阪神は「外れ1位」で創志学園高の西純矢投手(18)を指名すると、上位5人をいずれも甲子園を沸かせた高校生で固めた。聖地を本拠地にするチームにふさわしいスター軍団を結成して、世代交代に取りかかる。
甲子園ファン喝采のドラフトとなった。阪神がこれでもかと「スター球児」をかき集めた。「そういう場を踏んでいるという評価もある。楽しみやね」と、矢野監督が満足げにうなずいた。上位5人全員が高校生だったのは、江夏豊を1位指名した66年以来、53年ぶり。世代交代を推し進める異例の戦略となった。
吉兆の「赤いパンツ」で臨んだ星稜高・奥川の1位抽選は、先にヤクルト・高津監督に当たりくじを引かれて仕方なし。外れ1位ですぐに目を向けたのが「俺よりすごいガッツポーズをする」と表現する西。創志学園高がある岡山は、恩師の星野仙一氏の故郷という縁も感じた。「星野さんに似てるもんな。奥川くんは高津監督に取られたけど、星野さんが『西で良かったんじゃないか?』ってね…」。闘志むき出しで投げ込む右腕は、現役時代の闘将と重ね合わせた。
2位の履正社高・井上は今夏の優勝チームの4番打者。「どうしても右打者で大砲が欲しい。中心打者になっていける素材」と太鼓判を押した。3位の横浜高・及川にも先発型の左腕として期待。22歳以下の野手が1人だけだったチームの年齢構成も加味し、4位以降もほぼ狙いどおりだった。東海大相模高・遠藤は大型遊撃手で、中京学院大中京高の藤田も正捕手・梅野の後継になりうる存在だ。
長期的な視点でチーム再建を目指すドラフト。谷本球団本部長は「将来性をメインに置いて臨みました。あまりにも10代が少ないので。ほぼシミュレーション通りです。育成責任は両肩にずっしりと乗っていますけど。夢を追いかけましょうと」と説明。魅力と可能性を秘めた金の卵たち。ふ化する瞬間が、今から楽しみだ。
(長田 亨)