夢見る少女③
ヤベー本性露呈編。
ヒロイン()の本領発揮。まともな人間なら王族狙いつつ、ハーレムやろうなんて思いません。
結構物語にほころびがありますが無理やりイベントを起こして、好感度をゴリ上げて誤魔化していますが…
ある日、ジブリールがいそいそと喜色を隠そうともせずどこかへ向かっているという情報を入手した。
どうやら、友人が来ているらしい。
ジブリールが転生者だと睨んだレナリアは、ジブリールの行動を監視するようにした。といっても、ジブリールと同じクラスにいる自分の取り巻きに何か異変がないか報告させるだけである。
ジブリールとよくいる彼女の取り巻き連中は、ジブリールがあんなに喜ばしそうに話すならさぞ素晴らしい相手なのだろうと噂をしていた。
社交界の華と呼ばれるジブリールを憧憬と羨望の眼差しを注ぐ人間は少なくない。上級生、下級生問わず爵位関係なくその美貌と洗練されたセンスに釘付けだった。また淑女としての振る舞いも華麗で優美。教師たちや周りからの評価も良く、成績も優秀だった。
ジブリールには隙がない。でもその友人とやらは? 調べさせたが、あまり情報は上がってこなかった。だが、家柄は不明だが裕福そうであるらしい。馬車は高級なローズブランドの一等馬車。纏う白いドレスも、ローズブランドの最新ドレスだったという。従僕とメイドを連れているという情報まで入手したが、肝心な情報は特定できない。
そもそも、レナリアですら滅多に手に入れられないドレスを、モブ風情が着ているという事実にカチンときた。勝手な逆恨みだが、それだけローズブランドは人気で品薄だ。ルーカスたちに強請ってもなかなか手に入らないのだ。
「レナリア、そんな怒らないで。すぐに調べてくるから」
使えない下っ端に苛立っていると、グレアムが下手なフォローを入れてくる。
すぐじゃ遅い。今この場で欲しいのだ。
金の瞳が心配げにこちらを見ているので、苛立ちを押し隠してヒロインを演じる。
「怒ってないわ。ただ、心配なだけよ。ジブリールは私とあまり仲良くしてくださらないから」
「そう? そうだ、今ちょうど薔薇園が見頃なんだ。一緒に見に行かないか?」
「薔薇園?」
正直、花は綺麗だと思うがレナリアはそういうものより宝石とかドレスのほうが好きだ。
特に値が張る豪奢なものは良い。それだけで羨望の的になる。キラキラと豪華に自分を飾り立ててくれて、気分が高揚する。
花はすぐ枯れるし、虫がいることもあるし面倒くさいのだ。だが『レナリア』としては、誘いを断るのは不自然だろう。
「嬉しい! 誘ってくれてありがとう!」
満面の笑みを浮かべれば、グレアムは相好を崩しレナリアの返事に頷いた。
これでも宰相子息だし、キープすべきだろう。ルーカスより周囲にうるさいのは少ないし、色々と頼みごとがしやすいのだ。
にこにこと愛想を振りまき続けるのはかなか疲れるが、宰相子息という立場のプレッシャーを感じているらしいグレアムは小まめに機嫌を取っておいた方がいい。ルーカス攻略の安泰に、一定のグレアムやレオルドの好感度は必要だ。
折角ここまでレナリアのハーレムを作ったのだから、メイン攻略はルーカスでも他もちゃんとキープしておかなければならない。
結婚した後も、贅沢しながらいい男たちを侍らせたい。
レナリアは選ばれた存在なのだから、それ相応の男たちが傅くべきなのだ。その辺の有象無象と一緒にされるのは癪に障る。
サンディス王国には後宮がある。以前の王たちは、愛人や寵姫、側妃たちを溢れるほどそこに住まわせていたという。今の王は二人の王妃のみで、がら空きだという。ならば、次期王太子妃のレナリアが有効活用しても文句は言えまい。
乙女ゲームだけあって、主要攻略キャラはもちろんだが特定条件を満たせば攻略できる通称裏キャラも美形ぞろいだ。そして、意外とモブの中にも美形がいる。
ジュリアスがいたのだから、他も期待できるだろう。
今からでも十分楽しみだ。
そんな妄想に耽っていると、薔薇園についた。
誘われるままに来たのは迷路になっている薔薇の生垣。確かに色鮮やかに様々な薔薇が咲き誇っているが、レナリアにとってそれ以上でもそれ以下でもない。内心は「だからなに?」である。一目見れば十分だ。
しかし、ヒロインらしく殊更大袈裟に感激させて見せた。満足そうに笑みを浮かべるグレアムを確認し、内心ため息をついた。ヒロインも楽じゃない。
その中にあるガゼボで、グレアムから、レナリアと瞳の色と同じ深い青のネックレスを貰った。宝石が小さいのが気になるがローズブランドの立派な化粧箱に入っているので、高級品だろう。間違いなくデザインも可愛かった。
「綺麗…いいの? こんな素敵なものを貰って…」
「ああ。君に似合うと思って」
グレアムは完全に落ちたな、と内心ほくそえみながら彼の胸に飛び込む。
だが、すぐに恥ずかしがって距離を取って見せるとグレアムはすぐさま強く引き寄せてきた。胸に押し付けられるように倒れこんだレナリア。それ以上抵抗ないとわかると、おずおずと背中に腕を回してきたグレアムは、ゆっくりベンチにレナリアの体を横たえてくる。
頬にかかるサラサラな水色の髪、金の瞳が男の欲望で滾っている。
おや、と思ったが――まあいいか。午後の授業はフィンドールの受け持つ教科はない。最近ルーカスは少し苛々しているので、甘い空気にならずご無沙汰だった。レナリアと結婚しようと頑張っているようなのだが、周囲が納得しないという。
「だ、だめだよ、グレアム…」
「君が殿下と思い合っているのは知っている。でも…っ」
もともとグレアムは愛人予定の一人だ。知的な美形で、ジュリアスほどにないにせよかなり好みであるのだ。ルーカスと並べると、タイプが違って一層いい。
それにルーカスが王位をついだとなれば、自動的にグレアムが宰相となる。呼び寄せやすいし、色々頼みやすい。
主君の思う相手に横恋慕しているというのに、葛藤して悩まし気に端正な顔立ちを歪めるグレアム。モノクルがそっと外されややあって唇が重なり、衣擦れが落ちる。
背徳の好意にレナリアはぞくぞくした。最初はルーカスにあげたのだから、ちょっとくらいつまみ食いしてもばれないだろう。
だが、行為の途中で使用人らしき老人に追い出された。
かなり憤ったが、学校に報告するといわれれば二人とも黙るしかない。謹慎で済めばいいが、へたすれば退学だ。これがルーカスにばれてしまえば、レナリアもグレアムもただでは済まないのだから。
だが、王族用の使っているサロンルームに戻れば、平常通りのルーカスがいたのでひそかに安堵した。もし、あのまま行為を続けていれば、ルーカスがジョシュアや護衛の騎士にレナリアたちを捜索させ、鉢合わせする羽目になっていたかもしれない。
そんな動揺を隠しながら、笑みを作ってルーカスに歩み寄る。ルーカスは気づく様子もなくあるものをとりだした。前に頼んだ、ルーカス名義のお茶会の紹介状を渡された。
これでキシュタリアやミカエリスに声をかける口実ができた。
以前、アルベルティーナを貶すなといわれたが、事実を言って何が悪いのだろう。引きこもっていようが、あのとんでもない悪女が改心するとは思えない。ミカエリスやジブリールまで同意するし、訳が分からない。悪女を悪女といって何が悪いのだろうか。いくら身分が高貴で家柄が良くてもあればとんだ極悪非道のアバズレだ。騙されているのなら、傷が浅いうちに忠告してあげているレナリアの親切がまだ分からないようだ。
キシュタリアがいくら嫌がって授業や学校行事関連以外に声をかけるなとは言っても、王族からの招待状は断れないだろう。
今までだって、何度かそうやって呼び出してきたのだから。
だが、レナリアの期待はあっさり打ち砕かれた。
誘いはいつもよりさらに手厳しく突っぱねられた。
誰か後ろに――よりによって女性を庇っているらしいキシュタリアは、いつにも増して高圧的な空気を纏って牽制してきた。
しかし、後ろに庇う女性に対しては蜜のように甘い声で囁いている。そのほんの少し見える姿は、蕩けそうなほど甘く熱を帯びていた。
あんな眼差し、一度たりともレナリアは注がれたことがない。あの声があれほど甘く柔らかく響くのを聞いたことがない。
その女はミカエリスにも随分近いようだが、それを気にせず見たことの無いような笑みと柔らかな声で始終話しかけている。あの女しか見えていないような程だった。
まるで、あの女がヒロインのよう。
『君に恋して』のヒロインは、レナリア・ダチェス。自分のみであり、他はどうあがいてもわき役だ。麗しい貴公子たちに愛されるのも、睦言を囁かれ、心を注がれるのもレナリア一人でなければならない。
置いていかれたレナリアはふつふつと、怒りがわいてきた。
どこの田舎娘かは知らないが、本当のヒロインを虚仮にしたらどうなるか思い知らせてやろう――きっと、あの女がボロボロになればキシュタリアやミカエリス、ジブリールだってレナリアに慈悲を請いに来るだろう。助けてくださいと縋るはずだ。
あの普段気が強くて鼻持ちならないジブリールも、あの女が随分と大切らしい。兄のミカエリスに近づく女は容赦なく、だが令嬢らしく優雅に排除しにかかるジブリールが、その女に対してだけは微塵も素振りすら見せなかった。
ああ、楽しくなりそう――レナリアはうっそりと仄暗い笑みを浮かべる。
そのためには、ルーカスに動いてもらわなくては。
泣いて縋ったルーカスの動きは早かった。
早々に周りに命令を出して、すぐさま女の居場所を探り、捕まえてくるように要請した。騎士たちが止めようとしたが、怒るルーカスを押さえることはできない。それどころか、レナリアに心酔しているグレアムやカイン、レオルドたちはルーカスに味方した。
ルーカスたちに慰められるふりをして、腹の中では笑いが止まらなかった。
「すぐ見つけてやるからな、レナリア」
だから泣くな、と優しい声でレナリアを慈しむルーカス。
その胸に縋り付くふりをして、吊り上がる口角を誤魔化した。途中でばれて疑念を抱かせてしまえば、折角の楽しい祭りが止まってしまう。
レナリアの邪魔をする小物の脇役女は、レナリアが沢山の異性に愛される為の極上のスパイスになれるのだ。名誉なことである。数日位は名前を覚えてやってもいいかもしれない。
「殿下、それらしき馬車が門へ向かっていると」
「止めさせろ! その女を引きずり出せ!」
「殿下、お待ちください!」
漸く入ってきた情報に意気揚々と、その女のいるという馬車へ向かうルーカス。
それを留めようとカレラスという騎士たちが慌てて追いかける。
どうせ止まらない。ルーカスは王族で、王位継承権第一位の保持者だ。彼を本当に止められる人間など、学園内に存在しない――レナリア以外には。
そのレナリアが懇願して、ルーカスは行動をしているのだ。レナリアを虚仮にした女は、徹底的に恥を晒して、惨めにレナリアの足元にはいつくばって許しを請うしかもはや道はない。
一人になったサロンで、すっと涙を引かせたレナリアは押さえられない口角のゆがみに口を隠す。やはりルーカスはレナリアの思い通りに動いてくれた。
ああ、なんて簡単なんだろう! やはり私はヒロインなのだから!
悪辣な笑みのままレナリアは勝利の気配に酔いしれる。
その有様は、まるで彼女が疎む『悪役令嬢アルベルティーナ』によく似た言動だと気づかずに。
何をしても許されると欲望に溺れた姿は、誰よりも悍ましい。
まさにレナリア・ダチェスは学園の悪の華だった。
おそらく次でラストだと思われます。
今回学園のカーニバルシーンまでいく予定でしたが、思ったよ理展開が進みませんでした。
アホの子視点のアルベルに戻りたい…
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