台風19号の記録的大雨は首都圏有数の人気エリアにも牙をむいた。川崎市中原区の武蔵小杉駅近くの47階建てマンションは、地下3階にある電気系統の設備が浸水し、15日も停電が続いた。水害対策用の止水板が設置されていなかったことが要因の一つだと指摘する声もあり、都市型災害への対応が改めて課題として浮き彫りになった。
関係者によると、同マンションには止水板の設備がなかった。台風襲来の1週間ほど前には有志の住民らによる防災の勉強会も開かれ、「止水板を導入しないと停電になったときに生活が全部駄目になる」との話も上がったばかりだったという。オール電化のため住民への打撃は大きく、エレベーターも使用できない状態という。
連休明けの通勤・通学にも影響が及んでいる。JR武蔵小杉駅の横須賀線ホームは水没した影響で一部の改札が使えないほか、エスカレーターやエレベーターも故障し、15日の朝夕のラッシュ時には長い行列ができた。JR東日本によると、この日は社員を約20人増員。高齢者や障害者ら階段の使用が困難な乗客を補助し、左側通行を守るよう拡声器で呼び掛けるなど対応に追われた。
人口増による影響で普段から混雑しているものの、同駅近くの高層マンションに住む無職の女性(65)は「まさかここまで混雑しているなんて。駅の改札にまだ泥も残っていて、こんなに被害があるなんて思わなかった」と声を震わせた。エスカレーターとエレベーターの復旧の見込みは立っていないという。
同駅周辺では、マンホールや下水溝から下水が逆流し、道路が冠水した。現在でも汚泥が道路の側溝にたまっている様子があちこちで見られる。中原区役所危機管理担当は「汚泥をきれいにしてから、消毒もしなければいけない。さらに私有地は行政が立ち入れない。ボランティアの方々に頼らざるを得ない現状」と話していた。
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