The fin.&小袋成彬を取材 ロンドンの制作現場はいかに日本と違うか
The fin., 小袋成彬『COLD』- インタビュー・テキスト
- 柴那典
- 撮影:垂水佳菜 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
The fin.のフロントマン・Yuto Uchinoと小袋成彬という、日本の音楽シーンの枠組みや常識を飛び越えて活動する同世代のミュージシャン同士の対談が実現した。
10月18日にリリースされた初のコラボ曲“COLD”を作り上げた両者は、現在ロンドンを中心に活動しているアーティスト同士でもある。2016年よりロンドンに拠点を起き、現地のクラブシーンと共鳴しつつUK、US、アジア各国をツアーしワールドワイドに支持を広げているThe fin.。レーベル「Tokyo Recordings」代表としてプロデュースワークなどの活動を広げつつ、2018年にアルバム『分離派の夏』でソロデビュー、今年に入ってからはロンドンに移住し現地で主宰レーベル「ASEVER」を立ち上げた小袋成彬。それぞれの目からは、世界の、そして日本の音楽をめぐる状況がどのように見えているのだろうか?
ロンドンにある小袋成彬のプライベートスタジオのセッションで作られたというこの曲の制作の裏側から、今は家を持たず定住せずに暮らしているというYuto Uchinoの特異なライフスタイルまで、話は様々に広がっていった。
違う環境のほうが面白いじゃないですか。要は刺激を求めて行ったんですよね(小袋)
―お二人はどんなきっかけで出会ったんですか?
小袋:最初に会ったのは5年前くらいかな。下北沢のライブハウスでYutoに話しかけた気がする。
Yuto:気が付いたら友達って思ってたよ。普通に遊んでたよね?
小袋:そうそう、一緒に花火を見に行って、俺の家の屋上でアコギを弾いて、ベロベロに酔ったりして。
―それくらい古い付き合いなんですね。どういうところで気が合ったんですか?
Yuto:俺はそもそも東京にミュージシャンの友達がほとんどいなくて、おぶちゃん(小袋)は数少ない例外だったんです。年に1回くらいしか会わないんだけど、いろんな話をしたし、いい意味で変わってるなと思ってた。昔から音にこだわりがあるプロデューサータイプだなって思ってました。最初に会ったときに機材の話をしたんだっけ?
小袋:そう。俺がYutoと気が合った理由は、いいシンセサイザーを持ってたから。Yutoの家に行ったときに、机の上にコンソールとかコンプとかもあったもんね。
Yuto:で、今年の6月にロンドンで久しぶりに会ったんだよね。2年ぶりくらいかな。おぶちゃんがロンドンに来たというのは風の噂で聞いてて。それで会おうと思ってたんですけど、ようやくタイミングが合った。
小袋:去年とか一昨年もレコーディングでロンドンに行ったときに、Yutoと連絡は取り合ってたんですよ。でもタイミングがなかなかなくて、やっと今年会えたんだよね。
―5年前に下北沢で会ったときと違って、今はお互いロンドンで拠点を構えて音楽を作るようになっています。まず、小袋さんはなぜロンドンに拠点を置こうと考えたんでしょう?
小袋:ノリですね。マジで。もう日本にはこれ以上なにもないわ、と思って。疲れたなって。
……まあ、違う環境のほうが面白いじゃないですか。音も踊り方も文化も全部違う。しかも、俺のことを誰も知らないし。だから、すごく刺激的です。いろいろ理屈はあるけど、要は刺激を求めて行ったんですよね。面白そうだから行った、という。
小袋成彬(おぶくろ なりあき)
1991年4月30日生まれ。ロンドン在住の音楽家。株式会社Tokyo Recordings / AS EVER LIMITED代表取締役。2018年4月には宇多田ヒカルをプロデューサーに迎え、アルバム『分離派の夏』でメジャーデビュー。最近のワークに、adieu(上白石萌歌)への楽曲提供、資生堂アネッサCMソング“Summertime”のプロデュースなど。
―どういう違いが大きいんでしょう?
Yuto:シンプルに場所が違うから、国とカルチャーの成り立ちが全然違うんですよね。
小袋:電車に乗って椅子に座ったら、目の前にいる全員、肌の色も、好きな趣味も、全部違う。
Yuto:そうだよね。日本だったら目に見えないルールがあって、そこから外れている人が変な目で見られる感じがあるけど、ロンドンはあんまりそんな感じがないかな。
Yuto Uchino
The fin.(ざ ふぃん)
神戸出身、ロックバンド・The fin.。国内大型フェスだけでなく、アメリカの『SXSW』、UKの『The Great Escape』、フランスの『La Magnifique Society』、中国の『Strawberry Festival』などへ出演。今年8~9月に行ったバンド自身最大規模となる中国ツアーで全13公演15,000キャパシティの全公演をソールドアウトさせた。9月13日に新EP『Wash Away』をリリース。
―たとえばステージに立ったときの感じはどうですか? 人と人とのコミュニケーションのとり方って、音楽の鳴らし方とか作り方に影響してくると思うんですけれど。
Yuto:たしかに、いろんな国でステージに立つとお客さんの違いは感じますね。ライブでのお客さんのエネルギーの種類も違うし、それで自分のほうも変わる。
そういうところで言うと、日本のオーディエンスはやっぱりルールの中で音楽を受け取ってる感じがあるかな。そのせいか、あんまりエネルギーが届いてこないことが多くて悩むことも多いです。
リリース情報
- The fin., 小袋成彬
『COLD』 -
2019年10月18日(金)配信
- The fin.
『Wash Away』 -
2019年9月13日(金)配信
1. Come Further
2. Crystalline
3. Gravity
4. When the Summer is Over
5. Melt into the Blue
6. Wash Away
イベント情報
- The fin.
『#thefin_03』 -
2019年11月23日(土)
会場:東京都 Shibuya WWW X2019年11月29日(金)
会場:大阪府 心斎橋 ANIMA
プロフィール
- The fin.(ざ ふぃん)
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神戸出身、ロックバンド・The fin.。80~90年代のシンセホポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーブなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせが殺到している。The Last Shadow Puppets、Phoenix、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、『FUJI ROCK FESTIVAL』『SUMMER SONIC』などの国内大型フェス始め、アメリカの『SXSW』、UKの『The Great Escape』、フランスの『La Magnifique Society』、中国の『Strawberry Festival』などへの出演、そしてUS、UK、アジアツアーでのヘッドライナーツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。また8/25からはバンド自身最大規模となる中国で全13公演15,000キャパシティのツアーを行い、全公演ソールドアウトとなっている。
- 小袋成彬(おぶくろ なりあき)
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1991年4月30日生まれ。ロンドン在住の音楽家。株式会社Tokyo Recordings / AS EVER LIMITED代表取締役。2018年4月には宇多田ヒカルをプロデューサーに迎え、アルバム『分離派の夏』でメジャーデビュー。最近のワークに、adieu(上白石萌歌)への楽曲提供、資生堂アネッサCMソング“Summertime”のプロデュースなど。
関連チケット情報
- 2019年11月23日(土)
- The fin.
- 会場:WWW X(東京都)
- 2019年11月29日(金)
- The fin.
- 会場:Live House Anima(大阪府)