「部長、休日にランチの写真載せないで」オフに上司や職場と「つながらない権利」を

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夜のメール対応にうんざりする人も多いのでは

WSW1985/shutterstock。

「休日でも名指しでグループチャットに質問が来るから気が休まらない」「勤務時間を過ぎても携帯電話が鳴り続ける」

勤務時間外のチャットやメールへの対応について、頭を悩ませる人も多いだろう。「つながらない権利」は、労働者が勤務時間外や休日に仕事上のメールや電話への対応を拒否できる権利のこと。

2017年にフランスで法制化されるなど、海外では規制化する動きもあるが、日本ではまだ耳にすることは少ない権利だ。チャットツールなどの導入が進み、ますます気軽に「つながれる」環境が広がっているが、日本でも果たして、浸透するのか。

部長の「今日のランチ」にいいね!

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チャットツールの使い方には「気遣いが必要」という声も聞かれる(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

「部長が休日に『今日のランチです』と部内チャットに写真を投稿したため、それを読んだ部下たちは、返信せざるを得ない空気になったそうです」

小売業で働くKさん(33)は、社内にチャットツールを導入する業務を担当。1年ほど前から多くの部署で社内チャットの利用が始まったが、チャットの使い方については、勤務時間外の利用が頻発したり、「ランチの内容」など不要不急な会話をしたりする事例が報告されている。

Kさんはこう話す。

「業務の効率化を進めるため、現在はチャット利用を推進しているので、利用のルールを設けるという話はない。オンオフの区別がない上司もいるのが実情だが、投稿する側のマナーが必要です」

夜のメール通知はオフ

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子育てと仕事の両立には「つながらない権利」も大切だ(写真はイメージです)。

takayuk/shutterstock

「育児が大変なこともあり、夜は通知をオフにしている。全部対応していたら体がもたない」

大手企業で総務を担当するTさん(29)は、育児のために時短勤務を行っている。午後4時に退社し、保育園に子どもを迎えにいくが、退社後にも電話がかかってくることが多く、電車を降りて電話をかけることもある。迎えに遅れることもしばしばだ。

海外からの問い合わせもあるため昼夜問わずメールが届くが、夜間は着信音オフにし、返信もしないことにしている。「メールは気になるけど、子どもと過ごす時間も大事。意識してオンオフをつけている」と話す。

「ちょっと確認」もパワハラと言われそう

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管理職の中には業務時間外の連絡をためらう人もいる(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

不動産業で働く管理職のHさん(52)は、「数年前までは月曜の役員会に備えての資料準備で、『ちょっと確認させて』と毎週のように土日に上司から電話が来るのも、部下に電話するのも当然だった」と話す。

しかしここ2年ほどで、社内の空気は大きく変わったという。

「社内のルールがあるわけではないが、休日のメールや電話はほとんどしなくなった。すぐにパワハラと言われそうなので」

働き方改革の弊害?

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約15%の人が就業時間外でも緊急性のない連絡に対応している

出典:NTTデータ経営研究所

NTTデータ経営研究所では、「働き方改革」に関するインターネットアンケート調査を実施。「つながらない権利」に関する質問も行い、1110人が回答した。

調査によると、就業時間外に上司から緊急性のない電話やメール(LINE等を含む)があった場合、どのくらい対応しているかについては、「週1回以上対応している」は15%にとどまり、「ほとんどなかった」(74%)が最も多かった。

調査では、「週1回以上対応していると回答した人の勤務先を見ると、約7割が働き方改革を行っていた。働き方改革を推進している企業では、気軽にコミュニケーションをとれる環境を整備していることが多く、就業時間外にも電話やメールで対応していると想定される。いつでもどこでも仕事ができる環境が、つながらない権利を侵害しているともいえる」と指摘している。

課長だって「対応したくない」

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47%が「できれば対応したいくないがやむを得ない」と感じている。

出典:NTTデータ経営研究所

アンケートでは、就業時間外の緊急性のない電話やメールへの対応について、どう感じるかについても質問している。

「できれば対応したくないが、対応するのはやむを得ないと思う」は47%で、「連絡があれば就業時間外であっても対応したいと思う」が18%。就業時間外でも対応する人は6割以上いた。「対応したくないし、連絡があっても対応しないと思う」は15%だけだった。

同研究所の加藤真由美・シニアマネージャーは「調査では課長クラスも約5割が『できれば対応したくない』と答えていてやや意外だった。業務時間外の連絡については、管理職も含めて配慮の必要性が高まっているのではないか」と話す。

企業や自治体でも取り組み

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「つながらない権利」に着目する企業や自治体もある(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

ジョンソン・エンド・ジョンソンとヤンセンファーマは、2015年から緊急時の連絡を除き、平日の午後10時以降と土日の社内メールを禁止した。

また三菱ふそうトラック・バスでは2014年から、休日に届くメール社内を自動で削除し、メール再送を依頼する機能を導入。同社広報担当によると「『相手に失礼では』と感じる人も多いようで浸透しているとは言えない」と話す。

神戸市では10月7日、「つながらない権利」について、大学教授らが参加する有識者会議を初開催した。同市の担当者は「仕事にとらわれることなく、充実したプライベートを過ごすことができる町をアピールしたい」と話す。

日本ではあまり注目されてこなかった「つながらない権利」。取材を通じて「オフに会社から連絡がくるのは本当に気が滅入る」という声を何度も聞いた。働き方改革を進めていくうえで、「つながらない権利」は欠かせない視点だろう。

(文・横山耕太郎)

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