先日の台風 19号では日本各地、多くのエリアで川の氾濫が相次ぎました。
これから不動産を買うなら、事前にハザードマップを確認するのはもはや必須になったといえるでしょう。
東京でも多摩川が氾濫し、周辺地域では内水氾濫も発生。床上浸水や停電だけでなく死者まででる被害が発生しました。
そこで今日は、多摩川の氾濫地域を多く含む東急の2路線にそって、土地の標高をグラフにしてみました。
グラフにして驚いたのは、同じ路線の駅でも、もっといえば隣の駅でも、標高が大きく違う場合があるってことです。
たとえばこちらは田園都市線の各駅の標高。単位はメートルで、紫色の横線は標高 40メートルのラインです。
渋谷は川も通っているし、そもそも名前からして「谷」なので低いだろうとは思っていましたが、やはり低いですね。
その後、高台に入り、ふたたび急激に標高の下がるのが二子玉川から溝ノ口の間。
多摩川はこの間を流れており、今回、被害に遭った二子玉川や高津がまさにこのエリアです。
その後、標高はふたたび上がりますが、高くなったり低くなったりアップダウンも激しいです。
そして、恩田川が走る田奈だけグッと下がったあとは、標高は相当に高くなり「山?」って感じに。
つくし野より先は水害というより、土砂崩れなど(山の災害)を警戒すべきエリアなのかもしれません。
一方、下記は東横線。同じく単位はメートルですが、グラフの縦目盛りにご注意ください。
さきほど示した田園都市線のグラフは縦軸が 90メートルまでありますが、こちらは一番高いところで 40メートルと、東横線沿線は田園都市線に比べ全体に標高が低いようです。
比較を簡単にするため、どちらのグラフにも標高 40メートルのところに紫の横ラインを引いておきました。
(データはこちら)
個別に見ていくと、渋谷はもちろん低地ですが、その後、代官山は「山」とつくだけあって高くなります。でもその次の駅、中目黒は目黒川があるので、一気に低く。
ふたつのグラフを比べるとわかるのですが、実は代官山の標高は、三軒茶屋より 20メートル近く低いんですよね。
つまり代官山は、両隣の渋谷も中目黒も極端に低いから「山」と呼ばれた(=昔の人には山に見えた)だけなのかもしれません。
その後は上昇し、祐天寺から田園調布までは高台にあるみたい。(といっても 40メートルラインの下)
そして再び低下。日吉は例外的に高い場所にありますが、それ以外は多摩川から菊名まで、ずっとかなり低いです。
今回、内水氾濫がおきた武蔵小杉は、このもっとも低いエリアに含まれてます。やっぱり・・・って感じですよね。
あともうひとつ、被害に遭ったのが田園調布。
グラフでわかるように田園調布「駅」の標高は高いのですが、その次の多摩川駅はすごく低い場所にあり、浸水したのはこの多摩川に近いエリアです。
このように「最寄り駅の標高は高いが、隣の駅の標高は急に下がってて極めて低い」場合には、自分の家がどちらの駅に近いのか、詳しく見てみることも必要なようです。
で、その後はアップダウンしつつ海に近づき、終点の横浜は港町なので当然、低くなります。
海のそばである横浜では高潮や津波のリスクも大きいので、詳しくはハザードマップをご確認ください。
★★★
2路線とも渋谷を起点としてるので、ちょっと人為的ですが、つないだグラフも作ってみました。それぞれの沿線の標高の違いがよくわかるかなと思って。
やっぱり全体的に「東横線沿線は低く、田園都市線沿線のほうが高い」のですが、これは、
・田園都市線は渋谷から山に向かって走っており、反対に
・東横線は横浜という海のそばの街に向かって走っている
ため、前者はどんどん標高が高く、後者は低くなるってことのようです。
東横線の終点である横浜は「浜の横」だし、田園都市線の終点である中央林間は「林の間の中央」と書くくらいですから当然っちゃ当然です。
さて・・・昨年の岡山・倉敷の水害の際にも思いましたが、水害に関してはハザードマップが驚くほど正確に災害範囲を予測できています。
今回も、二子玉川、高津区、武蔵小杉など、被害の出たところはどこも標高が低いところばかりです。
つまり水害は他の災害とくらべても、「事前にデータを調べていれば予想しやすい災害」なんです。
先祖代々、川のそばに住んでいるというなら、標高が低いとわかっても引っ越すのは難しいかもしれません。
でも「これから家を買う」なら、わざわざ危険なエリアに買う必要はありません。
今回わかったように、タワマンの高層階に住んでいても立地の標高自体が低いと地下が浸水し、エレベーターや電気が止まってしまいます。
つまり「我が家は高層階だから大丈夫」ではなく、あくまで立地している土地の安全性が重要なのです。
さらに上記グラフでわかるように、駅をひとつずらすだけで標高は大きく変わります。つまり安全なエリアを選びたければ駅をひとつ変えればいいだけ。住む沿線を変える必要さえありません。
今後も温暖化の影響で大型の台風がますます増えると言われる中、マンションや家を買うとき「隣の駅と自分の駅で、ものすごく標高が違う」というなら、価格や利便性に加え、そのあたりのデータもちょっとは考慮したほうがいいんじゃないでしょうか?
洪水だけでなく土砂崩れなども含めたハザードマップはこちらから。
→ 政府のハザードマップ ポータルサイト