厚生労働省は18日、公的年金の受給開始年齢を75歳まで選択できるようにする案を社会保障審議会に示した。65歳より前倒しで受け取る場合に1カ月あたりの年金額を減らす制度も見直す。現行は基準額から30%減らす計算となるが、減額幅を24%に圧縮する。長寿化に対応するためという。
厚労省は年内に議論をまとめ、2020年の通常国会に関連法改正案の提出をめざす。公的年金の受給開始年齢は原則65歳で、現行制度では60~70歳の範囲で選択できる。1カ月早めるごとに基準額から0.5%減り、遅らせるごとに0.7%増える仕組みだ。
厚労省の18日の案では、早めた場合の減額幅を0.4%にとどめる。増額率は維持する見通し。年金受給を75歳まで遅らせると1カ月あたりの年金額は最大となり、基準額よりも84%増になる。
増減額率を決めたのは00年で、当時の平均寿命から男女とも3年程度延びている。寿命が伸びると、前倒しで受け取る影響が「相対的に小さくなる」(厚労省年金局)という。年金を受け取り始める年齢によって1カ月あたりの年金額が変わるのは、生涯でもらえる年金額を一定にするため。
厚労省は8月に公表した公的年金の財政検証で、成長率の横ばいが続くケースでは将来の給付水準(所得代替率)が現在の61.7%と比べて3割弱低下するとの試算を示した。だが仮に75歳まで働いてその後に年金を受け取ると、所得代替率は4割弱向上する。
長寿化で元気な高齢者が増えるなか、政府は企業に70歳まで就業機会を提供するよう求める法改正をめざしている。厚労省は同時に受給開始年齢の選択肢も広げ、70歳を超えても働き続ける高齢者を後押ししたい考え。