入学前の物語(小説)・・・10/11更新
第1章3節 闇堕ち
「はあっ・・・はあっ・・・。」
私は出口がどちらかも分からないまま、通路の続くままに走り続けていた。
久しぶりに走ったにも関わらず、身体は軽く、信じられないほどに速く進む。自分の身体が、人間のそれではなくなったのをまざまざと思い知り、胸の奥がズキリと痛んだ。
私はどうして逃げているんだろう・・・何度も繰り返し自問自答した。懸命に思い出しながら何度も。
私は屋敷に連れてこられたとき・・・伯爵に1つの願いをたて、聞き入れられた。
『血を吸って伯爵様の人形にするなら・・・吸血前の記憶を全て消してください・・・。』
『そんなことは容易い。』
そう言って伯爵は私の血を吸い出し、同時に記憶も奪った。そう、私はあの日全てを忘れたはず・・・。
そこまで思い至って、私ははたと足を止めた。・・・どうして私は吸血前のことを覚えているのか・・・?
正確に言うと、どうして思い出したのかというのがふさわしいかもしれない。確かに私は忘れていた・・・少なくとも広間を後にする時には覚えていなかった。
そうか・・・と私はある可能性に思い至った。伯爵は私の記憶を一時的に封印したに過ぎなかったのだと。もしも私が逃げ出そうとすれば思い出す・・・といった具合に。
次々と思い出されていく記憶・・・。幸せそうな家族。その中にいる自分。楽しかった日々。逆十字の祭壇・・・。
そこまで思い出して、私は身震いした。自分は何か不吉なことを思い出そうとしているのだと。それこそ、伯爵に頼んで消してしまいたいほどの記憶を。
「いやぁっ!!!」
私は再び駆け出そうとした。が、私はそこで見てしまった。鏡に映った自分の姿を。自分の赤い瞳を。
それを皮切りに、全ての記憶が1つの線につながった。私はごく普通の家庭に生まれて、両親に愛されながら育った・・・そう思っていたのは私だけだった。
「はは・・・ひどいよ。パパ。ママ。」
小学5年生になったばかりのある日、両親は突然深夜に私を揺り起こした。伯爵様のところへ出かけると言い出して。その時の無表情な父親の顔がとても恐ろしかったのを覚えている。突然のことに抵抗した私を、両親は無理やり着替えさせ、素肌に黒い布1枚だけをまとった姿にさせた。
道すがら、両親は私の質問に何1つ答えなかった。伯爵が何者なのかも、どこに行くのかも。
そうして、町はずれの荒れ屋敷に辿り着いた後、母親は言った。
『ゆーちゃん、よかったわねぇ。ゆーちゃんは今日から伯爵様のお嫁さんになるのよ。』
あの時の私にはどういう意味だか分からなかった。ただただ両親の豹変が恐ろしく、泣いていることしかできなかった。
『山桜桃、さようならだ。伯爵様にお前を捧げることが出来て私たちはとても誇らしい。』
私の身柄を引き取ったのは青白い肌の男だった。赤い瞳をした男だった。
そして、回想から我に返った時、目の前の鏡に映っていたのは赤い瞳をした自分だった。
私ハ伯爵ヘノ捧ゲモノトシテ育テラレタノ・・・?
私は繋ぎとめてきた自我を手放し、闇堕ちした。
私は出口がどちらかも分からないまま、通路の続くままに走り続けていた。
久しぶりに走ったにも関わらず、身体は軽く、信じられないほどに速く進む。自分の身体が、人間のそれではなくなったのをまざまざと思い知り、胸の奥がズキリと痛んだ。
私はどうして逃げているんだろう・・・何度も繰り返し自問自答した。懸命に思い出しながら何度も。
私は屋敷に連れてこられたとき・・・伯爵に1つの願いをたて、聞き入れられた。
『血を吸って伯爵様の人形にするなら・・・吸血前の記憶を全て消してください・・・。』
『そんなことは容易い。』
そう言って伯爵は私の血を吸い出し、同時に記憶も奪った。そう、私はあの日全てを忘れたはず・・・。
そこまで思い至って、私ははたと足を止めた。・・・どうして私は吸血前のことを覚えているのか・・・?
正確に言うと、どうして思い出したのかというのがふさわしいかもしれない。確かに私は忘れていた・・・少なくとも広間を後にする時には覚えていなかった。
そうか・・・と私はある可能性に思い至った。伯爵は私の記憶を一時的に封印したに過ぎなかったのだと。もしも私が逃げ出そうとすれば思い出す・・・といった具合に。
次々と思い出されていく記憶・・・。幸せそうな家族。その中にいる自分。楽しかった日々。逆十字の祭壇・・・。
そこまで思い出して、私は身震いした。自分は何か不吉なことを思い出そうとしているのだと。それこそ、伯爵に頼んで消してしまいたいほどの記憶を。
「いやぁっ!!!」
私は再び駆け出そうとした。が、私はそこで見てしまった。鏡に映った自分の姿を。自分の赤い瞳を。
それを皮切りに、全ての記憶が1つの線につながった。私はごく普通の家庭に生まれて、両親に愛されながら育った・・・そう思っていたのは私だけだった。
「はは・・・ひどいよ。パパ。ママ。」
小学5年生になったばかりのある日、両親は突然深夜に私を揺り起こした。伯爵様のところへ出かけると言い出して。その時の無表情な父親の顔がとても恐ろしかったのを覚えている。突然のことに抵抗した私を、両親は無理やり着替えさせ、素肌に黒い布1枚だけをまとった姿にさせた。
道すがら、両親は私の質問に何1つ答えなかった。伯爵が何者なのかも、どこに行くのかも。
そうして、町はずれの荒れ屋敷に辿り着いた後、母親は言った。
『ゆーちゃん、よかったわねぇ。ゆーちゃんは今日から伯爵様のお嫁さんになるのよ。』
あの時の私にはどういう意味だか分からなかった。ただただ両親の豹変が恐ろしく、泣いていることしかできなかった。
『山桜桃、さようならだ。伯爵様にお前を捧げることが出来て私たちはとても誇らしい。』
私の身柄を引き取ったのは青白い肌の男だった。赤い瞳をした男だった。
そして、回想から我に返った時、目の前の鏡に映っていたのは赤い瞳をした自分だった。
私ハ伯爵ヘノ捧ゲモノトシテ育テラレタノ・・・?
私は繋ぎとめてきた自我を手放し、闇堕ちした。
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- 拝啓 師匠へ(手紙形式の近況報告)・・・9/20更新
- 学園生活の軌跡・・・10/2更新
- イメージボイス(CV:月城・結祈さん)・・・9/21追加
- 掲示板
- キャラクター名
- 山岸・山桜桃(やまぎし・ゆすら)
- 性別
- 女性
- ルーツ
- ダンピール
- ポテンシャル
- 魔法使い
- 設定詳細
- ヴァンパイアを信奉する両親が生贄として捧げたために、吸血鬼になった少女。人間に戻る方法を必死に探し求めている。吸血鬼の赤い瞳を嫌い、魔法で茶色に見せかけている。純粋でうぶな性格だが、自分を眷属にしたヴァンパイアの影響で、異性の近くにいるとイケナイ妄想で頭が一杯になる。そのため、男性との接触を避けることが多く、男性恐怖症と誤解されやすい。普段は抑えているが、理性が限界に達すると、瞳が赤く染まり、妄想に突き動かされて大胆な行動に出てしまう。逆に、女性に対する接し方が百合っぽいのは師匠であるメリッサの影響である。甘いものとトマトジュースが好き。