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 台風19号の豪雨で中心部に大規模な浸水があった宮城県丸森町。山間部では土砂崩落の多発で道路が寸断し、集落が孤立した。町災害対策本部によると10月16日時点で、町内の道路150カ所が斜面崩壊で塞がり、41カ所で道路の路盤が崩落した。日経クロステック記者が10月15日と16日に現地に入った。

倒壊した宮城県丸森町筆甫(ひっぽ)地区内にある住宅。10月16日午前10時ごろ撮影。丸森町災害対策本部によると、筆甫地区内には斜面崩壊に巻き込まれた住宅が複数あり、1人が死亡した(写真:日経 xTECH)
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 丸森町役場などがある町の中心部に流れ込んだ水が引いたのは、大雨から3日後の10月14日。同日、警察や消防、自衛隊による住民の安否確認や被害調査、物資輸送が始まった。町は15日に罹災(りさい)証明の受け付けを開始した。10月16日時点で死者5人、行方不明者5人。しかし、土砂崩落や道路陥没などによる影響で調査は進まず、被害の全容はつかめていない。

浸水被害があった丸森町役場。浸水深が最も高い時には、入り口の階段が見えない状態だった。職員らは車で移動できず、10月11日から14日にかけて孤立状態が続いた。10月15日午後4時ごろ撮影(写真:日経 xTECH)
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10月15日午後5時ごろの丸森町中心部の様子。水が引き、住民らが片付け作業を進めていた。道路脇には泥が大量に残っている(写真:日経 xTECH)
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町中心部の水が引いた10月14日に、宮城県警察による住民の安否確認が始まった。丸森町災害対策本部は10月16日時点で、死者5人、行方不明者5人と発表した(写真:日経 xTECH)
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 なぜ街は浸水したのか。丸森町の中心部は北側を阿武隈川、南側を阿武隈川支流の新川と内川に囲まれ、西側には山がそびえる盆地状の市街地だ。現地を調査した東北大学災害科学国際研究所の森口周二准教授(地盤工学)は、阿武隈川の氾濫ではなく、山に降った雨水が市街地に集まり、排水されずにあふれる「内水氾濫」が発生したと分析する。

台風19号の影響で浸水した宮城県丸森町の中心部。北側を阿武隈川、南側を阿武隈川支流の新川と内川で囲まれ、西側には山がそびえる(写真:国土地理院)
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宮城県角田市と丸森町周辺の浸水推定段彩図。阿武隈川流域は広範囲で浸水した(資料:国土地理院)
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 「町中心部には、たまった水を阿武隈川支流の新川に吐き出す水門がある。しかし、大雨の影響で新川の水位が上昇し、市街地の地面の高さを超えたため、水門を開けることができず雨水を排水できなかった。阿武隈川の堤防が決壊していたら、より甚大な被害が生じていただろう」(森口准教授)

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