震災で障害あるわが子を守る 高槻支援学校PTA
昨年6月の大阪北部地震で被災した大阪府立高槻支援学校(大阪府高槻市)が、PTAを中心とした防災活動に取り組んでいる。特別な配慮が必要な知的障害のある子供たちを災害から守るには、家庭でも日頃の備えが欠かせないと、保護者の有志らが団結。北部地震を教訓に、教職員と協力して研修会や啓発イベントを開いてきた。専門家は「全国の特別支援学校やPTAのモデルケース」と評価している。
家庭で防災
「うちの子、ご飯ならいけるかも」。1月25日、授業参観に合わせて行われた災害食の試食会。保護者ら約20人が、お湯だけで作る混ぜご飯や、乾パンを食べ比べた。障害のある子供は偏食やアレルギーを抱える場合があり、災害時の食事は切実な課題だ。
主催したのはPTAの「防災マスターチーム」。各家庭で防災や災害対応に取り組んでもらおうと初めて企画した。この1週間前には、災害時の持ち出し品リストや、子供が助けを必要とする項目を周囲に伝えるためのカードを配ったという。
チームが活動に力を入れるのは、大阪北部地震を経験したからだ。PTA副会長の沖本雅美さん(43)は「子供だけでなく、親たちも緊張して大変な日々を過ごした。防災を学校任せにしないことが大切だと痛感した」と振り返る。
学校と協力
6月18日の地震当日、学校は臨機応変の対応を迫られていた。
発生時刻の午前7時58分は出勤時間前で、校内にいた教職員は約3分の1。すぐ休校を決めて保護者にメールを一斉配信したが、すでに通学バスが運行を始めており、児童生徒325人のうち130人が登校してきた。
余震に備え、校舎内ではなくグラウンドにブルーシートを敷いて避難場所に。保護者の迎えを待つ子供たちのために、給食や備蓄品を提供した。
福井浩平校長(50)は「災害はどの時間帯に起きるかで、必要な支援や対応が変わる。保護者と連携し、保護者ならではの視点に助けてもらわないと、防災は進まない」と話す。
校舎も被害を受けていたため、学校は20日まで休校となった。各家庭では家具が散乱し、ライフラインが止まった。子供たちは日常と異なる生活を送り、このときのストレスは、今も影を落としている。
地域・行政も
「お正月でも会う人ごとに『地震でおうち、どうやった?』と聞いていた。よっぽど怖かったんやと思います」
楠本純子さん(50)には、同校高等部2年と中学部3年の娘がいる。いずれも知的障害があるが、地震のことをよく思い出して不安がるのは、障害の程度が軽い妹の方だという。
もっと規模の大きい南海トラフ巨大地震が起きたときには、どう対応すればいいか。学校とPTAは、災害時の被害を最小限に抑えて復旧を図る「事業継続計画」(BCP)の改訂を目指している。PTA会長の和田佳樹さん(55)は「行政や地域の通所施設とも連携し、大規模災害に備えたい」と話している。