リーチの言葉には“こぶし”が宿る。ニュージーランド出身の主将は日本語も巧みに操る。大一番を前には「勝つためには、優しい気持ちは必要ない。鬼にならないといけない」と鼓舞。その根底には演歌の名曲が流れている。
15歳で札幌山の手高に留学。まだ、心身ともに“細身”だった少年はホームシックになった。その時、佐藤幹夫監督が「明るくなるから」と手渡したのが「北酒場」。関係者によると、細川たかしの歌声を繰り返し耳に入れて日本語を覚え、今ではトレーニング中も愛聴しているという。16年間支えとなった。
4年前―。北海道出身の細川はリーチと「北酒場」の逸話を伝え聞き、感激した。「道民としてうれしい」と直筆のサインとCDを経営するカフェに贈り、本人も「これはうれしい」とツイートした。「日本の厳しさ、日本の文化を学んだ。日本のラグビーで強くなった」。細身の少年は大男になり、“こぶし”も強く、固くなった。♪北の酒場通りには~。言葉で日本中を奮わせる主将がいた。