SCAPIN 677による日本の定義!? MOFA(外務省)及び韓国政府の公式サイトではSF条約(サンフランシスコ講和条約)で竹島の領有は決定されたことになっている。当然ながら、MOFAは日本領、韓国政府は韓国領となった、とそれぞれが主張している。 しかし、SF条約の2(a)には竹島は言及されていない。 SF条約の草案は過去18回書かれている。その内11草案には竹島が言及されている。特に、前半分のすべての草案に言及されているということから、竹島問題は最終的には意図的に避けられたとする見解が今日では一般的になっている。これは条約文作成に直接関係した、米、英、加、豪、ニュージーランド各国との合致として見られている。その背後には、日本と韓国の竹島領有権をめぐる働きかけもあったであろう。 当然ながら、英語圏のアカデミックな分野ではSF条約で竹島の領有国が決定された、とするテオリーは見当たらない。 以前の拙記事に対して以下のようなコメントが送られてきた。 >ポツダム宣言にご執心のようですが、ポツダム宣言は基本的に降伏の条件を示したものです。ただし、一部に講和条約を先取りしているような条項がありまして、領土に関する条項はその代表的なものです。 ポツダム宣言は1945年の日本の無条件降伏書の署名により、日本と占領国との間で条約化されている。 前回でも書いたように、SF条約はこのポツダム体制の終焉を意図したものである。これはSF条約第1条で明確である。しかし、1952年のSF条約実効までの延べ8年間は日本はポツダム体制下にあった、要するに領土に関してはGHQの司令SCAPIN 677が日本の法であった、という歴史が存在する。一方韓国は、降伏3年後の1948年に独立しそれ以来一貫して竹島を自国の領土として主張してきた。 上のコメントに関してでもあるが、この韓国に対して、SCAPIN 677はともかく、加盟を拒否されたSF条約は束縛力があるのか、という法的問題が出てくる。SF条約には、加盟国以外は束縛力は無い、と明記されている。 独立以前の韓国は日本の無条件降伏以来、占領軍の管轄下に置かれた。しかし、韓国を占領した連合軍は日本に設置されたGHQとは必ずしも命令系統を共有していないように見える。 GHQ支配下の日本国領域は1946年の1月にSCAPIN 677で告示された。それはポツダム宣言第8条の実用向け解釈に他ならないようだ。以下はこの指令の主旨である。 1.・・cease exercising, or attempting to exercise, governmental or administrative authority over any area outside of Japan・・・ 以上の箇所は、GHQ支配以外の日本外地では、大日本帝国政府の行政機関は一切存在を止めること、と指令された、という意味である。大日本帝国政府の行政権の停止のみであって、領土主権は保存されている、といった奇妙な屁理屈はここでは全く意味をなさない。 SCAPIN 677が発令されたのは、1946年1月29日となっているが、その4日後には、ソ連は千島及び南樺太を自国領土に編入してしまった。私はこのソースを確認できないでいるが、これが事実なら、ソ連はSCAPIN 677を単なる行政権の一時的停止などとは見なかった証拠である。 2. Except as authorized by this Headquarters, the Imperial Japanese Government will not communicate with government officials and employees or with any other persons outside of Japan for any purpose これは非独立国となった日本の外交権の剥奪である。過去に日本は韓国から外交権を剥奪した。その史実を思い起こせば、日本人としてかなり身につまされる思いがするはずだ。 3. For the purpose of this directive, Japan is defined to include the four main islands of Japan (Hokkaido, Honshu, Kyushu and Shikoku) and the approximately 1,000 smaller adjacent islands, including the Tsushima Islands and the Ryukyu (Nansei) Islands north of 30° North Latitude (excluding Kuchinoshima Island); and excluding (a) Utsuryo (Ullung) Island, Liancourt Rocks (Take Island) and Quelpart (Saishu or Cheju) Island, (b) the Ryukyu (Nansei) Islands south of 30° North Latitude (including Kuchinoshima Island), the Izu, Nanpo, Bonin (Ogasawara) and Volcano (Kazan or Iwo) Island Groups, and all the other outlying Pacific Islands [including the Daito (Ohigashi or Oagari) Island Group, and Parece Vela (Okino-tori), Marcus (Minami-tori) and Ganges (Nakano-tori) Islands], and (c) the Kurile (Chishima) Islands, the Habomai (Hapomaze) Island Group (including Suisho, Yuri, Akiyuri, Shibotsu and Taraku Islands) and Shikotan Island. このGHQ指令の目的は、日本は主要四島(北海道、本州、九州、四国)と付属する約1000島のより小さな島々の集まりとして定義されるということである。 除外される小島は、 (a)鬱陵、竹島岩礁、済州島 (b)琉球諸島、・・・ (c)千島列島、歯舞諸島及色丹島。 となっている。 これは明らかにポツダム8条の実施を目的とした布告である。 4.以下はポツダム8条に該当しない、すなわち日本の主要四島を除く小島でない地域である。 a) all Pacific Islands seized or occupied under mandate or otherwise by Japan since the beginning of the World War in 1914, (b) Manchuria, Formosa and the Pescadores, (c) Korea, and (d) Karafuto 大日本帝国政府行政下にあった、南太平洋委任統治領、満州、台湾、澎湖列島、韓国、樺太は特に日本の領域外である。要するにこれらの旧日本領土は日本に返還される可能性ゼロという意である。 5.上記の日本領土の定義は占領下での原則である。これに対する修正事項は明確に告示される。 この通知以来2回修正された。竹島除外は最後まで続いた。 SF 条約では竹島は言及されていないので、条約加盟国はSCAPIN 677をそのまま引き継いだ、とも韓国側は主張している。 6. Nothing in this directive shall be construed as an indication of Allied policy relating to the ultimate determination of the minor islands referred to in Article 8 of the Potsdam Declaration. 上記の箇所がネトウヨ勢の依拠するSCAPIN 677無効説の根拠である。 ここでのポツダム8条で言及されている主要4島を除く他島の決定については、連合国側による最終的決定とみなしてはならない、と通知している。 これは日本が主権を回復する時に、正当な理由に基ずいて占領下の決定が変えられるということもあり得る、と解釈される。しかし、占領下の決定が全く変わってしまう、という可能性はまずない。理由は、そうすれば占領国側の善意と良心がイシューとなってしまうからだ。 だから、SF条約の日本の領土概要では、SCAPIN 677の日本領土の定義がほとんど継承されているが、竹島については言及されていない。過去の18草案の変遷という事実、及び締結直後に日米合同委員会が竹島を米軍爆撃演習地とする決定を下したことなどから、韓国側の一部が主張するように、SF条約はSCAPIN 677 の竹島条項をそのまま継承している、とは考えられない。 しかしながら、法的解釈については疑問が残る。 韓国は1948年、日本が占領中に独立した。当時、竹島岩礁は済州島、鬱陵島と共に日本領ではなかった、日本人はマッカーサーラインによって竹島接近さえも禁じられていたが、韓国人は竹島に自由に出入りし漁業に従事していた。それと、1905年の日本の竹島占領は、カイロ宣言の領土拡張政策下になされたという見解に立って、上の2島と共に竹島の自国領土主張をしている。これは当然であって、これを韓国人ならではの無法行為とか泥棒行為とか言って一方的に決め付ける視点、言い換えれば法的視点の欠如の方がもっと問題だと思われる。 |
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>領土主権は保存されている、といった奇妙な屁理屈……
1946年2月13日外務省黄田外務省連絡官とGHQの会談内容を、Makotoさんにご解説願いたいものです(笑)。
2014/3/20(木) 午後 6:52 [ パラン島 ]
占領下の日本には領土主権=sovereignity ありませんから、日本の定義=definition of Japanを用いています。SCAPIN677はポツダム体制下の日本領域を通告しGHQの行政範囲を示しています。
また連合国側の決定が変わるケースがあるということも告示しています。
竹島は鬱陵、済州と共に、韓国管轄の占領下にある、とGHQ側は説明しているようです。
SCAPIN 677は1952年まで法的に有効でした。
2014/3/21(金) 午後 1:14 [ chuka ]
SCAPIN677号発令から半月後に行われた黄田外務省連絡官とロッヂ大尉との会談議事録についての言及がないのだけど、興味がないからお調べにならないのでしょうか?
そう言えば以前、Ian Brownlieの説についての私の問いかけにも全く触れなかったですよね。
2014/3/21(金) 午後 5:04 [ パラン島(ネトウヨ(笑)) ]
パラン島(ネトウヨ(笑))氏
法では一般にlegal instrument=契約書、保証書、等の法的書類がまず先行します。ここではポツダム8条です。しかしこの項にはいつ該当島の決定を行うのか書いてありません。
scapin677はこれが占領中の法であること、日本の旧領土がポツダム8条およびカイロ宣言に従って解体されたことを通告しています。
ポツダム宣言では占領終結の日時については言及されていません。
このscapin677が施行中に韓国は独立。従って竹島を領土主張することは、中国やロシアの領土回復プロセスと同等と見なされます。
会見議事録の一部については、Dokto or Takeshimaで読みましたが法的イシューとなることは何も言っていません。
Brownlieの説は、他の記事、論文には今のところ引用されていませんから、イシューにはなっていない、と考えております。パラン島(ネトウヨ(笑)氏が他からの受け売りではなく、きちんと原文または正確な訳で読んで竹島の法的解釈にどう関連しているのか説明していただければ感謝です。
2014/3/21(金) 午後 11:46 [ chuka ]
韓国英語サイトばかりしか見ていらっしゃらない?貴方に、他からの受け売りなんて言われる筋合いはないと思っていますが。
Brownlieの著書『ブラウンリー国際法学』は島田征夫氏らが翻訳したものが1989年に出版されていますし、それを解説したサイトもありますよ。
『administration』と『sovereighty』の違いを理解していないのか、それとも故意に混同させているのかは知らないが、法的イシューは無いなどと逃亡しないでください。
それから、1946.2.13日本外務省行政の分離に関する会談記録で、GHQ側は『本指令に依る日本の範囲の決定は何等領土問題とは関係を有せず之は他の講和条約にて決定さるべき問題』と語っているのだが……
これもロッヂの個人的見解だから、法的イシューにはならないとでも言うのかな?
真面目に考えて下さいよ。
2014/3/22(土) 午前 4:27 [ パラン島(韓国に反する主張をする者は全てネトウヨ(笑)) ]
何か恐ろしく勘違いなさっているようですね。
Dokto or Takeshima はプロ日本のブログです。
1952年のSF条約では日本の領域の概要を述べ、竹島には言及していませんから、決定ではありません。それ以後の加盟国、(米を含めて)の行動でも明らかです。
SCAPIN677でのadministaration vs sovereignty は日本側には問題になりません。日本にはsouvereigntyがありませんでした。
国際法廷では英語が主として使われていますし、欧米の法体系を一応基準としています。ぜひ、現実認識をしっかりして欲しいものです。
2014/3/22(土) 午前 5:39 [ chuka ]