日本には、その地域独自の食材や料理がありますよね。
僕がライフワークとして巡っている離島にも珍しいものはたくさんありますが、東京都の島々・伊豆諸島には、特産品と言える「明日葉」なる万能食材があるのをご存知でしょうか。
セリ科の野菜で独特の苦味があり、その用途もさまざま。伊豆諸島では、天ぷらやおひたし、ツナマヨ和えなどの料理から、粉末にしたものを蕎麦やうどんといった麺類に練り込んだり、さらにはソフトクリームやクッキーなどのスイーツにまで使われ、ご当地グルメやお土産として親しまれています。
▲明日葉料理の一例(「『西野農園』明日葉スタッフ」のInstagramより)
東京の島の特産品なのにまだまだ知られていない明日葉ですが、生産・加工・販売までを一貫して行っている農園が三宅島にありました。
さっそく注文してみたところ、注文翌日の朝摘まれた明日葉が、首都圏なら船さえ出れば二日後くらいにはもう届く。
ラップをとって水につけて、縦にして冷蔵庫で一晩寝かせておけば、葉っぱがぶわっと広がってすごい量になるんですよね。まさに今採ってきたばかりのような瑞々しさに感動したんです。
縁もゆかりもない三宅島でゼロから農業を
そうしたきっかけから今回お伺いしたのが、「西野農園」さん。三宅島の北西部、伊豆地区にある工場の併設された事務所内で、最近商品化されたという焙煎明日葉茶をいただきながら、代表の西野直樹さんにお話を伺いました。
──西野さんは、元々三宅島の方ではなかったんですよね? なぜ移住先に三宅島を選ばれたんですか?
西野直樹さん(以下、敬称略):海が好きだったので、東京水産大学(現・東京海洋大学)に行きまして、卒業後は水産関係の仕事に就きました。
それなりに忙しくしていてやりがいもあったんですが、サラリーマンとしてずっと働き続けるよりも「自然の中で自然相手に仕事したいな」という気持ちが強くなっていったんです。
そして29歳の時、結婚もしたばかりだったんですが、会社を辞めてどこかに移住しようと考えました。伊豆諸島なら海も山もあり自然が豊富で、東京からそんなに遠くないし、その中でも真ん中あたりの島がいいかな、という感じで、あまり深く考えずに三宅島を選んだんです。
──そうだったんですね。西野農園さんのホームページを拝見したのですが、最初は漁業関係のお仕事をされていたんですよね。
西野:ええ、水産大学出身だったので。
──それがなぜ途中から、農業を始められたんですか?
西野:漁業だけだと天候に左右されやすく、時化(しけ)も多くて、収入も安定しないんですね。一家で暮らしていくには不安だったので、それなら農業かな、と思ったんです。
その当時、レザーリーフファン(通称レザーファン)という、生花やフラワーアレンジメントに使われる切り葉の栽培が伊豆諸島で盛んだったので、私も栽培を始めました。
そうこうしているうちにもっと収入が必要になってきたので、ユリなどの栽培も始め、漁業よりは安定して売上を立てられる農業の方に比重が移っていったということです。
当初は漁業6:農業4くらいの割合だったのが、だんだん農業のほうが大きくなり、漁業2:農業8くらいでずっとやってきました。
──農業は全く未経験だったんですよね?
西野:まあ、最初は見よう見まねで(笑)。
──レザーファンとユリでは、育てるノウハウも違ったりするじゃないですか。当初は色んな方に聞きに行ったり手伝いに行ったり、という感じだったんですか?
西野:自己流の部分も多いですね。特にユリは、島でほとんどやってなかったですしね。
▲ハウスで育てられるユリ(写真提供:西野さん)
──島の他の農家から「作り方を教えてほしい」と言われたりしなかったんですか?
西野:言われなかったですね。島ではお金をかけて行う農業って、あまり一般的じゃないんですよ。
球根を購入して、ハウスに植え付けて、灯油を炊いて……と、設備投資やランニングコストもかかりますし、それでいてリスクも大きい。島の人は普通、そんなことはやりたがらないです。
──そこまでのことをしたのはなぜですか? 島であれば日もよく当たるし、育ちやすい作物は他にいくらでもあったと思うんですが。
西野:そういう作りやすいものを作って売っていくというのは、販路は市場になるわけです。市場に出荷するというのは、値段を決められてしまうということ。
「市場外流通で付加価値をつける」という方法でないと、私のようなゼロから島で農業をする人間が収益を上げることは、なかなか難しいと判断しました。
──なるほど、だから市場出荷ではなく、「産直」なんですね。
西野:それが今の明日葉にもつながっていくんです。
──他に明日葉を栽培してる方はたくさんいらっしゃいますが、「自分のところで加工して、市場を通さないで消費者に直に届ける」というのが、一番最初から変わらない、西野さんのスタンスなんですね。
西野:こういう中山間地、離島などは、農作物は作ろうと思えば作れるんだけど、売るのが難しい。だから市場に任せよう、というのが一般的です。
それに、昔から島で農業をされてる方は、自分の土地があって、家もありますが、私は“Iターン”、つまり新規就農者ってわけです。
自分で土地を借りて、ハウスを作って、投資するとなると、収益率がある程度高くないと成り立たないんですよ。市場外流通から得られる収益で、費用をかけた分の借金を返していきました。
噴火からの全島避難と再起、帰島後の苦戦
──その後しばらくは、レザーファンとユリ栽培でうまく回ってたんですよね。
西野:ええ。しかし、それが2000年の三宅島の噴火で何もかもなくなってしまい、借金だけが残ってしまったんです。
そうすると、普通のことをやってももう返せないんですよね(笑)。
▲周期的に訪れる三宅島の噴火は、景観にもよく表れている
──普通に考えたら「もう農家をやめようかな」となります……。もしよければ、その辺りのこともお伺いしたいんですが。噴火後は、島民全員が島外へ避難となりましたよね。
西野:最初は家族全員で本土(東京都内)に避難しました。当初は噴火の影響が長引かないと思ったからだったんですが。
それが長期化するとわかって、本土で待ってても仕事があるわけでもないし、再建する見通しもない、借金もあるしで、ひとまず三宅島に近くて環境も似ているところで同じような仕事を再開して、避難解除になったらまた三宅島に戻ろう、と考えました。
そこで、八丈島に移ったんです。
──三宅島の時と同じように、お花の栽培を始められたと。八丈島に移ってすぐに農地は見つかったんですか?
西野:八丈島の知り合いに、島の農業への影響力を持ってる方がいらして、相談したらハウスを貸してくださったんです。再開してすぐということもあり、八丈島では規模が限られていたので、ユリに絞って栽培を始めました。
▲八丈島へ移り、ユリ栽培を再開した頃(写真提供:西野さん)
──最初は西野さんお一人で八丈島に移ったんですか?
西野:避難していた時は、単身で八丈島に移ってユリ栽培をして、途中から女房も八丈島に来て二人でやってました。
4年半経って全島避難解除があって三宅島に戻り、こっちでもユリを再開したんです。ところが、当時は火山ガスの影響で島と本州を行き来する飛行機が使えないという状況でした。お客様が欲しいときに開花するように出荷するものなので、海況によって欠航することがある船ではだめなんです。
それで、三宅島でのユリ栽培は断念。八丈島のみで栽培を続けたのですが、避難解除されて数年の三宅島の土地は、やはり火山ガスが多くてレザーファンなども育てられない状況でした。そんな島で何をやればいいのか、考えなければならなかった。
そこで、火山ガスに強くて伊豆諸島の特産物としての知名度もあるということで、明日葉の栽培を選択したんです。
──そこから明日葉栽培が中心となっていくんですね。
西野:まずは島に戻って明日葉栽培を始めるんですが、私には多くの借金が残っていました。最初に三宅島で、次に避難中の八丈島で、再び三宅島に戻ってきてからの三度、投資しているわけです。
それに加えて、家も土地も買っていますから、金額にすると数千万円くらいの借金になってしまったわけです。
──凄まじいですね……。ゼロからスタートどころか、マイナスからのスタートを二回も経験されてるわけですね。でも、島に戻った直後は火山灰などで農地は荒れてるわけじゃないですか。復旧などはどうしたんですか?
西野:噴火は災害なので、国が事業として農地の復旧まではしてくれるんです。残っていたハウスなんかは朽ち果てて瓦礫みたいになっていたので撤去し、雑草に覆われていたのでそれも刈り取って、耕して、農地へと戻していく。
綺麗にしてくれたのでそれはよかったんですが、ハウスも何もかもなくなってしまったので、そこからまたやり直さないといけない。それにプラスして借金を返さなきゃいけないということなんですが、普通のやり方では返せない。
どうするかというと、明日葉を加工して付加価値をつけ、消費者に買ってもらうしかない、と。
▲西野農園さんが栽培した明日葉や島唐辛子を利用した加工品の数々
──加工品づくりのためにはまず明日葉栽培を開始するところからだと思いますが、全島避難解除が2005年ですよね。農地が回復して明日葉の栽培を開始したのはいつからですか?
西野:2006年から植え付けを開始しました。加工工場を作るのに1,200万円くらいかかったんですが、債務超過なのでお金の出処がないわけです。
── そんな額を、一体どうやって融資してもらったんですか……?
西野:三宅島の七島信用組合の方で、私の融資を噴火以前の最初の頃から担当してくださった方がいらっしゃるんですが、その方が周りを説得して融資をしてくださったんです。それがあったから、明日葉の加工品のための工場を作ることができたんですね。
──人の縁に救われたんですね。明日葉の加工品を始められたのは、いつからですか?
西野:2007年くらいからですね。乾燥させた明日葉を粉砕機で粉にするんですが、粉にしたものをアルミパックに手詰めして、それをインターネットで売り始めました。とはいえ、最初はそんなに売れないので赤字です。
八丈島の友人が宣伝に協力してくださって、そこから2年くらいで伸びていって、3年目には黒字となりました。
──3年で黒字って、島で新しい事業を始めたということを考えると、すごいと思います。
西野:明日葉を自分のところで栽培し、加工して、販売して、っていう人がそんなにいなかったからじゃないかな。お米なら結構いますけどね、ある意味恵まれていたというか。
明日葉栽培の知られざる苦労
──また三宅島に戻ってきた辺りのお話を伺えてよかったです。現在は明日葉をメインに栽培されているわけですが、「三宅島でよかったな」と思うことってありますか?
西野:それについては、明日葉畑を見ながらお話しましょう。
西野さんはそう言って、加工工場兼事務所から車で5分ほどの明日葉畑に案内してくれました。
島を一周するメインの道路から、山側の細い脇道に入ってしばらく行くと、林を切り開いた畑が広がっていて、島の方であろうお年寄りが畑仕事をしている最中でした。
西野:こちらの方は関さん。私なんかよりずっと明日葉に詳しくて、色々お任せしてやってもらってます。
▲関さんは、笑顔が人懐っこい島のおじいさん、という印象
──明日葉は好きなので何度も食べているのですが、こうやって畑を見るのは初めてです。
西野:現在、明日葉の栽培は八丈島と三宅島、両方でやっているんですが、八丈島は明日葉の生育には適したところで、生産性は高いです。三宅島は生産性で言えば少し落ちるものの、八丈島に比べて病害虫が少ないですね。農薬を使わなくても作りやすいと言えます。
──三宅島に限らずですが、伊豆諸島全体で火山灰土などの土壌が明日葉に向いている、ということはありますか。
西野:ええ。向いているから自生していて、特産品になるわけですね。
──自生しているものと、栽培したものとで、柔らかさとか味に違いがあったりするんでしょうか。
西野:そこの木に囲まれて半分日陰になる畑の明日葉は、「密植」と言って少し詰めて植え、肥料も欠かさないようやります。そうやって管理して育てると、生鮮用に向いた柔らかく美味しい明日葉に育ちます。
逆に粉末などの加工品にするものは、日向で大きく育つよう広く植えます。加工するので、葉が固くなっても大丈夫です。
──育てる畑によって違うんですね。
西野:生鮮用は、市場出荷ではなく産直なので注文が入るたびに畑に行って収穫しているため、まとめて収穫ということはしていません。茎から新芽が出て開いたばかりのものを、手で刈っていきます。
芽が開いていないものは出荷できないので、これくらいになるまで待ちます。
西野:さらに2、3日たって芽が開ききって固くなってしまうと、生鮮用としては出荷できなくなります。加工品にする場合は、そういったものを大きく育ててから収穫するんです。
──生鮮用はそんな手間がかかってるんですね。
西野:普通の野菜は株ごとバサッと刈り取りますが、生鮮用の明日葉は出荷に適したものが各株にぱらぱらと出ているので、選びながら収穫しないといけないんです。なので、どうしてもお値段が普通の野菜より高くなる。
▲実際に柔らかい新芽を摘みながら生鮮用明日葉について教えていただいた
──よく明日葉は「今日摘んでも明日新しい葉が出てくるから明日葉」と言われていますが、実際はどうなんですか?
西野:確かに明日葉は「今日摘んで明日芽が出る」と言われていますが、出荷できる状態になるわけではないんです。
──さすがにそこまでものすごいスピードで育つわけではないんですね。
西野:明日葉は、秋に種を撒けば冬に芽を出して、春に大きくなって、早いものは春の後半ぐらいから、普通は秋くらいから本格的に出荷を開始します。種を蒔いてからは、1年弱くらいで収穫できるようになります。
多年草なので、通常は2年くらいで花が咲いて枯れるんですが、生鮮用は密植して小さいうちに収穫しているので、花が咲くまで大きくなるのにはもう少しかかります。一つの株で、生鮮用はおよそ3年くらい、加工用に大きく広く育てているものは2年くらい、収穫を続けられます。
──西野さんなりの明日葉の栽培のこだわりはありますか?
西野:うちの明日葉は生鮮用・加工用とも、無農薬で育てています。農薬は使っちゃだめとかいうのはなくて、使う人は使うし、使わない人は使わない。でもそれが市場出荷になると、「農薬を使ってないものが欲しい」と消費者が思っても、パッと見はわからないんですね。
それに、農薬は食べる人よりも、撒く人のリスクが大きいです。濃度の濃いものを大量に撒くので、それを吸ったりしたときのリスクは大きい。そういうことを、自分はしたくないし、働いている人にもしてほしくない。
伊豆諸島は明日葉の原産地で自生もしているし、品種改良もされていないので、一般的な野菜よりは病害虫には強いのも特徴です。なので、農薬を使わなくてもなんとかなります。
──生産者の顔がわかって、どうやって作っているのかもわかる、というのはこれからさらに求められると思います。
西野:そうですね。うちの場合は作った人が分かるし、毎年残留農薬検査もしているので、農薬を使っていないということもはっきりしています。それに、産直なので新鮮。その代わり、値段は他のより少し張ります。
青汁ブームで生産量増加から一転、また振り出しに
──生鮮明日葉の販売を始められたのは最近ですよね。
西野:2018年からですね。
──今まで販売してこなかったというのは、なにか理由があるんですか。
西野:手間と、採算性ですね。他の農家さんが出荷している従来の市場に流通させても、採算が合わないと感じていたんです。
島の一般的な農家さんは家族経営なので人件費をあまり意識されていないのですが、うちは従業員を抱えているのでそのコストの問題が大きかったですね。
──今このタイミングで始められたのは、加工品が軌道に乗ったからというのがありますか?
西野:それだけではないですね。ここ数年、様々な変化があったんです。
うちは当初から加工品を個人のお客様に直接買っていただいて、少しずつ売り上げを伸ばして黒字化しました。ここ数年は青汁ブームもあり、原料としての明日葉の引き合いも強くなって。
明日葉を個人のお客様向けの商品にするのではなく、乾燥チップのまま業者さんへ卸すという需要が伸びてきたんです。機械も創業時は3台体制でしたが追いつかなくなって、2台増やしました。
▲明日葉粉末の原料となる乾燥させた明日葉
──まさにブームが追い風になった形ですね。
西野:一昨年から去年は青汁業界全体が原料不足だったようで、色んなところからうちに注文が来ていたんです。
ところが、ブームを先導していた会社が消費者庁から景表法違反の指摘を受けた影響が大きく、うちの売り上げもガクッと落ちたわけです。なので、今年は追加した機械を動かしてないんですよ。
──ええー……あっという間にブームが終わったんですか。
西野:ブームに乗ってうちの青汁用原料生産も増えていったんですが、去年はそれが激減したわけです。それで別の販路を考えなきゃいけなくなった。
そこで、「生鮮明日葉の販売を考えてみようか」となりました。始めたばかりで、これからどうなっていくかはまだわからないですが。
──僕と同じように、注文して感動するお客さんって結構いるんじゃないかと思うんです。
西野:ありがとうございます。そういうお客様をどれだけ増やせるかが、今の課題ですね。値段的にも決して安くないものなので、それで満足してくださるお客様が例えば300人、500人と集まれば、軌道に乗っていくかなと思います。
持続できるコンパクトな経営を目指して
▲最近商品化された焙煎明日葉茶をいただきながら、インタビューさせていただいた。独特の苦味がクセになる
──ところで、西野さんが考える、一番美味しい明日葉の食べ方ってなんですか?
西野:食べて美味しいっていうと、天ぷらですね。自分で作ると美味しくならないんですが(笑)
▲明日葉の天ぷら(「『西野農園』明日葉スタッフ」のInstagramより)
──ええっ、そうなんですか(笑)
西野:ちゃんとしたプロというか、料理の上手な方にかかったらやっぱり美味しいですね。自分でやるとベチャってなっちゃうんですよね。
──シソの天ぷらが好きな方って、明日葉の天ぷらもきっと好きになってくれると思うんです。
西野:そうですね。生鮮の産直も、個人の方だけではなく、天ぷら屋さんなどの料理店や居酒屋さんに使ってもらえるような、販路の開拓ができればやってみたいな、と思っています。
それと、島唐辛子を八丈島で作ってるんですが、それの販路開拓もやりたいですね。
──やはり後は販路と認知ですね。西野農園さんのFacebookページもあるじゃないですか。あちらは細かく更新されてますよね。明日葉を使ったレシピ集が充実していて、参考になります。
西野:そういうのを見ていただいて明日葉を楽しんでもらえたらと思っていますが、やっぱり島なので送料がネックなんですよね。明日葉6束で送料込みの3,000円です。
▲今年に入ってからは、オーストリアの大学の研究で明日葉に含まれる成分「カルコン」にアンチエイジング効果があると発表され、注目されつつある
──単に6束と聞くと少なく思えるんですが、実際には結構使い出がありました。量がかなりあって、うちでも二人で「こんなに毎日食べられるんだ」って驚きました。
西野:そうなんです、それに他の野菜に比べて日持ちします。ひと束500円を高いと感じる人もいるし、500円の価値があると思ってくれる人もいます。その500円で買い続けたいという人に、どうやって認知を広げていくかが課題ですね。
──最後の質問なんですが、これからの西野農園さんとしての目標があったら教えてください。
西野:そうですね、経営的にはまだスケールが小さすぎると思ってます。自分としてはコンパクトな経営はいいと思ってはいますが、小さすぎると持続していけない。
──なにかあったら維持できない、と。
西野:そうです。安定して持続できてなおかつコンパクト、というところまでは行けていない。農地や作物の量と売上も足らない。それを実現するために、生産量を上げるのと販路を広げる、両方ともまだちょっと足らないかなと。
──今も農地を開墾されてますよね。
西野:やはり農地をもっと広げていきたいですね。明日葉の加工品を買ってくださる健康食品ファンのお客様も、生鮮を買っていただくお客様も増やしたいし、青汁原料は青汁原料で増やしていきたいし、飲料メーカーさんとの提携も進めていきたい。
あとは、明日葉そのものの認知度がまだまだ高くないので、そこをなんとかしたいです。
▲去年開墾した畑には、育ち始めた小さな明日葉が並んでいた
──西野農園さんのホームページもリニューアルされましたし、Facebook、Twitterも細かく更新されています。少しずつですが、これからファンも増えていくと思います。ぜひ頑張ってください。ありがとうございました。
三宅島は、およそ50年周期で噴火を繰り返す島だと言われています。その噴火のたびに、島の人は自然への畏れを抱きながら、それでも島で生きるという選択を続けてきたのだと、西野さんのお話を聞きながら考え込んでしまいました。
この島の明日葉が、いつか日本全国でも普通に買える日が来るのを楽しみにしたいと思います。
書いた人:いづやん
島旅研究家、島旅フォトライター。本業のWeb制作のかたわら、休みのたびに日本の離島を巡り歩いては写真を撮り、ブログを書き、イベントで話したり、同人誌を作って離島の魅力を発信しています。人生初離島は小笠原、一番通っているのは八丈島。
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