8/2 ザンクトガレン国際乳癌コンセンサス会議2019(3/20-23)) | HER2タイプ乳癌ステージ3C 経過観察中シングルマザー

HER2タイプ乳癌ステージ3C 経過観察中シングルマザー

HER2タイプ乳癌のこと、治療のことなどを書き残しておこうと思います。温かい目で見守っていただければ、幸いです。アメンバー申請、コメント、メッセージ、リブログについては、「はじめに(私のスタンス)」テーマ内の記事をご一読下さい。

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ご訪問ありがとうございます。

乳癌治療の国際的なコンセンサス会議は
2年に一度ザンクトガレンで開催されて
いることを以前も書いたかと思います。

私の主治医は、術前化学療法を強く推奨
することと、その化学療法の内容の根拠
として、「ザンクトガレンのコンセンサス
に基づいて」とも明言していました。
 (その時は、ザンクトガレンコンセンサス
  会議など知りませんでしたが、検索キー
  ワードは教えていただけたということで ^^;)


乳癌治療は、勿論、個々人の癌に合わせて
治療を決めて治療をしてもらうのだけど、

その時点の医学で判明している癌の特徴に
応じて、その時点で利用可能な治療法の
中から、治療法をどう選んで患者に適応
したらよいかについて、

患者を、癌の特徴に応じてグルーピング
したうえで、
判断基準や方針、ガイドラインを決めて

各国の乳癌専門の臨床医の先生方は、
その方針に沿って、個々の乳癌患者の
治療をしていて、

新薬の開発など、乳癌治療も刻々と
進歩しているので、

2年に一度、
各国の権威ある乳癌の専門医の先生方が
集まって、
そういった新しい研究・開発、臨床試験の
結果を議論し、

治療の方針、ガイドラインを見直し、
新たにコンセンサスを形成する

そういう会議のようです。


今年の3/20~23に開催され、
8/2に記事も出ていますので

だいぶ経ってしまいましたが
ご紹介、共有させていただきます。

Estimating the benefits of therapy for early-stage breast cancer: the St. Gallen International Consensus Guidelines for the primary therapy of early breast cancer 2019




■腋窩リンパ節郭清省略の可能性

・乳房切除後に腋窩領域への放射線治療が
    が予定されている場合、
    また、
    腫瘍径5cm以上で乳房温存手術受け、
    全乳房への放射線照射が予定されている
    場合、

    センチネルリンパ節転移1-2個であれば
     腋窩リンパ節郭清の省略は可能。


■術前化学療法

ステージ2−3,HER2 陽性、トリネガでは
    術前薬物療法が推奨される。

   ー 術前薬物療法により腋窩リンパ節郭清
       省略可能例を増やせる。

  ー  HER2 陽性、トリネガでは、
       術前薬物療法により、長期予後を期待
       できる個別化医療が可能となる。
       下矢印
       non-pCRへの術後化学療法の追加の流れ


●ER+陽性の術後補助療法

・多くの場合、全身化学療法は回避できる
   だろう。

● HER2陽性、トリネガの術後補助療法

ステージ2-3HER2陽性では
    ハーセプチンにパージェタを追加すべき。

・術前薬物療法でpCRとならなかった
    HER2陽性の場合、カドサイラ
    術後補助療法を追加すべき。

・術前薬物療法でpCRとならなかった
    トリネガの場合、術後にゼローダの
    追加を考慮すべき。


●ER陽性閉経後乳がん症例では
    bisphosphonate を標準的全身療法と
   すべき。


■2017年からの臨床研究の進歩

● ER陽性  (進行/転移・再発)

  ・SOLAR-1 study
     PIK3CA変異有のER陽性進行乳がんに
     PI3K阻害薬 alpelisib が PFS改善

 ・Palbociclib(イブランス)、ribociclib、
    abemaciclib(ベージニオ)などの
    CDK4/6阻害剤が、ER陽性進行乳がんの
    一次、二次治療でPFS改善

●ER陽性  (アジュバンド)

・アロマターゼ阻害剤による5年以上の
    アジュバント療法は、わずかではあるが
    有意な臨床的利益をもたらす一方で、
    相応の不利益を伴う。

TAILORx trial で、
    21-gene recurrence score 11-25の
    ER陽性/リンパ節転移陰性乳がん例では
    ホルモン療法に化学療法を追加する
    意義がないことが明らかに。

●  HER2陽性   (進行/転移・再発)

・抗HER2抗体薬物複合体DS-8201
    高奏効率、その効果はHER2 1+ や2+例
    でも認められる。

NALA study  HER2陽性進行再発乳がんで
    lapatinib + capecitabine 
    (タイケルブ+ゼローダ) と比較して
    neratinib + capecitabine がPFS改善 

KATE2 (randomized phase 2 study) 
    PD-L1発現HER2陽性進行乳がんで、        
    ハーセプチンに抗PD-L1抗体 atezolizumab 
    テセントリクを追加するとPFS改善 

PANACEA (Phase 2 study) 
    trastuzumab 耐性HER2陽性進行乳がんで
    ハーセプチンに抗PD-1抗体 pembrolizumab 
    キイトルーダを追加すると抗腫瘍効果


●  HER2陽性   (アジュバンド)

KATHERINE study 
   ハーセプチン ベースの術前薬物療法で
   pCRが得られなかった症例に対して、
   術後 ハーセプチンに代わりカドサイラ
   投与で、DFSとOS改善

ShortHer trial 、 PERSEPHONE trial 
   術後ハーセプチン6ヶ月投与の成績は
   ほぼ12ヶ月投与に相当するが同等でない

     下矢印
      ハーセプチンは1年 

・NSABP B-47 は、HER2 1+あるいは
    2+でFISH陰性乳がんでは
    術後ハーセプチンは予後を改善しない

APHINITY trial
    術後ハーセプチンにパージェタ追加
    再発リスクが低下、
    特にリンパ節転移陽性例や高ステージ例
    でその効果が顕著

● トリネガ   (進行/転移・再発)

Impassion130 trial 
   PD−L1陽性のトリネガ乳がんで、
   抗PD-L1抗体 atezolizumab テセントリク
  と nab-paclitaxel の併用がPFSを改善、
  OSも改善する可能性。

・IMMU132
   抗Trop-2抗体とイリノテカンの活性代謝
   産物SN-38を結合させた、抗LIV1 抗体と
   微小管重合阻害剤 monomethyl auristatin E
   を結合させたSGNLIV1は、
   治療抵抗性進行トリネガ乳がんで
   高奏効率。

●トリネガ  (アジュバンド) 

CREATE-X study 
    術前化学療法でpCRしなかったトリネガ
     乳がんへの、術後ゼローダの追加で
     DFSが改善。

・メタ解析で dose-dense 化学療法は
    再発を減らし、OSが改善。

・トリネガ乳がんの術前薬物療法に、
    抗PD-L1抗体 durvalumab または
    抗PD-1抗体 pembrolizumab キイトルーダ
    を追加することで pCR 率が向上。


● アジュバンドのレジメン

・Docetaxel / cyclophosphamide (TC) と
   アンスラサイクリン・ベース・レジメン
   の多数の無作為化比較試験から、
   TCは、特にER陽性、HER2陰性、
   低リスクトリネガ乳がんでは
   アンスラサイクリン・ベース・レジメンの
   代替となり得ることが示された。

・COX-2阻害剤のcelecoxibは乳がん再発を
    減らさないことが、
    無作為比較試験により示された。

・術後化学療法と術前化学療法に関する
   メタ解析から、遠隔転移とOSに差はないが
   術前化学療法で局所再発リスクが増加する
   ことが示された。

● バイオマーカー

Tumor infiltrating lymphocytes (TILs) は
    術前後化学療法を受けたトリネガ乳癌で
    予後因子であることが示された。

● 腋窩リンパ節郭清

ACOSOG Z11 trial の長期解析により、
   1-2個のセンチネルリンパ節転移陽性例では
   腋窩リンパ節郭清は局所再発やOSを
    改善しないことが示された。

●遺伝性乳癌

・BRCA変異陽性の進行乳がんで
    PARP阻害剤 olaparib リムパーザおよび
    talazoparib は、標準化学療法より 
   PFSを延長、QOLに優れることが示された。

・cfDNA によりBRCA1または2の遺伝子変異
    が確認された場合、プラチナ製剤や
     PARP阻害剤に耐性の可能性。

・現在の遺伝子検査アルゴリズムでは、
    多くの遺伝子変異例を見逃す可能性。

・BRCA変異陽性乳がんに対する
    PARP阻害剤 talazoparib 単剤による
    術前治療は、一定の臨床的有用性を示す。

● 放射線療法

・ RAPID trial 
    低リスク乳がんに対して、
    加速乳房部分照射法 accelerated partial 
    breast irradiation (APBI) の
    乳房内再発コントロール成績は
    全乳房照射と同等だが、
    整容性に劣ることが示された。

・ER陽性/低リスク (recurrence score18未満) 
   の乳房部分切除例を対象とする乳房照射の
   有効性を検討した試験のメタ解析により、
   乳房照射省略は局所再発のリスク因子では
   あるが、OSには影響しないことが
   示された。

● 非浸潤癌DCIS

・DCISが外科切除によって浸潤性乳がんへ
   アップステージされるリスクは
   特にグレードに依存している。
   低リスク集団でのアップステージ率は
   5-20%。

● Supportive Care

・Oxybutinin (ポラキス) は乳がんサバイバー
    のホットフラッシュを低減させる。

・Duloxetine (サインバルタ) はアロマターゼ
    阻害剤関連の骨格筋/関節痛を低減させる。

・鍼治療はアロマターゼ阻害剤関連関節痛を
    低減させる。

体重減少を目的とした生活スタイルへの
    介入は乳がん再発に影響しない。

・アジュバント化学療法、
   特にアンスラサイクリンを含まない
   レジメンで、頭皮冷却は脱毛を軽減させる
   ことが前向き試験により示された。


■術前薬物療法後の腋窩制御

●治療前に画像上
    腋窩リンパ節転移なしの場合

▼術前治療後に画像上
    腋窩リンパ節転移なしの場合

  ・センチネルリンパ節生検で
      リンパ節転移なしの場合 
    ー  腋窩リンパ節郭清や腋窩照射は不要
    ー  領域リンパ節照射は不要

   ・センチネルリンパ節生検で
       リンパ節転移ありの場合 
       ー  腋窩リンパ節郭清または腋窩照射
       ー  その他リスク因子があれば
             領域リンパ節照射を検討

●治療前に画像上
    腋窩リンパ節転移ありの場合

▼術前治療後に画像上 
     腋窩リンパ節転移なしの場合

    ・センチネルリンパ節生検で
         リンパ節転移なしの場合
      ー  腋窩照射を考慮
   ー  その他リスク因子があれば
               領域リンパ節照射を検討

      ・センチネルリンパ節生検で
          リンパ節転移ありの場合
   ー  腋窩リンパ節郭清または
               腋窩照射が必要
  ー   領域リンパ節照射が必要

▼術前治療後に画像上
    腋窩リンパ節転移ありの場合

   ・腋窩リンパ節郭清 で
       リンパ節転移なしの場合
        ー その他リスク因子があれば
              領域リンパ節照射を検討

    ・腋窩リンパ節郭清 で
       リンパ節転移ありの場合
  ー  領域リンパ節照射が必要

     ※腋窩リンパ節郭清したら腋窩照射は
       しない


■HER2陽性またはトリネガの治療

●ステージ 1

▼T1a
 ・HER2陽性:
     タキサン+ハーセプチン  (case by  cace)
 ・TNBC:化学療法 (case by  cace)

▼T1b
 ・HER2陽性:タキサン+ハーセプチン
 ・TNBC:TC

▼T1c
 ・HER2陽性:タキサン+ハーセプチン
 ・TNBC:AC + タキサン

●ステージ2~3  術前治療を推奨

▼HER2陽性
    AC → 
    タキサン +ハーセプチン  (± パージェタ) 
   または
    タキサン+ ハーセプチン(± パージェタ) 

※pN2ではNeratinibを追加。
   ER陽性ではパージェタを追加しない。

▼TNBC:術前治療を推奨
    AC → タキサン± プラチナ製剤

●術前薬物療法後に浸潤がん残存の場合
・HER2陽性:カドサイラを追加
・TNBC:ゼローダを追加


■ホルモン陽性、HER2陰性の治療

●ステージ 1

▼T1ab
 ・卵巣機能抑制治療:なし
 ・内分泌療法:アロマターゼ阻害剤 (AI) 
        またはタモキシフェン (TAM) を5年
 ・化学療法:なし

▼T1c
 ・卵巣機能抑制治療:なし
 ・内分泌療法:AIまたはTAMを5年
 ・化学療法:個別に判断

●ステージ2

▼リンパ節転移なし
 ・卵巣機能抑制治療:高リスク
         (腫瘍径大、35歳以下、高グレード、
           遺伝子検査で高リスク) では
        卵巣機能抑制治療+AIまたはTAM
 ・内分泌療法:AIが望ましく、
        5年以上の投与が望ましい
 ・化学療法:個別に判断

▼リンパ節転移陽性
 ・卵巣機能抑制治療 : 
         AIまたはTAMとの併用で実施
 ・内分泌療法:5年以上
 ・化学療法:個別に判断

●ステージ3
 ・卵巣機能抑制治療 : 
        AIまたはTAMとの併用で実施
 ・内分泌療法:5年以上
 ・化学療法:必要

*化学療法を個別に判断する場合は、
     T因子、N因子、組織型、リンパ管侵襲、
    グレード、増殖活性、
    ホルモン受容体の定量評価、遺伝子検査、
    患者の希望で個別に決定


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