女子高校生の6割が性的嫌がらせや差別を経験。メディアにうんざり、SNSは女子だと隠して投稿

女子高校生の6割が、日常生活で性的嫌がらせや性差別を経験したり見たりしていることが分かった。

9割が大学進学を否定されたことはない一方で、学校でも家庭でも「女の子だから」と家事スキルを求められ、疲弊している。 自己肯定感はなんと男子の約半分—— 。彼女たちに何が起きているのか。

性的嫌がらせや性差別を最も感じるのは「メディア」

ガールスカウト

ガールスカウト『「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書2019』より。

出典:ガールスカウトHP

公益社団法人ガールスカウト日本連盟は2019年3月から4月にかけて、全国の女子高校生524人(ガールスカウト会員313人・一般211人) に調査を行い、『「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書2019』にまとめた。国際ガールズ・デーに発表された同報告書によると、女子高校生の62%が普段の生活で性的な嫌がらせや性差別を経験したり見たりしていることが分かった。

具体的な場面として最も多かったのがテレビや広告などの「メディア」(49%)、次いで「インターネット」(46%)、「公共の場所(電車や店など)」(30%)、「学校」(18%)、「パートナー」(13%)、「家」(9%)と続いた。

女子高校生らの41%が広告に不快感や違和感を抱いたことがあると報じたが、今回も同様の結果に。

SNSでは女子だと隠して投稿

スマホ

SNSの被害は深刻だ(写真はイメージです)。

GettyImages/Noppon Kobpimai / EyeEm

最も多かったメディアとインターネットについて、寄せられた声を紹介する。

メディア

「テレビには、男性司会者が中心的役割で、女性が補佐的な役割で登場する番組が多い」

「カメラで女性を映す時、足元から顔までゆっくり映したり、短いスカートの足元からのアングルもある」

「タレントなどが、胸が強調されるような衣装を着せられている」

女性が被害者の事件に対して、女性を非難する声、男性を擁護する声が上がる」

インターネット

「SNSで『ラブホテルに行こう』と誘われたり、『チャットエッチをしたい』と言われることがよくある」

「 SNSのダイレクトメッセージで卑猥な画像を送られる」

「YouTubeで女性が投稿していたら、『ブス』『デブ』などの誹謗中傷コメントがたくさんある」「SNSで名前やアイコンが女性で、その人が目立ち始めると、リプ(返事)やコメントで性的なことを言われる。女性ということを隠して発言しないといけない

女性が乱暴を受けるマンガやゲームの広告が表示される」

「勉強も家事も」のプレッシャー、将来に不安も

料理

「女性は家事ができる」「結婚し子どもを産む」などの、こうあるべきという固定観念が強いと指摘する女子高校生も(写真はイメージです)。

GettyImages/Yagi Studio

性的嫌がらせや性差別を体験した場所として約2割を占めた「学校」では、教員から「女の子らしく振る舞いなさい」「女の子なんだから静かにしなさい」と声をかけられた学生がいた。

家庭科の調理実習で女子が中心的にふるまっていると回答した割合が52%と約半数を占めるなど、「男性は仕事、女性は家事」というジェンダーバイアスはいまだ根強い。

これは家庭でも同様で、「女の子は料理ができた方が良い」と言われたことがある相手として最も多かったのは、「母親」(38%)だった。

実際に自身の家庭で誰が家事をしているかたずねると、78%が「ほとんど女性」と回答している。子育ても同じ回答が67%を占めた。

一方で、女子であることを理由に「4年制大学に行かなくてよい」と言われたことが「ない」と回答したのは90%と大多数を占め、進学への偏見は少なくなっている。

結果として「女の子は勉強もする、料理もする」と、男子に比べて女子に対する要求が多くなっており、仕事と嘉永の両立をすでに不安に感じている学生もいた。

「女の子だからという理由で、兄弟間で自分だけ家事が増やされたり、料理ができないと責められたりする

兄との対応が違う。姉と私は『女の子なのだから、これくらい出来なくてどうするの』と」

結婚や妊娠、子育てなどの将来のことをイメージすると、やりたい事をやり続ける事に難しさを感じる

自己肯定感は男子の半分!「分からない」と答える背景は

留学生

国立青少年教育振興機構「高校生の留学に関する意識調査報告書」

出典:国立青少年教育振興機構HP

こうした大人たちからの言葉がけや、メディアの影響か。自己肯定感の男女差は深刻だ。

国立青少年教育振興機構が2019年6月に発表した、日本、米国、中国、韓国の高校生を比較した「高校生の留学に関する意識調査報告書」によると、「今の自分が好きだ」と回答したのは48.4%と5割にとどまる一方で、「自分はダメな人間だと思うことがある」は80.8%と8割を超えた。他国と比較しても圧倒的に自己肯定感が低いことが浮き彫りになったが、さらに大きな男女差もあった。

「今の自分が好きだ」という問いに「よくあてはまる」と答えた割合は男子が14.9%だったのに対し、女子はわずか8.3%だったのだ。

同機構が2018年に発表した「高校生の心と体の健康に関する意識調査」でも、「私は価値のある人間だと思う」「私はいまの自分に満足している」に「そうだ」と回答したのは、それぞれ男子14.1%女子5.3%、男子12%女子5.6%と、女子の自己肯定感は男子の約半数だ。

渋谷

撮影:今村拓馬

ガールスカウトでは女子の自己肯定感が男子に比べて低いことに長年、課題意識を持っており、親のジェンダーバイアスをなくす講座を開くなど、さまざまな取り組みを行ってきた。

今回の調査を担当したガールスカウトの篠宮さおりさんは言う。

「今年6月にこの調査の初期段階での結果を議員会館で発表した際、『なぜ女子だけの調査なのか』と指摘がありました。日本はデータ分析において男女を区別しない傾向があり、調査結果が男女の平均値が示されることも多い。でも男女の自己肯定感の差から、置かれている環境が違うことは明らかです。現状を正確に把握して適切な施策に繋げていくためにも、まずは少女の声をしっかり聞くことが大切だと考えています」(篠宮さん)

今後の課題は、多くの設問で「わからない」という回答があったことだという。

「イギリスのガールスカウトで同じ質問をしたときに比べて、『分からない』と答える割合は日本の方が圧倒的に多かったです。まだ何が性差別なのか認識していない学生が多いということ。実際、普段の活動中は『差別なんて感じたことがない』と話していた女子高校生が、アンケートに回答しながらジェンダー不平等に気づいたケースもありました。

学校、家庭その他で性差別について学ぶ機会をいかに増やしていくかが重要だと思います」(篠宮さん)

編集部より:初出時、議員会館での発表を4月としておりましたが、正しくは6月です。訂正致します。 2019年10月19日 10:10

(文・竹下郁子)

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