ソフトバンクのバッテリーのしたたかさに舌を巻いたのは1回表。先発・千賀の坂本勇に対する攻めを見た時である。単にこの打席、この試合だけでなく、シリーズ7戦を見据えた強烈な意図を感じたからである。
千賀はカットボールとフォークの持ち球であるが、坂本に対しては6球中、5球が球速150キロ台後半のまっすぐで、しかも、全て内角を突いている。二飛に打ち取るのだが、結果はどうでもいい。この徹底したインサイド攻めは、坂本勇は言うまでもなく、巨人の主軸の右打者、岡本、ゲレーロらの脳裏に焼きついたはずである。事実、岡本、ゲレーロはもう外角のボールに届かなくなっていた。
この千賀の「エサまき」は、ピッチャーは代わるが、2戦目以降も効果を発揮するだろう。逃げるのではなく、攻めるぞ、のメッセージ。巨人打線に意識させるだけでボディーブローのように効いてくるはずなのだ。そして、ソフトバンク投手陣は千賀の姿に勇気づいたはずである。
1勝以上の価値と差を感じた初戦であった。(本紙評論家)