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入学前の物語(小説)・・・10/11更新

第1章4節 ダンピールの魔女メリッサ

「あら・・・遅かったみたいね。堕ちゃった・・・?」

 生まれ変わったような昂揚感を覚え、後から後から湧いてくる力のはけ口を探していた私のところに現れたのは、先ほど轟音と共に広間に侵入してきたスーツの女性。

「随分と思い切ったイメチェンねぇ・・・なんて言ってる場合じゃないのか。」

 闇堕ちした私の瞳は一層赤く、肌は青白く、髪色は茶色からピンクブロンドへ変化していた。そんな私に彼女は言った。

「まだ間に合うわ。力に身体を開け渡さないで」

 それまでのへらへらした態度と一線を画す毅然とした口調。私を説得しようとしているようだった。

「クスクス・・・おねーさんだぁれ?あ、わかった!ゆすらのこと殺しに来たですかぁ?ちょうどいいですぅ。ゆすらもこの力・・・試してみたいと思ってたですよぉ。」

 もちろん、その時の私は聞く耳を持たなかった。そればかりか、血のように赤い魔力を両手に集め、メリッサに襲いかかった。

「もう・・・仕方のない子ね。」

 メリッサはひらりと躱して、スレイヤーカードを一振り、乗馬鞭のようなものを取り出す。

「なぁに?それ~。そんなものでゆすらが殺せるですかぁ?」

「どうかしらね。やってみるわ。」

 メリッサは、次の瞬間、人間業とは思えない勢いで私を蹴りつけ、バックステップをとった。同時に、乗馬鞭を小刻みに動かしながら何事かの呪文を唱え始める。

「いたたぁ・・・おねーさんやるですねぇ。・・・んああっ!?」

 次の瞬間には、轟音が鳴り響き、落雷が私の身体を貫いていた。

「どう?魔女っ娘メリッサとは私のことよ?」

 ふざけた口調とは裏腹に、メリッサの目は笑っていなかった。魔法の矢や氷の魔法、更には打撃を容赦なく繰り出す彼女の前に、私の体力は容赦なく削られていった。

 一方で、私の攻撃も確かに彼女をとらえているはずだった。なのにメリッサは倒れない。すると、

「あなた・・・名前は?」

 不意に彼女は、ふらつく私に対して、そんな質問を投げかけてきた。

「まさか忘れたわけじゃないでしょう?」

「・・・ゆす・・ら。それがどうしたですかぁ!!」

 私は隙をついて懐に飛び込む。しかし、読まれていたのか、寸でのところでひらりと躱された。

「そう。ゆすら。良い名前ね。ゆすら。私の妹にならない?そう、私たちは今日から家族。そういうのはどう?」

 メリッサ放った一言はこれまでのどんな攻撃よりも強烈に私の心を揺すぶった。ある種の痛みと温かみを伴った衝撃に私はたじろいでしまった。

「かぞ・・・く?」

「そう・・・だから私はここであなたを死なせはしない。」

 気が付くとメリッサの青い瞳は吸血鬼のような赤色に染まっていた。

「大丈夫……絶対助けるわ。寂しい思いはさせないから!」

 叫びとともに放たれたのは赤く染まった逆十字。

 私は、祈りを乗せた背教の一撃に崩れ落ちた。
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キャラクター名
山岸・山桜桃(やまぎし・ゆすら)
性別
女性
ルーツ
ダンピール
ポテンシャル
魔法使い
設定詳細
ヴァンパイアを信奉する両親が生贄として捧げたために、吸血鬼になった少女。人間に戻る方法を必死に探し求めている。吸血鬼の赤い瞳を嫌い、魔法で茶色に見せかけている。純粋でうぶな性格だが、自分を眷属にしたヴァンパイアの影響で、異性の近くにいるとイケナイ妄想で頭が一杯になる。そのため、男性との接触を避けることが多く、男性恐怖症と誤解されやすい。普段は抑えているが、理性が限界に達すると、瞳が赤く染まり、妄想に突き動かされて大胆な行動に出てしまう。逆に、女性に対する接し方が百合っぽいのは師匠であるメリッサの影響である。甘いものとトマトジュースが好き。