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美しい国づくり政策大綱(本文)
参考資料1:美しい国づくり政策大綱のポイント
参考資料2:屋外広告物撤去・電線類地中化イメージ
参考資料3:取り組みイメージ
美しい国づくり政策大綱
平成15年7月 国土交通省
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- 目 次 -
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前文 | ||||||||||
戦後、我が国はすばらしい経済発展を成し遂げ、今やEU、米国と並ぶ3極のうちの1つに数えられるに至った。戦後の荒廃した国土や焼け野原となった都市を思い起こすとき、まさに奇蹟である。 国土交通省及びその前身である運輸省、建設省、北海道開発庁、国土庁は、交通政策、社会資本整備、国土政策等を担当し、この経済発展の基盤づくりに邁進してきた。 その結果、社会資本はある程度量的には充足されたが、我が国土は、国民一人一人にとって、本当に魅力あるものとなったのであろうか?。 都市には電線がはりめぐらされ、緑が少なく、家々はブロック塀で囲まれ、ビルの高さは不揃いであり、看板、標識が雑然と立ち並び、美しさとはほど遠い風景となっている。四季折々に美しい変化を見せる我が国の自然に較べて、都市や田園、海岸における人工景観は著しく見劣りがする。 美しさは心のあり様とも深く結びついている。私達は、社会資本の整備を目的でなく手段であることをはっきり認識していたか?、量的充足を追求するあまり、質の面でおろそかな部分がなかったか?、等々率直に自らを省みる必要がある。また、ごみの不法投棄、タバコの吸い殻の投げ捨て、放置自転車等の情景は社会的モラルの欠如の表れでもある。 もとより、この国土を美しいものとする努力が営々と行われてきているのも事実であるが、厚みと広がりを伴った努力とは言いがたい状況にある。 国土交通省は、この国を魅力ある国にするために、まず、自ら襟を正し、その上で官民挙げての取り組みのきっかけを作るよう努力すべきと認識するに至った。そして、この国土を国民一人一人の資産として、我が国の美しい自然との調和を図りつつ整備し、次の世代に引き継ぐという理念の下、行政の方向を美しい国づくりに向けて大きく舵を切ることとした。 このため、本年1月から省内に「美し国づくり委員会」を組織し、延べ11回にのぼる議論を積み重ねてきた。課題は多々あるが、「美しさ」に絞って、それも具体的なアクションを念頭に置きながら、この政策大綱をまとめた。 これを契機に、美しい国づくり・地域づくりについて、国民一人一人の広範な議論、具体的取り組みへの参画が促進されることを期待する次第である。 | ||||||||||
Ⅰ 現状に対する認識と課題 | ||||||||||
(1)我が国の景観・風景の現状 我が国は地域による気候・風土の多様性、四季の変化に富んでおり、水と緑豊かな美しい自然景観・風景に恵まれている。その美しさは海外からも高い評価を得ている。 また、地域の歴史や文化に根ざした街なみ、建造物等が各地に残されており、それらの美しさ、価値が再発見され、保全や復元の取り組みが見られる。 他方、国土づくり、まちづくりにおいて、経済性や効率性、機能性を重視したため美しさへの配慮を欠いた雑然とした景観、無個性・画一的な景観等が各地で見られる。 公共的空間でのごみ投棄など国民のモラルを問われる事例も見られる。 美しさへの配慮を欠いていたという点では、公共事業をはじめ公共の営みも例外ではなかったと認識すべきである。 | ||||||||||
(2)これまでの取り組み このような現状に対し、これまでも良好な景観・風景を守り、あるいはつくり出すための様々な努力がなされてきた。行政としても良好な景観形成のための事業や規制・誘導策に取り組んできた。 美観地区等や独自の景観条例により良好な景観を形成(岡山県倉敷市)
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(3)景観形成の取り組みを取り巻く情勢 一方、近年、良好な景観形成に対する関心やニーズが一層高まる中、景観形成の取り組みを取り巻く情勢に様々な動きが見られる。眺望・景観をめぐる紛争が各地で発生していること、地域の景観問題への対応のため独自の条例を定める地方公共団体が増加していること、住民団体・NPOによる公共事業や公共的施設管理への参画が進んでいることなどが挙げられる。
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Ⅱ 美しい国づくりのための取り組みの基本的考え方 | ||||||||||
(1)取り組みの基本姿勢 ○地域の個性重視 歴史、文化、風土など地域の特性に根ざし、自然と人の営みの調和の下で地域の個性ある美しさを重視していくことが重要である。また、地域の個性は、その地域の人々だけではなく、そこを訪れる人々や専門家など外部の評価も踏まえることでより確かなものとなる。 ○美しさの内部目的化 美しさの形成を、公共事業や建築活動などの際の特別なグレードアップとして実施するのではなく、それらの実施に際し拠るべき原則の一つ、原則として実施すべき要素の一つとして位置付けるなど、行政及び国民の活動の内部目的とする。 ○良好な景観を守るための先行的、明示的な措置 現在有している地域の個性や美しさも漠然と人々に認識されているだけでは、老朽化や開発行為など他の要因により突然損なわれる場合がある。良好な景観を守るためには、地域住民自らの評価、自覚の上に立って、損なわれる前に法規制をかける等先行的・明示的措置を講ずることが重要である。 ○持続的な取り組み 景観・風景は長時間にわたって行政、国民個々人、企業等の様々な主体の役割分担と協働により形成されるものであり、各主体の持続的取り組みのための計画、組織、制度などのシステムの確立が重要である。 ○市場機能の積極的な活用 良好な景観形成が自律的に進むためには、住宅や建築物等の市場において、良好な景観の形成・保全に向けて各主体にとって経済的インセンティブが働くよう景観的な価値が適正に評価される等の環境整備を図り、市場機能を活用した景観の形成を促進することが重要である。 ○良質なものを長く使う姿勢と環境整備 我が国においては、特に戦後復興期以降、都市化、土地利用変化が急速に進展し、建物の更新が頻繁であった。このような状況では、無意識のうちに、「身の回りの景観・風景は所詮すぐに変わるもの」という認識に陥りやすく、良質なものをつくり、それを長く使うという意識を育てにくい。このような状況を改善するためには、良好な景観の要素となる良質なものに対し、その設計や施工に携わった者も含め、評価を与え、それを長く使う姿勢、及びそれを支える技術開発を含めた環境整備が重要である。
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(2)地域ごとの状況に応じた取り組みの考え方 ○美しさに関するコンセンサスの状況に応じた施策展開 地域の美しさが地域の歴史、文化、風土などに根ざし、また、美しさに対して多様な捉え方があることを踏まえると、地域の景観の現状やコンセンサスの程度によりこの問題に対する取り組みのあり方が異なってくる。取り組みにあたっては、住民との協働のもと、試行的に良好な景観を形成すること等によって、よりよい方策を検討し、コンセンサスの形成を図ることも重要である。 以下に典型的な取り組みの考え方を示す。 <悪い景観(景観阻害要因)とだれもが認めるものへの対応> 空を覆う電線類、周囲の景観と調和しないガードレールや海岸の消波ブロック、林立する捨て看板、公共的空間のごみなどはだれもが認める景観阻害要因である。これらの除却・改良について、必要不可欠な機能の確保を前提に、行政は積極的に対応すべきである。 景観阻害要因の除却により日常的な空間の質は相当改善するものであり、全体のレベルアップ、住民意識向上、コンセンサス形成のためにも、まず不良なものの改善が重要である。 <優れた景観とだれもが認めるものへの対応> 世界文化遺産や伝統的建造物群保存地区の歴史的景観、我が国を代表する日本三景の自然景観などだれもが認める優れた景観は行政と国民の責務として保全すべきである。 これらの地域での公共事業においては、景観への影響に特段の配慮を払うべきであり、事業実施の是非、工法等について慎重に検討する必要がある。 また、鎮守の森のように、その地域に住む人ならだれもが守りたいと思う景観もあり、このような地域景観への配慮も欠かせないものである。 一方、単に、既に形成された優れたものを守るにとどまらず、後世に残すべきシンボルとなるものをつくることや自然を再生することなど世代を超えて、または世代を経て初めて認められる優れた景観をつくることも、公共・民間を問わず現世代の重要な責務である。 <普通の地域(コンセンサスがないところ)での対応> 普通の住宅地や商店街、地方都市の駅前、郊外バイパスの沿道、身近な水辺など国民が日常的に接する普通の地域の大部分では、歴史性、風土性、文化性など地域の個性を規定するものがはっきりせず、どのような地域としていくかという点について住民のコンセンサスが形成されにくいというのが現状である。 このような地域では、コンセンサスを形成するプロセスを経る住民主体の地道な取り組みが重要である。例えば、比較的目標として分かりやすい水や緑を有効に活用した地域づくりを一つのきっかけとするなども考えられる。
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(3)各主体の役割と連携 ○住民、NPOの参画と主体的取り組み 美しい地域づくりのためには地域住民等個々人の自覚と身近な取り組みが必要である。公共事業等の実施や公共施設の管理においても美しさの質を上げるためには、住民、NPO等の力に期待できるところは大きく、一層の参画、さらには住民等が責任を持ち主体的に取り組むことを推進することが重要である。 ○地方公共団体、特に市町村の重要な役割 個性ある美しい地域づくりに関する取り組みの主体として地方公共団体の役割が重要である。特に地域や住民にもっとも身近な基礎的自治体である市町村の役割は大きい。 ○国の役割 地方公共団体や住民による取り組みへの支援や制度づくりなどの環境整備が国の中心的役割であるが、加えて、例えば世界に誇れ歴史に残るシンボルとなる特に優れたものをつくり出すというような先導的役割を果たすことも重要である。
○企業の市場における役割 市場機能を活用した良好な街なみなどの景観形成を促進していく上で、企業の役割は重要であるが、とりわけ住宅等建築物からまちづくりまで含めた様々な技術や経験を有する企業の役割は重要であり、市場における、自覚を持った企業活動の促進が重要である。 ○専門家の活用 よりレベルの高い美しさを実現するため公共事業の実施の際に専門家の一流の識見・知見を取り入れることや行政と国民とを媒介するなど専門家に求められる役割も大きく、様々な状況にふさわしい専門家の活用が重要である。また、美しさや景観に関連する専門分野は多岐にわたっており、これら多様な専門家の組織化・ネットワーク化も重要である。 ○施策連携、機関連携、協調 景観・風景は自然と公共施設、民間施設などから構成され、それらを管理する主体、それらに対する施策を所管する機関も様々である。良好な景観形成には様々な要素が全体として調和することが必要であり、その実現のためには事業などのハード施策と規制・誘導などのソフト施策の連携、行政機関相互や住民、企業等各主体との連携、協調が重要である。 また、全体として調和のあるものとするためには、関係者間での方針の合意や合意に向けた取り組みが重要である。 | ||||||||||
(4)各主体の取り組みの前提となる条件整備 ○人材育成 美しい国づくりは、美しさを感じ行動する個々人の取り組みの積み重ねによるものであり、広く国民に対する教育・普及活動と国や地方公共団体で景観行政に携わる職員、地域におけるリーダー、技能者などの人材育成が重要である。 ○情報提供等 行政や住民がそれぞれの取り組みを進めるためには、地域の景観の現状に関する情報や景観を考える上で必要となる基礎的情報の共有が必要不可欠である。行政が住民と協働してこれら景観に関する情報を収集・蓄積、提供・公開することが重要である。 ○技術開発 長持ちする良質なものをつくる技術、過去の優れたものを保存・活用するための補修・補強技術、優れた景観・美しいデザインを評価する技術、優れた環境を保全・悪い環境を改善する技術など景観形成のための技術開発が重要である。 | ||||||||||
Ⅲ 美しい国づくりのための施策展開 | ||||||||||
国土交通省は、美しい国づくりに向け、Ⅱ章「美しい国づくりのための取り組みの基本的考え方」に沿って、各主体によるこれまでの取り組みをさらに深化させるため、特に実効性確保を主眼においた下記の施策を具体的に展開していく。 短期間で重点的・集中的に取り組むべき事業については、目に見える成果を上げるためアクションプログラムとして事業ごとに一定年限内に達成すべき目標を具体的な数値目標等で示す。 さらに、実現を確かなものとするため具体的施策の措置状況等についてフォローアップを行っていく。
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15の具体的施策
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