中日から育成1位指名された名古屋大・松田亘哲投手(22)に笑みが浮かぶ。豊田講堂内に設けられた会見場は、5年前に天野浩博士がノーベル賞受賞の喜びを語った場所。文武両道のプロ野球選手の誕生である。
「非常にうれしくて頭がまっしろです。実感がわいていないですが、すごく光栄。中日はこれまで応援させていただいていました」
経歴は異色だ。野球少年だったが、愛知・江南高ではバレー部に在籍。それでも野球が忘れられず大学で硬式野球に取り組み、やがてプロを目指した。一流企業から次々内定をもらうチームメートを横目に、就職活動は行わず、指名されなければ独立リーグに進んででもかなえようとした夢。育成ではあるが、ここまでたどりついた。「これまで考えてやってきたので、これからも考えてやっていきたい」。魅力は未知数の伸びしろ。中学時代は150センチだった身長が高校で160センチ、大学で176センチに伸びるなど体の成長は遅かった。球速も大学1年で120キロだったが2年で140キロ、4年では148キロに。高校時代は117キロしか出なかった中日・又吉をほうふつとさせる。
そこには松田流の計算があった。大学2年のオフにはトレーニングに加えて1日5食、計5000キロカロリー摂取で肉体改造に取り組んだ。球威に加え、走り込みで制球力もついた。計画に向かって突き進めるのも松田の強みである。
「けがなくシーズン通して投げられる投手になりたいです。変化球とストレートのコンビネーションを見てほしい」
会場には野球部員、OB、大学関係者ら約100人が集結し、祝福した。支配下選手、そしてプロ1勝へ。不退転の決意で進んできた松田が次のステージに挑む。