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【社説】

増える不登校 「居心地悪さ」の背景は

 不登校が増え続けている。暴力や深刻ないじめも増加しており、学校の「居心地悪さ」の背景を解きほぐしていく必要がある。学校以外の選択肢についても、幅を広げる努力を続けたい。

 昨年度、不登校になった小中学生は十六万人以上に上る。六年連続で増えており、中学校では二十七人に一人、つまりは一クラスに一人以上が学校に行っていないことになる。

 教室で子どもたちが感じる圧力が増しているという側面がありはしないか。小学校では暴力行為が五年間で三倍以上に増えている。これを子どものストレスの一つの表れと受け止めているベテラン教員もいる。英語など、学ぶ内容は厚みを増し、宿題も増えているという。

 本来、子どもの揺らぎを包み込む役割が期待される教員の側も多忙で余裕がない。子どもの学ぶ内容が増えているというのは、教員の教える内容が増えるということの裏返しでもある。

 教員間のいじめ問題も明らかとなり、教員自身のストレスも心配になる。今後進められる教員の働き方改革では、子どもに向き合うゆとりをまず確保するという大前提のもとで業務や役割分担を整理していく必要がある。

 子どもたちの悩みを受け止める役割のスクールカウンセラーは非常勤で複数の学校を掛け持ちしている場合もある。多忙な教員と、時間が限られたカウンセラーでは十分な情報共有が難しい場合もあるようだ。人数を増やすだけでなく、いかに実効性を高めていくかを検討するべきだろう。

 不登校の増加は、二〇一六年に子どもたちの休養の必要性を認めた教育機会確保法が成立したことで、学校以外の選択肢を選びやすくなったという側面もある。昨年末の文科省の調査によると、不登校の受け皿となる教育支援センターを設置する自治体は増加傾向にあり六割に上る。

 世田谷区は今年、三カ所目となるセンターの運営を、フリースクールを営むNPO法人東京シューレに委託した。フリースクールは教育内容に柔軟性がある半面、公的支援がなく、安くはない授業料が親にとっては一つの壁となっていた。経済的負担を増大させない公立施設で、民間の蓄積を生かす試みとして注目したい。

 学校と別の受け皿があることについて、子どもや保護者にきちんと周知することも自治体には求められる。

 

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