EU首脳会議が離脱案を承認すれば、10月末の離脱に向けて一歩前進する=AP
【ブリュッセル=竹内康雄、ロンドン=篠崎健太】英国と欧州連合(EU)は17日、英国のEU離脱(ブレグジット)を巡る条件を修正することで合意した。焦点の北アイルランドの国境問題を巡り、英国がEUの関税同盟に残留する「安全策」の削除などが柱。英・EU双方で議会手続きなどが完了すれば、英国は10月31日にEUを離脱する。だが英与党からも反対論が出ており、議会承認には不透明さが残っている。
EUの欧州委員会は17日、離脱条件を定めた離脱協定と英EUの将来関係を盛り込んだ政治宣言の改定案を公表した。ユンケル欧州委員長は「公平でバランスのとれた合意を手に入れた」と強調した。ジョンソン英首相も「素晴らしい新合意に達した」と表明した。
交渉の焦点はアイルランド島の国境問題だった。英・EUは過去の紛争の再発を防ぐため物理的な国境を設けない方針で一致していたが、税関を設けずに関税を徴収する方法が見つからなかった。そのため、従来の協定案では具体策が見つかるまでは、英国がEUの関税同盟に事実上とどまる「安全策」を盛り込んでいた。
だが同協定案では英国の自主性が保てないと英議会が反発し、協定案は3度にわたって否決された。メイ前首相は退陣し、同規定の削除を訴えるジョンソン氏が7月に新首相に就任した。
新たな協定案では安全策を削除し、2020年末までの移行期間が終了すれば、EUの関税同盟から北アイルランドを含めた英全土が離脱する方針を盛り込んだ。一方、検査手続きを省略するため、北アイルランドに限って農産品や工業製品などでEU基準を引き続き適用する。北アイルランド議会には、4年ごとにEU基準の適用継続を判断できる権限を付与する。
欧州連合(EU)のバルニエ首席交渉官は記者会見で、英国とEUは将来の自由貿易協定(FTA)締結を目指す考えを明らかにした。
今後の焦点は、ジョンソン氏が新たな協定案について英議会の承認を得られるかどうかに移る。バルニエ氏によると、ジョンソン氏は17日朝のユンケル欧州委員長の電話協議で、英議会での承認獲得に自信を示した。だが英議会で与党は過半数を割っており、承認が得られるかは不透明な面もある。
英議会下院は19日に離脱案を審議する予定。北アイルランドを地盤とする閣外与党、民主統一党(DUP)のフォスター党首は17日朝の段階で、英とEUが検討していた新合意案に否定的な見解を示していた。最大野党・労働党のコービン党首も「メイ前首相の(従来の)離脱案よりも悪い」と批判した。
19日の英議会で離脱案が承認されない場合、ジョンソン政権は法律に基づき10月末からの離脱延期をEUに申請することを義務付けられる。