持って
落ち着いたらええと
思ってんのやけどな~。
なにも
子連れで 歩き回らんかて…。
この冬やて あんた 寒い風ん中
雄坊 かわいそうやないか!
いえ まだ そんな事は…。
なあ 元手やったら
どんだけでも貸してあげるがな。
お客さんかて 増えてきたんや。
なっ!
店 やったって
きっと 来てくれはるって!
それだけの信用も
ついたんやから!
おばさんが 太鼓判
押すんだったら 大丈夫だよ。
本当に 店 持つ事 考えたら?
なあ。 そしたら
旦那さんかて呼べるやないか。
そうだよ。 夫婦が 離れ離れに
暮らしてるなんて よくない。
雄のためにも よくない。 ここに
頼んだのも そのためなんだから。
3人一緒に
暮らせるようになったら
僕は おしんさんへの責任が
果たせる。
もう 心配しないで済む。
そろそろ 行かなきゃ。
汽車の時間だ。
これから?
今日 帰られるんですか?
うん。 おしんさんと雄の様子 見に
寄っただけだから。
じゃあ お願いします。
こんな情勢じゃ いつ また
地下に潜るか 分かりゃしない。
たとえ 会えなくなっても
いつも どこかで
おしんさんの幸せ 祈ってる。
一日も早く
田倉君と一緒に暮らせるように。
それから 加代さん…
加賀屋の若奥様に
おさまってるよ。
あれで よかったんだ。
きっと
また お目にかかれますよね?
じゃあ…。
♬~
大バカ者が…。 あの子一人で
何ができるって言うのや!
何 不自由ない家に生まれとって
人のために 金の工面して
歩き回るやなんて!
なにが運動資金や! アホらしい!
♬~
その夜 おしんは
佐賀の夫 竜三に 手紙を書いた。
浩太の愛情に報いるのは
親子3人が一緒に暮らす事だと
思ったからである。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(おしん 雄)♬「夕焼小焼で」
♬「日が暮れて 山の」
(ひさ)あ~ 御苦労さん!
おなか すいたやろ? なっ!
あんたの好きなな お魚の子
ようけ 炊いてあるでな
食べような!
あ~ 今日もな 佐賀から
手紙 来えへんかったで…。
一体 どないなってんねんな?
あんたの旦那…。
うん 行こう! よいしょ!
雄坊 コロッと寝てしもうたわ。
すみません。
一日中 ガタガタ車に乗せられて…。
なっ。
なんぼ 子どもでも
参ってしまうわな。
あんたやてな 雄坊が だんだん
重とうなってきて えらいやろ?
何と言うたって
町まで 往復3里の道やもんな。
私 歩くのは 何でもないんです。
ちっちゃい時から 山道だとか雪道
歩いてましたから。
なんも そんな 無理せんやて…。
魚屋としての信用も
ついた事やしな
店やったやて お客さんは
ちゃんと来てくれはる。
心配ないって。
そらな おたいは
あんたや雄坊が
町 行ってしもうたら
寂しゅうなる。
けど あんたの苦労 見とったらな
そんな事 言うとられんもんな。
旦那の返事 待たんでも
ええやないかいな。
なにも 旦那がおらんと 商売が
でけんっていう訳やなしな
魚屋は おしんちゃん
あんたが やるんやよってな。
ホントに いろいろ
ご心配おかけして…。
ただ 父親がいないのに
うち 持ったって
雄も寂しいんじゃないかと思って。
雄も いろいろ
分かるようになりました。
お内儀さんに
かわいがって頂いてるんだって
よく分かってるんです。
だったら
私と二人っきりで暮らすよりも
こちらに置いて頂いた方が…。
ご迷惑じゃなかったら
そうさせてもらえたらと思って…。
そんな 迷惑やなんて!
おたいはな
夕方 あんたらが戻ってくるのを
楽しみにして
一日中 働いとんのやから。
さあ お茶 入ったで。
すみません。 おいない。
はい。
けどな 雄坊のお父さん あの子が
かわいいないのやろうかな?
死んだ うちの人の浮気にも
泣かされたけど
子どもだけは
かわいがってくれたで。
子どもが おったよってに
夫婦別れせんと済んだんや。
「子は かすがい」とは
よう言うたもんやと
思ってたんやけどな。
私が いけないんです。
私 佐賀で
ちゃんと辛抱してたら
夫婦が
別れ別れに暮らすような事も
雄を寂しい思いさせる事も
なかった。
あの人だって
つらいと思うんですよね。
佐賀を出たくたって出れない
いろんな事情があると思う…。
ふ~ん…。 おたいはな
あんたの旦那の事は
何も聞いとらんよってな
つまらん事
言うてしもうたけどな。
いいえ。
けど あんたほどの人がやで
佐賀を逃げ出して
来んならんように
なったっていう事は
よくよくの訳があったんやろ?
なっ あんたな
旦那が 佐賀におっても
あんたは
佐賀に帰る気は ないねんな?
はい。 帰れた義理じゃないんです。
だから 私 なんとか
独り立ちしたいと思って…。
おしんちゃん。
言うて悪いけどな
あんた 諦めない!
佐賀には 旦那のご両親やて
おいでるのやろ?
はい。
息子 置いて 逃げ出した
嫁のとこに
よこすはずないやないかいな!
あんたが なんぼ 気張って
待ったかて そら あかんて!
店かて出す事 あらへん!
ここに おったらええ。
行商やて やめても構へんのやで。
あんた 預かったのもな
何かの縁や。
一生 ここにおり。 旦那の事は
忘れた方が利口やで。 なっ。
浩太さんやてな
「早う 夫婦で暮らせ」ってな事
言うとるけども
ホンマの事 言うたらな
おしんちゃんに
一人で いてほしいんや。
そうやなかったら
誰が あんたの面倒なんか
見るかいな!
お内儀さん…。
どうせ 待つんやったらな
浩太さんの方が
どれだけ 情があるか
分からへんて! ああ!
まっ おたいに任せとき! なっ!
(清)また そがんとこで
ぼんやりして!
少しは 畑でん手伝うぎ
どがんね?
そがん ブラブラしとっぎ
いくら おとなしか福太郎でん
面白うはなか。
そろそろ 田植えも
始まっとじゃけんね。
せめて 食いぶちぐらいは
働かんば!
(竜三)分かっとう!
なにが分かっとうね!
おしんが
くだらん手紙ば よこしてから
お前 ろくに 畑さいも出んし
干拓の仕事も
人任せて言うじゃね。
竜! お前 まさか
迷うとっとじゃなかろうね?
おしんの口車に乗って
魚屋のおやじに なろうてん…。
そがん 情けなか事だけは…。
オイが
どがん かい性のなか男でん
おしんが行商して やっと貯めた
金で 店ば開くちゅうとに
亭主面して乗り込める道理んなか。
そがん事の でくっない
こがんうちでん
とっくに おん出とっさい!
オイにでんが
男の意地っちゅうもんのある。
オイの力で
オイの土地ば 持って
おしんと雄ば 佐賀さい呼び戻す。
きっと 呼んでみせる!
(大五郎)何か~
今頃から 畑さん づっとか?
うるさかとの おっけんね
畑にでん出とった方が
ましたいね。
お清の言う事も もっともたい。
何ば考えとっとか
知らんばってん…。
お前が
煮えきらんとじゃっけんない。
おしんに 返事ば出したとか?
伊勢さへ 行くとか行かんとか
はっきりさせんば
おしんでん 困ろうが!
身の振り方でん
あっとじゃけんない。
そがん事ば いちいち
返事ば出す必要は なか!
オイの気持ちは
何度でん 書いてやっとっけん。
干拓の成功して
オイたちの土地の出来っぎ
本家に頼っ事も要らん。
そん時には 戻ってこいって
言うてあったい。
たとえ
魚屋の店 持ったけんちゅうて
オイが行くつもりのなか事は
よう 承知しとっはずたい。
今更 何も言うてやる事はなか。
竜三 お前が おしんのとこさい
行く気のなかとない
おしんの事は
もう 諦めた方がよか。
親父まで そがん事ば…。
干拓てん あと何年かかっぎ
畑ば作らるっごとなっか。
そがんもんば
待っとったっちゃ…。
親父は 10年て言うたろうが!
もう4年 たった。
あと6年 たてば…。
その間 おしんば
一人で待たせとくとか?
そいじゃ 夫婦とは言えんばい!
おしんは おしん お前は お前で
別に歩く事ば 考えた方がよか。
お前が おしんば
呼び戻すごとなるまで
一人で待たせておくてん
おしんが かわいそうか!
お前でん ほんに
男盛りじゃろうが!
何があったっちゃ
オイは おしんと雄ば待つ!
それで よか!
おしんは どがんなっとか?
おしんでんが待つて
言うてくいたたいね!
たとえ 離れて暮らしたっちゃ
心さえ通い合うとっぎ
立派か夫婦たいね。
そんない お前が 伊勢さ行け!
妙な意地ば張らんで お前が
おしんのとこへ行けばよか!
親父の指図は 受けん!
親父でんが 財産ば つぎ込んで
干拓に
夢ば懸けとっじゃろうもん!
オイに 干拓ば やめろてん
言えた義理やなか!
オイでんが 雄の父親たい。
雄に 土地ば残してやりたか。
雄ば 魚屋の伜なんかで
終わらしとうはなか。
おしんに 返事ば出しとくたい。
「伊勢さん行く気はなか」て
よう 書いとくたい!
♬~
≪(ひさ)もう 寝たんか?
いいえ。
佐賀から
手紙が来たっていうのに
おたいに
何も話してくれんよってに…。
すみません。
やっぱり
こっちに来るつもりないって…。
そんな事やろうと思った。
ほんで あんたと別れたいって
言うのんか?
いいえ。 佐賀に 私たちを
呼び戻す事ができるまで
待ってほしいって…。
よう そんな勝手な事を!
アホらしい!
いや でもね
あの人も 一生懸命なんですよ
私たち 呼び戻すために…。
その気持ちだけは
踏みにじらないようにしないと。
あんたも
因果な旦那 持ったもんやな。
もう ホントに 一度 思い込んだら
頑固な人なんです。
♬~
相変わらず
おしんの行商は 続けられた。
日増しに成長する雄と
毎日 一緒に歩きながら
おしんは 母親の幸せを しみじみ
知るようにもなっていた。
そして その年の夏も
また 過ぎようとしていた。
いや~ もう
途中 降られてしまって…。
今夜は 荒れそうですね。
さっき
ラジオで言うとったそうやけどな
今度の嵐は 大きいそうやで。
九州では
方々に 被害が出とるんやて。
長崎や佐賀ではな
ちょうど 満潮と重なって
堤防が破れたとこは あんた
大水に見舞われとるんやて!
あっ あんたの旦那の実家
大丈夫やろかな?
まあな 佐賀は広いよってに
心配ないやろうと思うけど…。
♬~
♬~
(テーマ音楽)
♬~
台風の一夜が明けると
初秋の青空であった。
佐賀の台風の被害を案じて
眠れなかった おしんも
明るい朝に 胸騒ぎも
嘘のように消えてしまっていた。
(おしん)毎度~! 魚屋です!
(よし)やっぱり 来てくれたな~。
(さだ)なんぼなんでも
今日は 来やへんやろって
話しとったとこやに。
いや~ もう しけでね
漁は なかったんですけども
みそ漬けと佃煮なら。
助かるわ~。
今日 親戚が来るよってに
どないしよう思ってたんや。
おしんさんの みそ漬けなら
立派なもんやろ。
みそ漬けならね
アワビとタイと それから イカ。
ちょっと これ アワビの みそ漬け?
はい。
そのまま 召し上がれるんです。
珍しいな。 これ もろうとくわ。
ありがとうございます。
一度 召し上がってみて下さい。
いやいや おしんさんのもんなら
間違いないわ!
昨夜は よう荒れたやないか。
おしんさんとこ 何ともなかった?
おかげさまで。 でも 夜中じゅう
若い衆は みんな
堤防 見て回ってましたけど。
九州は えらかったんやてな~。
おしんさん 新聞 見やへんだ?
いいえ。
(さだ)あんた 佐賀でも長崎でも
大水で ようけ死んだんやって。
堤防が切れてしもうてさな
川が あふれたらしいな。
そうやがな。
私ら 台風は慣れてるけど
さすが 昨夜は 怖うて
よう寝やんだわ。
あんた どないしてた?
(さだ)震っとったが~。 ハハハハハ!
(戸が開く音)
(清)あっ!
(恒子)お父さんや竜三さんは?
まだ 戻ってこんとよ! 何じゃい
あったとじゃ なかろうかね?
田んぼの 水につかってしもうて
せっかく実った稲の みんな…。
やっぱり やられたと?
今 水ば はかすっぎ
せめて うちで食べる分ぐらいは
助かっかもしれんて…。
お父さんにも竜三さんにも
手伝うてもらいたかとです!
お母さんにも!
帰ってこんもん
どがんしゅうでんなか!
昨夜の あがん嵐ん中 「干拓ば
見回りに行く」て言うけん
あたいは 止めたたいね!
そいば聞かんで!
お母さんだけでん すぐに!
こんまま ほっとくぎ
うちで食ぶっ米でん
助からんとですけん!
稲どころじゃなか!
誰じゃい頼んで
お父さんと竜三ば捜しに…。
お母さん お願いです!
田んぼば 手伝うてもらわんぎ!
お父さんと竜三ば!
そがん事 言わんで!
(清)竜!
(恒子)お父さん!
2人とも 無事じゃったとね!
どがい 心配したこっちゃい!
何ね 2人とも泥まみれになって!
お父さん!
うちの人が
すぐ 田んぼさい来てくれて!
2人とも
昨夜から 何も食べとらんとよ!
せめて 腹ごしらえば 先にして!
そがん のんきな事ば
言いよっ時じゃ
なかでしょうもん!
(大五郎)稲は 諦めんば
しかたんなか…。
今 見てきたばってん
一遍 水に つかったもんは
どがんしゅうでんなか…。
お父さん!
さあ。 竜三 体ば 早う洗え!
(泣き声)
竜?
(号泣)
干拓途中のもんは みんな
流されてしもうたたいね。
竜の組も?
ああ。
一番 台風の激しか時
ちょうど 満潮と出会うての…。
(竜三)オイは 佐賀で 4年間
何のために 辛抱ばしとったか!
これで 何もかんも
もう おしまいたい!
♬~
(福太郎)小作の田も みんな
やられてしもうて
今年は 年貢米も取れんたい。
というて
小作ば 見殺しにもでけん。
どがんして 一年ば
やっていくぎ よかこっちゃい…。
いざってなっぎ
蔵のもんでん 売って…。
まだ 金になる 書画 骨董も
残っとっじゃろうが…。
天災たい。
誰ば恨む訳にでんいかん。
干拓てんなんてに
無駄な金ば使わんぎ
こがん事のあったっちゃ
困っごたっ事は なかったとこれ。
夢んごたっ事に入れ揚げて
あげくに
元も子も のうなってしもうて…。
あんたは それで
よかかもしれんばってん
竜は 浮かばれんじゃ
なかですか。
震災で ここさい
引き揚げてきてから 4年間
あんたに引っ張り込まれて 干拓に
打ち込んできたて言うとこれ!
(福太郎)そがんさい! ろくに
畑も田んぼも手伝わんで…。
それでん 竜三の希望ば
かなえてやりたかて思うたけん
オイでんが 黙って見てきたと!
こがん事になっとない
干拓てん反対した方が
うちのためにも 竜三のためにも
よかったたいね!
まあ こいで お父さんも竜三も
目の覚めたとじゃろう。
もう 懲りたとじゃろう。
まあ こいからは 真面目に
福太郎の右腕になって
働いてくるっ気持ちになっとない
今度の事も 無駄じゃなか。
お父さんにも竜三にも
心ば 入れ替えてもろうて
来年の秋には
また よか米の取るっごと
精 出してもらわんば。
よかね? 竜!
二度と 干拓てん ふうけた事に
手 出すぎいかんばい!
♬~
お母さん!
今日から
あたいも 畑さい出るけんね
後片づけば手伝わんぎ…。
竜三さんが!
何ね?
今 起きたぎ こいの机ん上に…。
(竜三)「長い間
お世話になりました。
勝手な事ばかりして
ご迷惑をおかけした事を
心から お詫びします。
私にとって 干拓は 男子一生の
夢を懸けた仕事でした。
それが 無残にも
破れてしまった今
これ以上 佐賀にいる理由も
無くなりました。
もう一度 新しく出直すつもりで
佐賀を出ます。
どうか 私の事は ご放念下さい。
いつか 一人で歩く道を見つけた時
お便り致します。
お父さんも お母さんも
お体だけは
お大事になさって下さい。
兄さん 姉さんには
心から感謝しています。
よろしく
お伝え下さいますよう。
竜三。 父上様 母上様」。
お母さん…。
ふうけ者が!
この不景気に
どこさん行くて言うとか!
何ばして食べていくと言うとか!
竜~! 竜~!
(おしん 雄)♬「夕焼小焼で」
♬「日が暮れて」
♬「山のお寺の鐘がなる」
♬「お手々つないで 皆 かえろ」
♬「から…」
あっ…。
どうして逃げるの?
お別れに来たと。
「お別れ」って?
おしんと雄の姿ば
一目 見たかったと!
おしんと雄は
楽しそうに 歌ば歌うとった。
そいば見ただけで
もう 思い残す事は なか。
どこへでも行かるったい。
あんた…。
下関から関釜連絡船に乗って…。
そこから満州までは 汽車たい。
大連まで行けば 小学校の時の
友達が おっとやっけん。
満州!?
満州は 新天地たい。
日本は 不景気で
仕事どころか 労働者が
どんどん 首ば切られとう。
ばってん 満州は これから開ける。
どがん仕事でん あったいね。
ただ向こうへ行ったら いつ
こっち 帰ってこれるか分からん。
そがん思うたら
一目 おしんと雄に会いとうて…。
今は おしんにも雄にも
合わせる顔が なか…。
ばってん いつか 必ず迎えに来る。
それまで 雄ば頼む…。
待って! 待って! 待ってよ!
どうして 満州なんか
行かなきゃいけないの!?
もう 何を話しても無駄たい!
こがんするより
しかたがなかとやっけん!
どうして このまま
別れなきゃいけないのよ!
ねえ 雄 抱いてやって。 雄。
あんた 父親でしょう!
会えば つらいだけたい!
心が残るだけやってん!
あんた…。
向こうに着いたら
様子ば知らすっけん! なっ!
♬~
(雄)父ちゃん!
父ちゃん!
雄!
雄…。
(ひさ)おしんちゃん…。
田倉です…。
雄坊の お父さんかいな?
♬~