黒木昭雄の「たった一人の捜査本部」

小原勝幸を容疑者とするこの事件は、言いようのない不正義な社会構造を見せつける事になった。遺作小説『神様でも間違う』完成。

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警察からの「自衛」に立ち上がった住民 p201-203
 
 「取り締まり対象の店で飲むな。節度ある飲酒を心がけろ。
ハシゴ酒をするな。酒を飲んでも飲まれるな。飲酒時に職務執行するな」これは、われわれが警察官になりたてのころから、耳にタコができるほど上司に言われつづけてきた言葉だが、今回の鷹巣警察署の件では、そのすべてが守られなかった。
 
管轄する警察署長みずから管内になじみの店をつくり、事前に計画されていた「立ち入り検査」としながらも、その三時間前まで検査対象の店のひとつで飲食し、あげくトラブルを起こしていたのだから、言い訳はいっさい通用しない。
 
 A署長とB次長は事件発覚後、秋田県警本部長から「本部長訓戒」を受け、A署長はほぽ同時に辞表を提出。それは県警幹部の慰留発言もなくあっさりと受理されたのだが、当人は退職理由をつぎのように述べた。
 
 一言でいえば『個人として組織が嫌になったから』です。事件がきっかけだとあなたたちは見るでしょうが、そんなことはありません。『懲戒処分』が下っての退職ならわかりますが、今回は『本部長訓戒』ですよ。(言ってみれば)『注意』みたいなものですから……」
 
 今回の事件でどうしても解せないことがある。
 
警察側は「鷹巣警察署管内の秩序が乱れていた」と主張するが、近所の飲食店主らは口をそろえて、「鷹巣警察署管内は静かな町で、過去に風俗がらみの事件が起きたなんて聞いたことない」と証言するのだ。
 
 しかもB次長は秋田県警管内で最大規模を誇る秋田警察署から同署に栄転してきた人物で、秋田警察署時代には生活安全課長だったというから、その主管である風俗営業に関して当然詳しい情報を得られる立場にいた。
 
そして、鷹巣警察署管内の風俗営業店で警察による「立ち入り検査」がおこなわれなかったのは、管内が平穏で安全な町だったからだ、ということを知っていたはずなのだ。とにかく、県警の主張と町の実情は矛盾だらけだった。
 
 事件後、「警察の横暴に個人では勝てないから」と、今までなかった飲食店組合結成の動きが持ちあがっているというが、「警察から身を守る」ために組合が誕生するのだから、まさに本末転倒である。
 
 一方、異例ともいうべき監察官を起用した調査活動の桔果、秋田県警本部は素早く対処し、両名に「本部長訓戒」を与えて事の終息をはかったが、事の仔細を私に説明した広報官ですら「今年の人事異動も終わっているし、実質今の段階では全員を動かすことはできません」と、苦りきっていた。
 
 全国的に吹き荒れる警察不祥事の嵐はいっこうに衰えを見せない。
 
前項でとりあげた警視庁本富士警察署の指印偽造の不祥事といい、この秋田県警による組織的隠蔽・捏造事件といい、危機管理の欠如が生みだした構造的な不祥事なのかもしれない。もしそうであるなら、これからもこうした不祥事の再発を防止できるとは思えない。
 
 
 

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開​設日​: ​20​09​/5​/1​7(​日)​

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