◇13日 ラグビーW杯1次リーグA組 日本28-21スコットランド(日産スタジアム)
「特別な瞬間に立ち会えてうれしいと思う。選手たちは最高のプレーをしたと思う」。スタンドのジョセフ・ヘッドコーチ(HC)は柔和な笑みを浮かべ、スタッフと抱き合った。
王国ニュージーランド出身、元オールブラックスの指揮官は「ワンチーム」を掲げ、家族のようなチームになるよう尽力。選手にはグラウンド内外で、チームへの忠誠心、献身を求めた。ただ練習で体はいじめ抜いても、心を追い詰めないのが指導流儀だ。ミーティングは極力、リーチ主将らリーダー陣に任せた。ホテルの服装にまで口を出したジョーンズ前HCとは対照的に、グラウンド外では寛大だった。
合宿の合間には連休を設け、地元や家族のもとへ選手を帰らせた。W杯直前の南アフリカ戦後も6日間の休息を与えるほど、選手の自主性を重んじた。藤井強化委員長は「選手がラグビー以外でエナジーをためる環境をつくった」と説明する。
そんなジョセフHCの闘争心は選手に引き継がれた。前半から稲垣、ムーア、ラブスカフニらFW陣が、スコットランドの巨漢の前進を好タックルで封じ、両WTBがトライ。必然の勝利で、日本ラグビー界の歴史に新たな1ページを刻んだ。