【ロンドン=篠崎健太】英議会下院は19日、英政府が欧州連合(EU)とまとめた新たなEU離脱案の採決を先送りした。「離脱関連法が成立するまで採決を保留する」という修正動議が超党派の議員団から出され、賛成多数で可決されたためだ。同日中に離脱案が承認されなかったことで、ジョンソン首相はEUに対し、離脱の期限をこれまでの10月末から延期する申請を行う法的な義務を負う。ただジョンソン氏は10月末離脱を目指す姿勢は崩しておらず、引き続き離脱案の早期採決を探る構えだ。
採決を保留する動議は、EUとの離脱合意案を英国内法に落とし込む法改正が済むまで、離脱案を採決しないという内容だ。英議会が離脱案を承認した後に法改正が間に合わず、10月末に偶発的に「合意なき離脱」となる可能性を排除するために立案された。9月にジョンソン首相に反発して与党・保守党を除名された議員らが主導した。
離脱案に先立って諮られた修正動議は、賛成322票、反対306票で可決された。ジョンソン氏は「離脱の延期はEUと交渉しない。10月末の離脱を目指して法改正の準備に着手する」と語った。
政府は離脱延期法で、19日までに議会が離脱案を承認されなければ、2020年1月末まで3カ月延ばす申請を義務付けられている。採決が保留となったことでその要件を満たした。EU加盟国が全会一致で延長を認めれば、英国は11月以降もEUにとどまることになる。
ただ、ジョンソン首相は19日、修正動議の可決後に英議会で、10月末離脱をあきらめない構えを改めて強調した。ジョンソン政権は週明けから、EUとの新たな合意に基づく離脱を国内法に落とし込む作業に着手する見通しだ。法改正の採決を通じて新離脱案への可否を問うことになる。そこで賛成多数を得られるかは見通せず、英政局やEU離脱をめぐる先行き不透明感が続く。
英国は16年6月23日の国民投票でEU離脱の是非を問い、52%対48%の僅差で離脱を選んだ。メイ前首相は18年11月にEUと離脱案をまとめたが、英議会は3度にわたり否決。離脱は当初の19年3月29日から延期された。混乱の責任を取って辞任したメイ氏から7月に首相を引き継いだジョンソン氏は「合意なき離脱」も辞さない構えをみせ、離脱案の修正に取り組んできた。