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(大久保)断言します。あんたには無理や。 信楽帰り。
父と母の思いを受けて喜美子は強く決意しました。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
おはようさん。(マスター)アハハハハ…。はよおますな。
新装開店したら また来て下さいね。
ええなあ。 楽しみにしてます。ハハッ お願いしときます。
(喜美子)おはようございます。何や?
忘れんうちに頂いたお金 お返ししときます。
(さだ)おお 早いねえ。おはようございます。
おはよう。 張り切ってるねえ。フフッ。
どういうこと?いや 信楽に帰れるからやろ?
帰りません。予定どおり ここで働かせてもらいます。
ええ!? いや 昨日は納得してたやん。
(ちや子)ただいま。(さだ)お帰り。
お帰りなさい。大変やね また朝まで?
お茶 頼んでもよろしい?もちろん。 すぐ ごはんしますよって。
(さだ)そやそや…。あっ… あの…。
あの… うちの話 聞いて頂けますか?
そんなに ここで働きたいん?はい! 聞いて頂けますか?
(圭介)どないしたんですか? みんな そろって。(さだ)ああ おはよう。
おはようございます。おはようございます。
おはようございます。おはよう。 ごめんな 起こしてもうたな。
いえいえ。僕もお茶濃いの お願いします。
あっ うちもいつもより濃いの飲みたいわ。はいよ。
(さだ)ず~っと起きてたん?再試験の勉強で…。
あの…。どないしたん?
何や 話聞いてほしいんやて。
何を?大久保さんのことです。
えっ?
大久保さんのことず~っと ず~っと考えてました。
あら。 何や 大久保さんのことやて。
うちには務まらんて 断言されました。
大久保さんが 今 うちの…柔道で言うところの対戦相手や。
…と思いました。アハッ。
うち 柔道やってましてん。草間さんいう人から草間流柔道。
何の話や。
おもろいな。聞きましょうよ。
草間流柔道は相手を敬うことから始めます。
大久保さんはお子さんを… 4人育て上げて厳しいおしゅうとめさんも看取って家ん中のこと
ごはん作ったり 掃除したり洗濯したりずっとやってきやった。そう聞きました。
すごいことやと思います。
すばらしいんとちゃいますか?すばらしいことやのに大久保さんは 家ん中の仕事は誰にで
もできる言わはりました。
そやろか?
大久保さんが作ったごはんは大久保さんにしか できひんのとちゃう?
ほらもう ゆうべのごはんえらいおいしかったです。
何の話や。
お皿のことも 心を込めて磨いたお皿はそうでないお皿と同じ?
う~ん そやろか?
うちは…うちは 「誰にでもできる仕事やない家ん中の仕事も すばらしい仕事や」いつか 「
あんたにしかできひん」いつか 「参りました」言わせてみたい。
そう思いました。
どうか雇って下さい。働かせて下さい!
戦わせて下さい お願いします!
♪~
戦うて 子ども相手にアホらしもない。
(大久保)さあ はよごはんの支度せんと。
フッ。
あ… うちが… うちが!?
大久保さ~ん この子にお茶いれてもろてええんやね~?
ありがとうございます!一生懸命 心を込めて働かせて頂きます!
ありがとうございます!ありがとうございます!
ありがとうございます!
ちゃっちゃとしなはれ!はい!
はあ…。ちや子さん また朝まで? 何か事件?
淀川の溺死体や。
自殺か他殺か 事故か事件か。
何や 「身元不明」や書いてありましたね。
何新聞!?ちや子さんとこの新聞や。
ああ 見てくれたんあれ 書いたん うちやで。
「30代から40代と見られる男の溺死体死後1週間か」。
何?ここ数日 顔合わせてへん。
朝 みんなでしゃべってる時も出てけえへんかったし…。
フフフフッ。
ここには もう一人 住人がいます。
一番広い部屋に 一番長く住んでいます。
雄太郎さん! おるの? おらんの!?
雄太郎さんちや子さんのこと苦手やから…。
(ノック)
雄太郎さ~ん? 圭介です。
圭ちゃんのことも顔見たら落ち込む言うてたで。
えっ 何で!?おんなじ男やのに何で こないちゃうねんやろう。
何 言うてますの。
雄太郎さ~ん?
ほら~ 反応せえへん。
あの~ 洗濯物大久保さんが ありますか言うてます。
ここ 挨拶した?田中雄太郎さんて人が住んでんねん。
市役所に勤めとったんやけど辞めてもうてな。
時々 閉じこもって出てけえへんねん。
ごはんもな 食べたり食べへんかったり。えっ…。
(ノック)おはようございます。川原喜美子と申します。
まだお休みとちゃいますか?
ほんまに淀川やったらしゃれ ならんな。
淀川?
淀川の溺死体 30代から40代の男や。雄太郎さんも 30代から40代の男や。
ちょっと変わったことする人やから。
ちや子さんには言われたないやろうけどな。
(ノック)田中さん!? 雄太郎さん!?
いやはったら 出てきて下さい!
雄太郎さん!?
おはようございます。
雄太郎さんですか?
兄さ~ん?弟さん…雄太郎さん 中にいやはるんですね?
兄さん? 呼んではる。
弟さん いやはったんですね。
うっす。 ういっす。
おお うっす。雄太郎さん?
雄太郎。 お前も挨拶しい!
えっ?3つ子。 うん。
3つ子?うん。ああ 3つ子。うん うん。
3つ子。ほら ぐずぐずせんと 雄太郎 お前!
挨拶せんか お前は!あっ 怒… 怒らんといて下さい!
・痛い 兄貴 何すんねん。殴らんといて!
あの… そんな怒らんといて下さい。・兄さん やめたげて!
やめて下さい!・(女性の声まねで)やめたげて~!
お… 女の人もいやはるんですか!?あの…。
どうも。 田中雄太郎です。
ちょっとどころかかなり変わったことをする人でした。
アハハハハッ 楽しい! アハハハハハ…。
何それ~!?
荒木荘の朝は早いです。
慣れないうちは4時半に起きるようにと言われました。
表の掃き掃除。
おはようございます。おはようございます。
はい どうぞ。ご苦労さまです。どうも。
廊下の掃き掃除。
掃く場所や たまるゴミの違いによってほうきを使い分けるよう考えなさいと言われました。
おはようございます。おはようさん。
♪~
いつまで洗うてなはんねんな。ちゃっちゃと炊きなはんかいな。
すみません。
あ~。 あ~ おはようさん。おはようございます。
荒木荘の人たちは 起きてくる時間も出かける時間も違います。
はい ほな行ってきます。よいしょ…。
おはよう。おはようございます。
頼まれたら お弁当も用意します。
どうぞ。(圭介)ありがとう。
お気を付けて。行ってきます。(大久保)行ってらっしゃい。
ほな 一升 お頼申します。 うん。
・毎度~。それと…。は~い。
今日は…。今日はね タケノコ ええのおまっせ。
今日はね タマネギ3つ…。
買い物や御用聞きの応対も大事な仕事です。
洗濯は 家族ではないのでまとめて洗うことはできません。
きちんと分けます。
あの~…。おはようさん。
おはようございます。おはよう。 何か 食べるもんある?
あるで。 はい。はい。
市役所勤めを辞めた雄太郎さんが何をしているかは分かりません。
住人の私生活の詮索は遠慮するようにと言われました。
冷たくなったごはんは蒸し器で蒸して 温め直します。
お待たせしました。
夕ごはんも みんなバラバラ好みも それぞれ違います。
おいしいですよ。
頂きます。
そのつど そのつど用意して…。
どうぞ。ありがとう。
空いた時間に自分のごはん。
お帰りなさい。ただいま。(大久保)お帰りやす。
ごはん…。はい 今すぐ。
覚えること 考えること いっぱいあって自由な時間は ほとんどありません。
ほっとするのは 寝る前のひとときです。
でも 喜美子は初めての葉書にこう書きました。
「お母ちゃん 楽しいで~!」。