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3・11炉心融解を予言した医師が警鐘 台風に続く「噴火と地震」

それでも原発を止めない日本

「想定外」ではない

医師で作家の石黒耀さん(65)をご存知だろうか。デビュー作『死都日本』(2002年刊行)は、霧島火山が破局噴火し、南九州が壊滅、日本全土が火山灰に覆われさらには他の火山の噴火をも誘導するという斬新な未来小説だった(破局噴火=破局的噴火。山体が崩壊するほどの爆発的大噴火。超巨大火砕流も発生させる)。日本の火山学会は、そのデータの正確さ、科学的根拠に基づく具体的な記述に衝撃を受け、石黒さんを招いてシンポジウムを催したほどだった。

 

第2作の『震災列島』では、東海地震、東南海地震が連動して起こり、浜岡原発がメルトダウン、首都圏から中京圏まで広範囲にわたって日本列島に甚大な被害が出る様子を描いた。そして、『震災列島』の刊行から7年、まるで本書の内容をなぞるかのように福島第一原発のメルトダウンが起きるわけである。震災後、多くの科学者たちが「想定外だった」と口にしたが、石黒さんからすれば地震(全外部電源の喪失)による炉心溶融は十分に想定しえたことだったのだ。

世界中の火山の7%が集中する火山列島であり、4つのプレートに乗る有数の地震国である日本の未来を誰よりも案じる石黒さんに、「災害国ニッポンの生きる道」について訊いた。

大阪市内で医師として勤務する傍ら、執筆を行っている石黒燿氏

──いまも日常的に日本各地で火山の噴火が続いています。富士山をはじめ、日本の火山の活動は活発になってきているのでしょうか。

石黒:たとえば、鹿児島の姶良(あいら)カルデラ(ポルトガル語で大鍋。巨大火口を持つ火山)が小噴火して、桜島と大隅半島がつながって半島になったのが1914年(大正3年)のことでした。ちょうど100年ちょっと前の話ですが、その直後から比べたら、今はだいぶ危険な状態になっています。このときの噴火はカルデラ噴火としては小規模でしたが、噴煙は1万メートルに達し、火山灰は九州から東北地方にまで達したという大噴火でした。

あるいは、僕が『死都日本』を書いたとき、霧島火山のカルデラは、まだ生きているカルデラだと僕は言ったんですが、多くの学者さんたちは、それはないと見ていた。でも、今は、巨大なマグマ溜まりが見つかり、ちゃんと生きているということが証明された。

富士山も1707年に大噴火(宝永の大噴火)してから、310年以上が過ぎているわけで、いつ覚醒してもおかしくないわけです。実際、東日本大震災の4日後、富士山直下のマグマ溜まりがあると想像されるあたりを震源に、マグニチュード6.4の地震が発生したりしています。さらに言えば、宝永の大噴火は、南海トラフで巨大地震が発生して49日後に起きています。

私たちは、そういう大火山列島の上で生活しているということを常に忘れない、ということが大事です。