入学前の物語(小説)・・・10/11更新
第2章2節 意外な闇堕ちのトリガー(2)
・・・という騒動の結果、捕まった私は、冒頭のごとく師匠と対峙していた。・・・縛られた状態で。
私を縛りつけた縄は、魔力で強化されているらしく、私が暴れようとしてもビクともしなかった。・・・もはやそんなことは私にとってどうでもよかったけれど。この異常事態の前では。
「半闇堕ちってやつかしらね。長ったらしいのが嫌だから私は半堕ちって呼んでるけど・・・。」
師匠がつぶやく。
「まぁ、今回の場合は堕ちが甘いみたいだから四半堕ちってとこかしらね。そんな言葉ないけどね。」
私はただただ首を傾げるばかり。
「あの・・・どうしてそんなことになったですか?」
拘束されている間に少し冷静になった私は、やっとのことで口を開いた。師匠は半眼でこちらを見ながら、
「聞きたい?」
と問う。私がこくりと頷くと、師匠の説明が始まった。
師匠が話してくれたことを掻い摘んでまとめると、以下のようになる。
まずは、吸血鬼化と受け継がれる特徴に関して。ヴァンパイアの吸血を受け、眷属にさせられた人間は、その主人にあたる吸血鬼の特徴を受け継ぎやすいらしい。絆で結ばれた人間の吸血鬼化による感染の場合も、同様の事態が起こる。ただし、闇堕ちの際の状況や侵食の度合いによって、その特徴の発現度合いは異なる。
次に、ヴァンパイアが眷属を増やす理由に関して。これについては、様々な理由があるようで、単純に勢力拡大を目的とする場合やパートナーを作ろうとする場合など様々。伯爵の場合は後者に該当するが、今回のケースは最悪。ヴァンパイアの中でも特に好色なことで知られる伯爵は、ハーレム形成のために眷属づくりを進めたのだった。
「要するに・・・。」
そこまでの説明を終えると師匠は一旦言葉を切る。
「まぁ・・・何ていうの?思春期に入りかけのあなたに伝えるのは気の毒なんだけど・・・。ゆすらは、伯爵の特徴を色濃く受け継ぎ過ぎてしまったの。色ぼけな面も含めてね。瞳が赤くなったのは、闇堕ちによる侵食がかなり酷かった証拠。」
私は、一瞬何を言われているのか分からなかった。けれど、先ほど医者に触れられた時の感覚について、なんとなく説明がつきそうな気がした。
「・・・どうすれば、治るですか・・・?」
思わず聞いてみる。しかし、師匠の返した答えは、私が最も望まないものだった。
「治らないわ。」
私はただ項垂れた。しかし、師匠はにっこりと微笑むとこう続ける。
「・・・ただし、抑えることは出来るわ。吸血鬼の力を自分の魔力で上手く制御できるようになれば、症状は格段に落ち着くの。かつての私がそうだったようにね。未だに完全だとは言えないけど。」
その瞬間、私は何か重大な引っ掛かりを覚えて思わず師匠を見上げる。彼女はその視線に気づくと、にこりと笑ってこう言った。
「そうよ。私もあなたと同じ伯爵の眷属なの。正確には、眷属にされたのは妹なんだけれど。私は、その時の感染で吸血鬼になったの。」
私を縛りつけた縄は、魔力で強化されているらしく、私が暴れようとしてもビクともしなかった。・・・もはやそんなことは私にとってどうでもよかったけれど。この異常事態の前では。
「半闇堕ちってやつかしらね。長ったらしいのが嫌だから私は半堕ちって呼んでるけど・・・。」
師匠がつぶやく。
「まぁ、今回の場合は堕ちが甘いみたいだから四半堕ちってとこかしらね。そんな言葉ないけどね。」
私はただただ首を傾げるばかり。
「あの・・・どうしてそんなことになったですか?」
拘束されている間に少し冷静になった私は、やっとのことで口を開いた。師匠は半眼でこちらを見ながら、
「聞きたい?」
と問う。私がこくりと頷くと、師匠の説明が始まった。
師匠が話してくれたことを掻い摘んでまとめると、以下のようになる。
まずは、吸血鬼化と受け継がれる特徴に関して。ヴァンパイアの吸血を受け、眷属にさせられた人間は、その主人にあたる吸血鬼の特徴を受け継ぎやすいらしい。絆で結ばれた人間の吸血鬼化による感染の場合も、同様の事態が起こる。ただし、闇堕ちの際の状況や侵食の度合いによって、その特徴の発現度合いは異なる。
次に、ヴァンパイアが眷属を増やす理由に関して。これについては、様々な理由があるようで、単純に勢力拡大を目的とする場合やパートナーを作ろうとする場合など様々。伯爵の場合は後者に該当するが、今回のケースは最悪。ヴァンパイアの中でも特に好色なことで知られる伯爵は、ハーレム形成のために眷属づくりを進めたのだった。
「要するに・・・。」
そこまでの説明を終えると師匠は一旦言葉を切る。
「まぁ・・・何ていうの?思春期に入りかけのあなたに伝えるのは気の毒なんだけど・・・。ゆすらは、伯爵の特徴を色濃く受け継ぎ過ぎてしまったの。色ぼけな面も含めてね。瞳が赤くなったのは、闇堕ちによる侵食がかなり酷かった証拠。」
私は、一瞬何を言われているのか分からなかった。けれど、先ほど医者に触れられた時の感覚について、なんとなく説明がつきそうな気がした。
「・・・どうすれば、治るですか・・・?」
思わず聞いてみる。しかし、師匠の返した答えは、私が最も望まないものだった。
「治らないわ。」
私はただ項垂れた。しかし、師匠はにっこりと微笑むとこう続ける。
「・・・ただし、抑えることは出来るわ。吸血鬼の力を自分の魔力で上手く制御できるようになれば、症状は格段に落ち着くの。かつての私がそうだったようにね。未だに完全だとは言えないけど。」
その瞬間、私は何か重大な引っ掛かりを覚えて思わず師匠を見上げる。彼女はその視線に気づくと、にこりと笑ってこう言った。
「そうよ。私もあなたと同じ伯爵の眷属なの。正確には、眷属にされたのは妹なんだけれど。私は、その時の感染で吸血鬼になったの。」
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- はじめに・・・9/21更新
- 入学前の物語(小説)・・・10/11更新
- 拝啓 師匠へ(手紙形式の近況報告)・・・9/20更新
- 学園生活の軌跡・・・10/2更新
- イメージボイス(CV:月城・結祈さん)・・・9/21追加
- 掲示板
- キャラクター名
- 山岸・山桜桃(やまぎし・ゆすら)
- 性別
- 女性
- ルーツ
- ダンピール
- ポテンシャル
- 魔法使い
- 設定詳細
- ヴァンパイアを信奉する両親が生贄として捧げたために、吸血鬼になった少女。人間に戻る方法を必死に探し求めている。吸血鬼の赤い瞳を嫌い、魔法で茶色に見せかけている。純粋でうぶな性格だが、自分を眷属にしたヴァンパイアの影響で、異性の近くにいるとイケナイ妄想で頭が一杯になる。そのため、男性との接触を避けることが多く、男性恐怖症と誤解されやすい。普段は抑えているが、理性が限界に達すると、瞳が赤く染まり、妄想に突き動かされて大胆な行動に出てしまう。逆に、女性に対する接し方が百合っぽいのは師匠であるメリッサの影響である。甘いものとトマトジュースが好き。