【北京=原田逸策】中国国家統計局が18日発表した2019年7~9月の国内総生産(GDP)は物価の変動を考慮した実質で前年同期比6.0%増えた。伸び率は4~6月より0.2ポイント縮小し、2期連続で減速した。四半期で統計を遡れる1992年以降の過去最低を更新した。米国との貿易戦争で輸出が低迷し、消費や投資にも力強さがない。成長減速は世界経済の波乱要因になりそうだ。
中国の四半期の成長率は18年1~3月期(6.8%)を直近のピークに減速傾向が続く。1年半の減速幅は0.8ポイントに達しており、成長率がほとんど動かない中国としては異例の大きさだ。
成長率は中国政府の19年の目標「6~6.5%」の下限だった。日本経済新聞社と日経QUICKニュースが実施した市場予想の平均(6.1%)を下回った。
前期比の伸びは1.5%で4~6月より0.1ポイント減速した。先進国のように前期比の伸びを年率換算した成長率は6%程度になる。景気の実感に近い名目成長率は7.6%で4~6月(8.3%)より減速した。
18日はGDP以外の経済統計も公表した。工業生産は1~9月の累計で前年同期比5.6%増え、伸び率は1~6月(6.0%)から減速した。自動車や携帯電話の生産が不振だった。これまで好調を維持してきたサービス業の生産指数も1~9月に同7.0%増にとどまり、1~6月(7.3%増)から減速した。
日産自動車の大連工場の製造現場(中国遼寧省大連市)=共同
百貨店やスーパー、電子商取引などの売上高を合計した社会消費品小売総額は、1~9月に前年同期比8.2%増えた。伸び率は1~6月(8.4%)から縮小した。新車の販売が低迷したほか、スマートフォンも売れていない。家計調査による消費支出の伸びは1~9月に同5.7%で1~6月(5.2%)から加速した。
工場の設備投資やマンション建設など固定資産投資は1~9月の累計で前年同期比5.4%増えた。伸び率は1~6月(5.8%)から減速した。不動産投資は堅調だったが、大規模減税による地方財政の悪化でインフラ投資が伸びない。
貿易も低迷した。1~9月の輸出(ドル建て)は前年同期比0.1%減り、伸び率は1~6月(0.1%)から減速した。貿易戦争の長期化が響く。ただ、内需縮小で1~9月の輸入は同5%減と輸出を上回る勢いで減った。輸入減が貿易黒字を押し上げ、成長率を下支えした公算が大きい。
中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は、量的緩和や財政バラマキなど大規模な景気刺激策を追加するのに慎重だ。9月単月でみると経済指標も好転しており、今春に打ち出した2兆元(約30兆円)規模の減税の効果を見極めたい考えだ。