国際オリンピック委員会(IOC)の提案を受け、東京五輪のマラソンと競歩が札幌で開催される方向となった。残り三百日を切った時点での難題に、綿密な協議を重ねて取り組んでほしい。
マラソンといえば五輪の花形だ。東京五輪でも目玉の一つとなることは確実だった。それが開催都市から八百キロ以上も離れた札幌に競歩とともに変更されることが確実な情勢となり、大会関係者が戸惑うのも無理はない。そもそも真夏の五輪に東京が立候補したこと自体が間違いだった-このような声も再び聞こえてきそうだ。
九月下旬から十月上旬に中東ドーハで開催された陸上の世界選手権では、気温三〇度を超す中で行われた競歩とマラソンで棄権する選手が相次いだ。同じ酷暑の時季に開催する東京五輪に向けてIOCの危機感は頂点に達し、今回の提案につながったのだろう。
アスリートと観客の安全を考えれば、開催地の変更は無理もない。「東京」にこだわる余地は、そこにはない。高温多湿の条件を想定してここまで練習を繰り返してきた選手も、他国の選手たちと横一線で再びスタートを切るのだと、受け入れるしかない。
ただ、運営側はそうもいかない。夏に開催される北海道マラソンは市街地からスタートするため、あらためて札幌ドームのような数万人を収容できる施設を発着点としたコースを設定し、正式なマラソンコースとして認定してもらわなければならない。
また、観光シーズン真っただ中の札幌で選手や大会関係者の宿泊先を確保し、さらに観客や観光客から“ホテル難民”が出ないようにする対策も必要だろう。
既に販売したチケットの払い戻しも、女子マラソンは当日の新国立競技場で行われる他の陸上競技とのセット料金で売られており、一部払い戻しが可能かを検討することになる。
その他にも新たな施設や輸送などにかかる膨大な費用をIOC、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会、札幌市がどのような比率で負担するかなど、懸案材料を挙げればキリがない。
こうなったら、むしろ開き直ってほしい。焦って準備を進めれば事故につながる可能性も高まる。じっくりと綿密に協議を重ね、大会当日に間に合えばいいくらいの気持ちを持って仕切り直した方がいい。そのことが、最終的に大きな成功につながるはずだ。
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